All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1911 - Chapter 1920

1920 Chapters

第1911話

碧がこの情報を知るのは早かったが、悟のほうも、もちろん負けてはいない。彼はずっとニヤリと口角を上げたまま、理仁のオフィスのドアをノックした。「理仁、おい、理仁、ちょっと面白い情報を掴んだぞ。笑い死にしそうだ」理仁は顔をあげて悟をちらりと見てからまた書類に視線を戻して言った。「お前を笑い死にさせられる情報ってなんだ。体には気をつけろよ、奥さんのお腹には子供がいるんだからな」悟は言った。「……ざけんな、それは呪いの言葉かなにかか?俺は百歳までうちの明凛と一緒に長生きするんだからな。いや、俺はあと数年長生きじゃないとダメだな、彼女は年下だから」夫婦二人は毎日一緒に過ごし、共に墓に入る予定だ。生きるのも死ぬのも一緒だ。いや、今からこんな不吉な話をしてどうする。「お前は欲張りな奴だな。俺は九十歳まで生きられれば十分すぎるくらいだと思ってるのに。百まで生きられる人なんて数えるほどだぞ」理仁は口では親友にそう言っているが、心の中では唯花と一緒に二百歳まで生きたいと思っている。悟はデスクの前の椅子に座ると、笑いながら話した。「さっきある情報をゲットしたんだけどさ、どんな話だと思う?」「お前を笑いで死なせるほどのビッグニュースだろ」悟は言った。「……ちょっとくらい予想してくれないのかよ?」「つまらん」理仁はサインペンを置き、デスクの上に置いていた携帯をとると、まずは愛妻にメッセージを送ってから悟のほうへ目を向けた。「言えよ、真面目にそのお前を笑い死にさせてしまうという情報を聞いてやるから」「奏汰君、お前んとこのあの結城奏汰だ。なんと白山家の御曹司である白山グループの社長を口説き始めたらしいぞ。あの白山会長の息子さんだ。俺の結婚式に、白山会長一家四人がお祝いに来てくれたろ。確か、お前らは同じテーブルだっただろう」理仁は頷いた。「奏汰はどうやって白山社長を口説いたんだ?」「白山社長に薔薇の花束をプレゼントしたらしい。どうも社長が会議をしていて、奏汰君は応接室でかなり長い時間待っていたんだって、そして社長が会議を終わらせて出てきたところに奏汰君が花束を贈ったとか。これには白山グループの管理職たちも相当驚いたっぽいぞ。その時の光景を表現した彼らの言葉に俺はもうおかしくって」この件は、白山グループ全体に伝わっている。
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第1912話

「しかも、白山家の他の親戚たちも、玲さんが男だって思ってるんだぞ」白山家の分家にあたる遠い親戚は玲に彼女を紹介したいとまで思うくらいだ。「みんな玲さんが男だってことに慣れ過ぎてて、俺もうっかり忘れてたんだよ」悟は自分のIQが低下したなどと、絶対に認めなかった。「奏汰君ってば、同性愛者だって周りから噂させても、彼女を口説きに出るなんて、本当に感心しちゃうな」理仁は淡々とした口調で言った。「それは奏汰自身がわかっていればいいだけの話だ。あいつがこういう行動に出るほうが直接的だ。余計な時間を費やして、玲さんが女性だとあばこうと動く必要なんてない。玲さんが自分は男か女か、そんなこと彼女が一番よくわかっていることだ。彼女がいくら小さい頃から男装をして、二十年以上も男を演じているとしても、性転換手術をしない限り、一生男装し続けたって彼女が女性だっていう事実は永遠に変わることはないからな。奏汰がこれを続けて、彼女が耐えられなくなれば、女性の姿に戻るだろう。我慢し続けられても、あいつはきっと彼女が女性だってことを認めさせる方法を見つけ出すさ」理仁は今まで従弟の結婚を心配してなかった。彼ら結城家の男が、ある女性に狙いを定めたら、その女性は彼らの手から逃れることなどできないのだ。奏汰も玲も未婚だし、結城おばあさんが奏汰の嫁として玲を選んだ。奏汰は安心して堂々と玲を追いかければいい。従兄として、理仁は奏汰の結婚式に呼ばれるのを待っていればいい。悟は頷いて、すぐに感嘆の声をもらした。「君たちの愛の物語は本当に波乱万丈だな。大きな障害や困難が待ち受けてる。俺のほうを見てみろ、そんなのからっきしだぞ」悟と明凛の恋愛は順調すぎた。理仁は悟を睨みつけ、イラっとして言った。「自分が順調だったからって惚気るんじゃないぞ。みんなお前と牧野さんが順風満帆に愛を実らせたことを羨ましがってるんだ。まさか恋のライバルの出現を心待ちにしてるのか?もしそうなら、牧野さんにハイスぺ男を何人か紹介してあげても構わないぞ。牧野さんはお前と結婚しているが、彼女はうちの唯花と同じで、どんどん女性らしく、魅力を増していっているだろ。街中を歩いていると、振り返って彼女たちを二度見する輩ばかりだ。男の目をかなり釘付けにする女性だろうな」理仁は今でも、金城琉生に唯花を取
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第1913話

暫くして、悟が口を開いた。「まじで柏浜まで行って、近くで見ていたいな」理仁は悟に言った。「お前は星城にいてもすぐに情報を得られるだろう。奏汰が白山社長に花をプレゼントしたのはたった一時間前の事なのに、ホットなその話題がすぐに手に入ったろ?それなのに、わざわざ柏浜まで行く必要があるのか?」悟は笑って言った。「確かに星城にいてもすぐにアツアツの話題を楽しめるけどさ、やっぱり現場に行って、できたてホヤホヤのをもらいたいじゃん?」「あと二十分で昼休憩だ」理仁が突然そう言った。「それならさっさと仕事終わればいいじゃん。その後は妻と一緒に食事だ。そうだ、明凛は一番人の噂話が好きだからな、このホットな話題を愛する奥さんに持って行かなくちゃ。理仁、笑われてもいいから正直言うが、明凛はゴシップ話が好きで、誰よりも早く情報をゲットしたいから、俺と結婚したんじゃないかって疑ってるんだけど」理仁は言った。「お前、よくわかってるじゃないか」悟は言った。「……そんなわけないだろ、絶対、俺がこれだけ優秀な男で、彼女への気配りも最高だったからに決まってる。俺と彼女は性格も合って、意気投合したし、俺のことを好きになってそれで結婚までいけたんだ。ただゴシップ情報を俺が持ってるから結婚したんじゃないさ。もちろん、一緒に人の噂話するのも楽しいけどね。二十分前に休憩に入る許可をもらいたいんだけど、帰って妻と一緒にご飯食べないと。昼どきだからちょっと込むだろうし、家についたらちょうどいい時間になる」悟は言い終わると、立ち上がって帰ろうとした。理仁は彼に言った。「毎日遅刻に早退か、以前のあの真面目に働く九条悟は一体どこに行ってしまったんだろうな?」「前は君も毎日遅刻に早退だったじゃんか。全く仕事に身が入ってなかっただろうが。俺は君に習っただけだよ。それにここは結城グループであって、結城家の会社なんだ、九条じゃないし」悟は面の皮を厚くして、理仁からぶつくさと遅刻早退を責められても気にしなかった。オフィスの入り口まで来ると、彼は立ち止まり、理仁のほうへ振り向いて言った。「今君が真面目に働いているのは、妻が不在だからだろ。もし、奥さんが家で待っていたら、俺よりも早くさっさと帰ってるくせに」理仁は笑って言った。「さっさと帰れ。奥さんが家にいるからって偉そうに、俺に
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第1914話

もうすぐ昼休憩だ。会社には多くの人が働いていて出入りをしている。社員たちが奏汰の作ったあの花文字を見れば、玲は完全にみんなから誤解されてしまう。まさか一夜にして、奏汰が何かに憑りつかれたかのようにガラリと変わってしまい、このような攻撃を仕掛けてくるとは思ってもいなかった。好きだって?玲は今まだ男装していて男として生きている。奏汰が堂々と告白してきたということは、つまり世間に自分は同性愛者だと公表するということか?「白山社長、結城社長はかなり多くの人を呼んできたらしいので、あの花を片付けるのはあまり難しいかと」秘書は苦しげに答えた。奏汰は一般人ではなく、結城家の御曹司の一人であり、ラグジュリゾートホテルの総責任者である。ここ柏浜は結城家が基盤とする都市ではないが、影響力を持っている。「通りがかった多くの人たちがもう写真を撮っています」玲はそれを聞いて顔色を一変させ、冷ややかな声で言った。「あいつがどれだけの人間を連れてきたかどうでもいい、さっさとその花を片付けろ!」すると秘書は急いでそれに応え、警備員たちに花を片付けるように通達した。玲も居ても立ってもいられなかった。彼女はデスクの上にある携帯をとり、サッと立ち上がってデスクをぐるりと回って出てくると、大股で外に向かって歩き出した。午前中だけで、彼女は二度も奏汰に苛立った。あのバカ野郎、紹介した家が無事購入でき、その恩返しをしたいと言っていたくせに、このような方法でその恩を返すというのか?同性愛者なのだという噂を世間に広めたいなら、適当にそこら辺の男を見つけてこればいいのに、なぜ自分でなければならない?そして、これと同時に玲は弟に電話をかけ、電話が繋がると冷ややかに命令した。「碧、すぐに会社に来い。結城奏汰のあのクソ野郎め、さっき会社から離れていなかった。人を呼んで多くの花を運ばせ、会社の入り口に花で文字を作ってやがった」「兄さん、俺、今会社の前にいるよ。奏汰さんは確かにめっちゃ薔薇の花を使って文を作ってる。ここにはね『白山れいさん、きもちをうけとってください!』って書いてるぞ。兄さん、彼マジなのかな?」碧はちょうど会社に来たところだった。奏汰が玲に花束を贈りに来た時、碧は友人たちと一緒に遊んでいられなくなった。彼は会社に向かい、ちょうど付近ま
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第1915話

すぐに、白山グループの警備を担当するリーダーが警備員たちを引き連れて来て、花を片付けようとした。奏汰側はもちろんそれを阻止しようと立ちはだかった。そして現場は大騒ぎだ。奏汰は落ち着いた様子で、しかも余裕そうに携帯を取り出して自分の「労働の成果」を写真におさめ始めた。写真を撮り終わると、何気に見た人だかりの中に碧を見つけ、彼のほうへ向かって歩いた。碧は身をかがめて、下に敷き詰められている花から一本手に取り、奏汰が近づいてくるとその一本を前に突き出して、端正な顔に笑みを浮かべて言った。「結城社長が男性のほうがお好みなのでしたら、俺はいかがですか?俺のほうが兄よりも結城社長に合ってると思うんですよね。兄さんは普通に女性のほうが好きなんで、結城社長のことを好きになることはないですよ」奏汰は二本の指でその花をつまむと、少し体を傾けてその花の匂いが嗅いでいった。「新鮮な匂いがするね」そしてすぐに、碧の下あごに手を伸ばし、掴むと軽く彼の顔を上に向けさせて、品定めするかのようにじろじろ見て、微笑んだ。「碧君もすごくイケメンだよ。だけどお兄さんと比べると、やっぱり少し物足りないんだな」碧はケラケラと笑って、奏汰の手を引き離すと尋ねた。「俺に何が足りてないか教えてもらえませんか?努力して変えてみせますよ。兄さんはクソ真面目な人間だから、こういう冗談は全く通じないんです。結城社長が男好きだという噂を使って、問題解決したいのであれば、俺に言ってください。絶対お役に立ってみせますから、うちの兄はほうっておいてもらえませんか」彼も奏汰の前まで近寄り、小さな声で言った。「結城社長がわざとこんなことをしているのはわかっています。周りに同性愛者だと誤解させるためにこんなことしてるんでしょう?それでご家族からの結婚の催促をやめさせるためです。これで結城おばあ様が選んだ奏汰さんの花嫁候補を拒否することができるし、おばあ様から追放されることもないってわけです。これは確かに一つの解決方法ではあります。だけど欠点があります。あなた自身が周りからどのような評価をされようが構わないでしょうが、他の人に迷惑をかけることになります。俺には関係ない赤の他人であれば、別にどうだっていいですが、うちの兄を困らせるのは弟としても許せないんですよね。それなら俺を利用してください。
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第1916話

玲は黙った。奏汰がここまでしつこく、このような大きな騒ぎを起こすとわかっていれば、彼女はさっさとあの花束を受け取って、彼が帰ってからゴミ箱に捨てればよかったと思った。そうすれば、ここまで大ごとにはならなかったかもしれない。「白山社長、お仕事は終わりましたか?」奏汰は顔を上げて空に高くのぼっている太陽のほうを向いた。強い日の光に目を開けていられず、すぐに下を向いて玲に言った。「白山社長、一緒にお食事でもいかがかと思いまして、来てくれますかね?」「すみませんが、昼は会食が入っているので、時間がありません」玲はきっぱりと断わった。奏汰は笑って言った。「大丈夫です。社長が今日は時間がなくても、今後時間がある日はあるでしょう。社長が一緒に食事に行ってくれる日まで、毎日食事の誘いに来て、会社の前に今日のように花を飾りましょう」玲は奏汰に対して相当頭にきていた。玲は教養があるので、奏汰に手を出したい気持ちをぐっとこらえているのだ。それにもう奏汰と言い合うのは面倒だった。奏汰はすでに玲を利用する気でいるからだ。玲は警備員に向かって手を振り合図をした。「ここにある花全てゴミ箱に捨ててくれ」そして振り返って秘書に言った。「柏浜にある花屋の店長に伝えろ、今後結城奏汰に花を売るなってな。もし彼に売ったら、どうなるかわかるだろ」奏汰は彼女に言った。「白山社長、権力を持っているからといってそれはやり過ぎなのでは?彼らが花屋を開いて一年稼ぐのも大変ですよ。俺みたいな気前の良い顧客に巡り会って稼げるのもなかなかない機会です。それなのに、彼らに花を売るな、だなんてそれは人の商売の邪魔としか言えませんよね。そんな恨みを買うようなことをしては、裏で誰かに呪われないように気をつけないと。藁人形に五寸釘打たれて一生結婚相手の女性が見つからないように呪いをかけられますよ」そんなことを言っても、どのみち玲は女性と結婚はしないだろう。だから、どこかの家に嫁ぐか、婿養子を迎えるくらいだ。玲は冷ややかな声で言った。「俺の事はあなたに心配される必要なんてないです」彼女も裏で花屋を開いている店主に損失を補償するつもりだ。つまり、奏汰には毎日彼女の会社の前で、この日のように花を敷き詰められては、たまったものではない。奏汰は口を尖らせた。「わか
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第1917話

玲は何も言わず黙っていた。そして自分の車があるほうへと歩いていった。碧は秘書をさがらせて、姉について車のほうへと向かった。そしてすぐに玲は車に乗り込み、碧も急いで姉の高級車に乗った。運転手は碧を見て、何も言わずにエンジンをかけて車を出した。「兄さん、さっき奏汰さんに聞いたんだ。兄さんを利用して結婚の催促から逃れる計画なんだって、認めたよ」玲は冷ややかに弟を見つめた。「あいつの話をお前は信じるのか?」碧は少し言葉を詰まらせて、言った。「彼についての調査結果と、俺が把握してる情報から、彼の言う話を信じるよ。信じないってんなら、本気で彼が同性愛者だって言うの?そうだったとしても、兄さんに数回しか会ったことがないのに、好きになって口説こうとするか?」その言葉に今度は玲が言葉を詰まらせた。玲は奏汰がただ世間を騒がせる話題作りのために、自分を利用したとは思えなかった。それに、奏汰が同性愛者だとも思えない。彼がもし男性のほうが好きなのであれば、星城には多くの若いイケメンが揃っているから、すでに好きな人でもできていたはずだ。わざわざ柏浜にまで来て玲につきまとう必要などない。もし、この二つが違うのであれば、結城奏汰がこのような真似をする動機は一体?玲の乗る車は会社を出た。あの花で作られた海はこの時、綺麗さっぱり片付けられていた。野次馬たちも、どんどん減っていった。しかし、奏汰はまだ去っていなかった。彼は自分の車に寄りかかり、両手をズボンのポケットにつっこんで、玲の車が出てくると、それに向かって手を振っていた。この時彼は何かを言っていたようだが、玲はひと目もくれず、無表情のままで、彼が何を言ったか聞こえていなかった。運転手は玲が今結城家のあの御曹司のことを嫌っているのがわかっているので、スピードを出し、あっという間に奏汰の横を過ぎて去っていった。それから暫くして、玲は低い声で弟に命令した。「碧、お前、星城に行ってこい。そして結城奏汰の結婚相手の候補が一体誰なのか探れ」碧は黒い瞳をキラリと光らせ、姉のほうを見た。玲は唇をぎゅっと強く噛みしめていた。「兄さん、考えすぎだって。それは絶対に有り得ないよ」碧は姉が何を言いたいのかに気づき、笑って姉をなだめようとした。「そんなことあるわけないじゃん。兄さんはあまり星城には
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第1918話

「聞いたところによると、奏汰さんの両親もおばあさんが誰を結婚相手として選んだのか知らないそうだよ」玲は低い声で言った。「結城理仁さんであれば知っているはずだ。彼の兄弟や従兄弟達はみんな彼を尊敬している。何をするのも彼の意見が重要だし、何かあれば彼に何だって話すさ。両親に言わないことでも、彼にはきっと教えているはずだ。理仁さんの口はかたい。きっと彼から聞き出すことはできないだろう。彼の妻である唯花さんから聞き出すほうがうまくはずだ。彼女は彼から溺愛されているから、基本的に何だって知っているにきまってる」碧が言った。「結城おばあ様と唯花さんって今旅行中じゃなかったっけ?今はきっと彼女を見つけるのは難しいぞ」玲はまた黙って、暫くしてから口を開いた。「別に一日で調べ上げろなどとは言っていない。この件を常に気にかけておいてくれるだけでいい。もちろん、すぐに聞き出せるのが一番だけどな」「もし、聞き出せなかったら?」玲はその端正な顔を曇らせ、瞳も暗くさせると、低く感情のこもらない声で言った。「こうなると臨機応変にどうにかして方法を考えるしかない」奏汰が何を企んでいようとも、いつかきっと尻尾を掴めるはずだ。「兄さん、それなら理仁さんに訴えて、奏汰さんをしっかり見張っておいてもらったらどう?理仁さんがもし兄さんにこんなことしてるって知ったら、きっと焦るはずだろ。従弟が男性を口説いてるなんて知って、次期当主としてほっとけないさ。もし、俺が男を追っかけ回してたら、兄さんだって俺に口を酸っぱくして、女性が好きなのに勘違いするなって必死に説得するはずだよ」玲は弟の言葉におかしくなって笑い、ひと目弟を睨んで言った。「お前が男性を好きになるって?ならきっと、太陽が西から昇ってくるだろうな。俺は今夜パーティーに出席するから、ついて来いよ。凪さんも出席する予定だから」碧はすぐに姉のほうを向いて、許してほしいとせがんだ。「兄さん、勘弁してくれよ。俺、凪さんには全く興味ないんだ。弱そうに見えて実は虎視眈々と相手を狩る機会をうかがってる人間なんて、策士だぞ、そんな女性たちに俺が敵うわけないじゃんか。俺がバカ正直な奴だって兄さんも知ってるだろ?裏がある本音を出さない人間が一番苦手なんだよ」彼も裏でこそこそと動くことも、真っ向勝負することもできる。しかし、姉
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第1919話

十数分後。「玲様」この時、運転手が突然後ろを振り向いて言った。「玲様、結城社長がホテルの入り口で花束を抱えて待っています」奏汰はラグジュリゾートホテルではなく、斜め向かいにある白山グループのホテルにいた。彼は大きな薔薇の花束を抱きかかえ、ホテルの入り口で玲の到着を待っていた。玲は昼に会食を予定していると言っていた。彼女は今まで顧客と食事をするのには、いつも白山グループのホテルに来ていた。まさか奏汰がしつこく追ってきて、しかも先回りしてすでにホテルの前に待っているとは思ってもいなかった。この時、瞬時に玲は顔を暗くさせた。これには碧も理解できなかった。「俺たちが出発した時、彼はまだ会社の前にいただろ。どうして俺らよりも早く到着してんだよ?」運転手がそれに答えた。「結城社長は恐らく、近道をしたのでしょう」碧は運転手に言った。「だったら、どうして俺らも近道しなかったんだ?」運転手は黙ってしまった。彼もまさか奏汰が自分たちを追いかけてきて先に到着しているとは思ってもいなかったのだ。玲は何度か深呼吸し、弟に言った。「江藤社長がホテルで俺を待っている。あの入り口にいる男に構っている暇はない。お前が対処してくれ」「兄さん、安心して。俺が奏汰さんにつきまとって、兄さんに近寄れないようにするから」碧は清々しく玲の頼みに応えた。そして、数分後。姉と弟は一緒に車を降りた。玲のボディーガードたちが素早くやって来て、彼女の通り道を作った。奏汰もちょうど彼女のほうへ歩いてきていた。白山家のボディーガードは玲のほうを見て、奏汰を妨害するべきか探っていた。しかし、彼らは碧がスーツのジャケットを脱いで急ぎ足で奏汰のほうへ向かうのを見た。「奏汰さん」碧は奏汰の名前を呼びながら、近づいていった。「これは俺に買ってくれた花ですか?めっちゃ綺麗ですね」そう言うと、碧は奏汰の手からその花束を奪おうとしたが、奏汰はひらりと身を躱し、碧の手から逃げ、渡そうとしなかった。それでも碧は諦めず、両手を広げて奏汰に抱きつこうとしたが、また奏汰が素早くそれを躱し、するすると玲の前に躍り出てきた。白山家のボディーガードたちは奏汰の動きに反応できていなかった。ただ、目の前にサッと影が通り過ぎたとしか感じられず、ハッとした時には、奏汰が
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第1920話

ここまで二枚目な美男子である奏汰が、これほどまでに図々しいのだから、残念すぎる。次の瞬間、玲は力強くその花束を奪い取り、奏汰の目の前でそれを地面に叩きつけると、花束を何度も踏みつけて、彼の横を通り過ぎていった。「言われたとおり、花は受け取りましたので、どうぞお帰りください」玲は冷たい言葉を残していった。奏汰は地面に踏みつけられて、ぐしゃぐしゃになった花束を見てから遠ざかっていく玲の後ろ姿を見つめて、低い声で笑った。「やるじゃん、ちょっと興味が湧いてきたな」もともと、彼は玲には全く興味を持っていなかった。しかし、結城おばあさんが彼に与えた期限が迫っているから、行動しないわけにはいかない。しかし、玲に対してやはり興味が持てなかった。そして今、彼女にアプローチし始めてみると玲の反応を面白く思い、やっと少し興味が出てきた。碧も地面に横たわる花束を見て、近づいてきた。すると奏汰は即座に気まずそうな表情に変えた。「結城社長」碧は屈んで姉が踏みつけた花束を拾い上げた。「結城社長、あまり気にしないでください。兄さんは本当に恋愛対象として同性には興味ないんです。社長がもし白山家が気に入ったのなら、俺を利用してもらって構いません。俺なら喜んで目的達成のための演技に付き合いますんで。こんなに綺麗な花束なのにもったいないな。俺が普段遊んでる子たちにあげたら、すっごく喜びますよ。特にこういう花束が好きですからね、あの子たちは」碧はそう言いながら、花束を拾って近くにあったゴミ箱にそれを捨ててしまった。そして碧は再び奏汰のほうへ戻ってきたが、奏汰は落ち込んだ様子で背を向けて去っていった。「結城社長」碧は奏汰を追いかけ彼の肩を掴み、慰めるように言った。「社長、そんながっかりした顔しないでくださいよ。ただの演技なんだから、誰があなたに付き合ったって同じはずでしょう?それなのに、そんな迫真の演技をされると一体ただの演技なのか、本気でうちの兄を口説きたいのかわからなくなってきますよ」「俺は本気でお兄さんのことを気に入ったんだよ。碧君も確かにカッコイイけど、お兄さんと比べるとちょっと雰囲気が違うんだよね。お兄さんはクール系で、俺はこういう冷たい感じのほうが好きだからさ」そう言うと、奏汰は自分の肩に置かれた碧の手を外した。「碧君、俺はお
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