理仁が顔をあげると、唯花が大きな瞳をキラキラと輝かせ、自分の体を上から下までまじまじと見ていた。その瞬間、彼は嫌な予感がした。口を開こうと思った矢先、唯花が一歩先に話しだした。「ねえ、理仁、あなたってスタイルも、顔も抜群でしょ。女装したらきっと傾城の美女になるわよ。だけど、ちょっと背が高すぎるかなぁ。顔は整ってて綺麗だけど、ちょっと表情が硬いし、骨格もはっきりしてる。女装しても、たぶんあまり女性らしさはないかも。奏汰さんはあなたよりも柔らかい印象があるから、女性の格好をしてお化粧をしたらまあまあかもね。だけど、どっちにしろすぐに男だって気づかれるでしょうね」理仁は妻の考えをすぐに見抜き、背筋をのばして言った。「俺みたいに男らしい野郎が女性の格好をするのは合わないだろう。唯花、奏汰とは比べるなよ。あいつは俺たち男を追いつめる気か。女装までして彼女の心を掴もうとするとは、こっちがいい迷惑だ」唯花は笑って言った。「確かにあそこまでしちゃえば、玲さんもきっと心が動いたんじゃないかしら。玲さんは彼が女装までしてみせたから、何かに憑りつかれたかのように、自分も女性の服を着て見せてあげたって言ってたわよ。彼女は物心ついた時からずっと男性の格好をしてきて、男装はもう二十年以上続けているから、すっかり慣れちゃってて今さら女性の服が着られないんだって。ご両親ですら、彼女が女性の服を着た姿を見たことがないのに、奏汰さんには見せたのよ」理仁は唯花の腰に手を回し、彼女を部屋の外に連れ出して、歩きながら言った。「だから、あいつはやりすぎなんだよ。あそこまでされたら他の男はどうすればいい?あいつのせいで追いつめられて、ボッコボコにしてやるかもだぞ」奏汰も確かにやり過ぎのところはある。「……まあ、それは確かにそうかも。それにしても、彼が玲さんと今年中に婚約できるかはわからないよね。玲さんは、彼があそこまでしたのを見て、彼の気持ちを受け入れはしてるけど、自分が女性だと周りに公表する気はまだないみたい」「好きな気持ちもまだそこまで深いわけじゃないんだろう。それに、彼女は男装を二十年以上続けていて、今の生活スタイルに慣れてしまってる。すぐに変われと言ったって難しいことだよ。そんな彼女があいつのために一度女性の服を着せて見せただけでもすごいことだ。
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