All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2491 - Chapter 2500

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第2491話

「神崎さん、おめでとうございます」咲は笑ってベッドの前まで来た。理紗も笑顔で返した。「柴尾さん、ありがとうございます。どうぞ座ってください」理紗はそう言いながら、咲の体を支えて座らせようとしたが、咲は自分で近くにあった椅子を引いてきて座った。理紗は咲が自然にその動作をするのを見て、今泣き喚いている子供のことなどすっかり頭から消え、咲に尋ねた。「柴尾さん、もう見えるようになったんですか?」彼女は依茉が咲の目を治療しに来ていることは知っていたが、今どれほど治療が進んでいるのかまでは知らない。妊娠後期になって、理紗は病院へ検査に行く以外は、特に外出はしていなかったし、玲凰も他人の話をすることは滅多になかった。この間、姫華から依茉は咲の目を完全に治療できると自信があるという話を聞いていた。それで理紗も姫華にそこまで自信があるならきっと大丈夫だろうと返事をしていた。咲はとても不幸な境遇の人だから、みんな彼女の視力が回復することを願っていた。「はい、目の前のものならはっきり見えるようになったんです。遠くはまだぼんやりとしていますけどね。かなり近視な人と同じくらいの視力だそうです」咲は穏やかにそう答えて、また理紗に言った。「神崎さん、早く横になられてください。出産したばかりだから、座っていると痛いでしょう?」「見えるようになって本当に良かったですね。焦らないで、ゆっくり回復していけばいいと思います。私は大丈夫。この子ったらいつも泣くんです。夫じゃ、あやすことができないから、オムツを確認しないと」咲の目が見えるようになったことを知り、理紗はとても喜んだ。玲凰が子供を抱いたまま近づいてくると、彼女は子供を夫から受け取ってベッドの上に寝かせてからオムツを確認した。「あら、やっぱりね。玲凰、オムツを変えなくちゃ。この子ってすごく綺麗好きみたい。うんちしたらすぐに泣き出すのよ。ウェットティッシュじゃなくて、お湯でお尻を洗ってあげないと、気持ち悪くて寝てくれないのよね」二人とも新米の親だが、理紗のほうが玲凰よりも赤ちゃんの世話に慣れてきている。玲凰はオムツを持ってきて、息子がうんちをしたのを見ると、またすぐに洗面器にお湯を入れて、タオルを浸して絞った。理紗が息子のオムツをとると、彼は優しい声で言った。「貸して、お湯で
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第2492話

「依茉先生の医術の腕は本当に高いですね。二人が来る前に彼女も来てたんですよ。だけど、とても忙しいらしく、十分も経たずにもう帰っていきましたけどね」姫華と善は将来結婚する予定であり、神崎家と桐生家は今後親戚関係になるから、理紗が出産を終えたことを知り、桐生弘毅の妻として依茉もお祝いに駆けつけた。「ええ、彼女はとても忙しいようですね。他の患者さんを診に行くんだとか」辰巳は依茉には感謝してもしきれないほどだった。依茉自身は先輩医師が途中まで治療をして効果が出ていて、それを自分が引き継いでいるだけだ。ゼロからの治療ではないから、咲は薬を服用していれば、目が見えるようになると言っていた。依茉は大したことないといった態度でも、辰巳はやはり彼女にとても感謝している。「二人の結婚も近いんじゃないですか?」「ええ、そうですね」結婚の話になると、辰巳は満面の笑みを見せた。「ところで、奥さんはいつ退院できるんですか?」「おかげさまで安産だったから数日したら退院できますよ」辰巳は頷いた。彼は玲凰との話題はあまり多くない。そもそも神崎グループと結城グループの関係もあり、両家は以前、ライバル同士だったからだ。唯花が詩乃の姪だから、両家はそれを考慮して、以前のように犬猿の仲とまでは言えなくなっている。しかし、二つの大企業が提携したり、友人同士のように距離を近づけることはやはり現実的に厳しい。ビジネスにおいて、たまに裏では互いの足を引っ張るようなことをするが、あまりやりすぎるということはなかった。唯花がそれを知り、板挟みにさせては身動きが取れなくなる。そして二人はすぐに共通の話題がなくなり、気まずそうに互いを見た。最後には玲凰が辰巳に尋ねた。「テレビでもつけて見ます?」「いえ、もう少ししたら琴ヶ丘のほうに帰るので」「そうですね」そしてまた話題がなくなった。その時、ちょうど咲が出てきた。赤ちゃんが寝てしまったので、咲は理紗の隣に寝かせた。赤ちゃんは起きてすぐ寝るから、睡眠時間が長い。咲が出てきたのを見て、辰巳は立ち上がって彼女のほうへ行った。咲が言った。「奥さんはゆっくりお休みしたほうがいいです。それに赤ちゃんも寝てしまったので、また日を改めてお邪魔しますね」理紗は出産を終えたばかりだから、体力的
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第2493話

神崎邸の正門の前に、三台の車がとまっていた。先頭の車の運転手がクラクションを鳴らした。するとすぐに執事が屋敷から出てきた。彼女は門を開けて車まで近づくと、運転手が窓を開けた。「すみませんが、どういったご用件でしょうか?」執事はその車の後部座席に座っている老年の女性をちらりと見た。しかし、彼女は一度もその女性を見たことはなかった。今まで一度も会ったことがない人物を容易に敷地内に通すわけにはいかない。運転手は答えた。「我が家の当主が、神崎社長の奥様が出産されたと聞き、お祝いに訪ねました。黛と申します」黛?執事は他にも尋ねようとしたが、突然黛凪のことを思い出した。凪と同じく黛と名乗ったことから、執事はどういうことかだいたい検討がつき、言った。「少々ここでお待ちいただけますか?主人に伝えてまいります」運転手は後ろにいる和子を見た。和子は軽く頷いたので、運転手はそれに従った。そして執事は背を向けて、屋敷に戻っていった。数分後、執事がまたやって来た。彼女は正門を開け、和子が乗る車を敷地内へ誘導した。執事の案内で、和子が乗る車は敷地内の駐車スペースに駐車した。和子が降りてくると、付き従うボディーガードも一緒に降りてきた。「出産のお祝いを運んでちょうだい。運び終わったら、外で待機していればいいから」和子は厳しい口調でボディーガードたちに命令した。その言葉に、ボディーガードたちも恭しく応えた。そして執事が和子たち一行を屋敷の中へと案内した。和子はゆったりと歩きながら、まずは神崎家の広大な庭をじっくりと眺め、暫くしてから執事の後について中へ足を進めた。和子は化粧をし、実年齢よりもずっと若く見えた。彼女は実際不愉快な気持ちだったが、それをうまく隠していて、執事には気づかれなかった。和子は、詩乃自ら出迎えに来なかったことに機嫌を損ねていた。どういっても、彼女は神崎家の来客だというのに。それに、和子は詩乃よりも年上だ。和子はまだ詩乃が百パーセント自分の姪だと確信できているわけではない。でも、年齢的に詩乃より上だし、一族の当主をしているのだから、詩乃も出迎えるのが礼儀というものだろう。しかし、詩乃はそれをせず、ただ執事に彼女を案内させただけだった。出迎えに来ないのは詩乃だけではく、神崎家の若
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第2494話

和子も詩乃をじっと見つめた。そして詩乃に自分の姉の面影を探していた。落ち着きがあり実行力のありそうなところが姉に似ていた。顔は似ていないが、姉の夫に似ている。叔母と姪は互いに見つめ合い、どちらも相手に近寄ることも、話すこともなかった。そして暫くしてから、詩乃はようやく淡々とした口調で言った。「黛当主、どうぞおかけください」和子は数歩進み、詩乃の前まで来て立ち止まった。かなり近い距離で、和子は小さな声で話し出した。「神崎夫人は私の姉の旦那さんに似ています。そう、確かに小さい頃のあなたは、お父様にそっくりでした。妹さんのほうは私の姉に似ていた……」「あの、それは一体どういう意味でしょうか?」詩乃は感情のこもっていない、冷ややかな声で尋ねた。すると和子は笑って言った。「詩乃ちゃん、あなたはきっともうご存じなんでしょう?柏浜の黛家の噂をあなたが知らないはずがないから」結城奏汰は柏浜に長い間滞在していた。それに、多くの人が黛家前任当主の娘二人が星城にいると噂していた。実の娘である凪までこっそりと星城に調べに来たくらいだ。そして和子が星城に来て半月。聞きだせる情報はすべて聞きだした。そもそも「黛」という名字は非常に珍しく、星城でもこの名字を持つ人は少ない。年齢的に和子の姪にあたると思われる人物は神崎詩乃しかいない。それに、詩乃の若かりし頃の功績を考えれば、和子はもう詩乃が姪であると疑う必要はなかった。詩乃はビジネスの世界においてエリート、できる女性だ。まさしく和子の姉を彷彿とさせる。当時、和子の姉は出産を終えた後、会社と一族の事で大忙しで、産後ケアが十分ではなった。そのせいで体の調子がずっと優れず、最後には仕方なく和子に少し一族の仕事のことを教えたのだ。姉から鍛えられていなければ、和子も姉と妹を殺害し、当主の座を奪うチャンスはなかっただろう。詩乃は相変わらず感情の起伏のない様子で話した。「ええ、知っています。聞いたところによると、妹を除く家族は全員あなたによって殺害されたと。それから私のもう一人の叔母さんもあなたが殺したのですよね」その瞬間、和子の顔色が大きく変わった。和子は自らソファに腰かけた。そしてボディーガードに手厚い贈り物を置いて出て行くよう目配せした。ボディーガードたちが出
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第2495話

この時、航が和子にお茶を持ってきた。詩乃は和子にポットから紅茶をカップに注ぎ、和子の前に差し出した。そして顔をあげて、瞳をキラリと輝かせ尋ねた。「そして今私たちを見つけ出したから、黛家の当主の座を私たちに譲りたいということですか?」詩乃の妹はすでに他界している。しかし、詩乃はまだ生きているし、自分にも妹にも娘がいる。黛家の伝統からいえば、姫華が将来黛家当主の座を継ぐ資格があるということだ。しかし、姫華にはその意向がなく、詩乃自身も当主になるつもりはない。それで妹の娘を当主としてつかせることができる。和子はまさか詩乃からそのような言葉を聞くとは思っていなかった。叔母と姪が数十年ぶりに再会したというのに、この姪はトゲトゲしい言葉ばかりで、和子の言葉など一つも信じていない様子だ。和子も詩乃が自分の話を信じてくれるなど期待はしていなかった。詩乃の星城での活躍ぶりなら、和子も聞き回り、よく知っている。それでも詩乃がここまで辛辣な言葉を吐くとは思わなかった。この時、和子はどう答えればいいかわからなかった。詩乃は背筋をぴんと伸ばし、まっすぐに和子を見つめていた。口角を上げているが目は笑っていない。まるで和子の偽善ぶりを皮肉っているようだった。この時、和子の心には怒りの炎が燃えていた。姉と妹を殺し、黛家の当主の座を勝ち取ってからというもの、このような態度をとる人間など一人もいなかった。誰もが和子に恭しく、低い姿勢を保っていた。誰からも歯向かわれることなく、尊敬されることに慣れていた和子が、今詩乃が黙ったまま自分を皮肉る態度に、怒りを覚えないほうがおかしい。しかし、ここでその怒りを露わにすることもできない。ここは神崎邸、しかも星城であり黛家の勢力下ではない。いくら怒りが込み上げてきても、耐えるしかない。「数十年の間、黛当主が私たち姉妹を探し続けていたことはきっと本当でしょう。でも、それは親に代わって世話をするためなのか、それとも残党狩りのようなことを考えていたのか……」「詩乃ちゃん!」和子は低い声で叫んだ。彼女は肌の手入れが行き届いているが、七十という年齢だ。いくら肌の状態が良くても、年は年だ。彼女は苦痛な表情をして言った。「詩乃ちゃん、あなたはやはりあの噂のほうを信じるのですね。あなたの親を私が殺したと
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第2496話

「あなたの妹は……不幸だったわね。私も彼女の状況を知ってとても悲しかったわ。これも私の力不足。あなたたちを数十年も探し続けて、今ようやく見つけ出すことができた。もし、もう少し早くあなたたちを見つけ出すことができていれば、あなたの妹もあんな悲惨な目には遭わなかったのに。唯月さん姉妹の支えになってあげることもできたというのにね。詩乃ちゃん、数十年前と今とでは全然違うわ。ほら、昔は今みたいに携帯とかすぐに連絡ができる手段なんてなかったでしょう。交通だって発達してなかったし。今のような高い技術もなかったし、インターネットも簡単に使えるような時代じゃなかったもの。だから、人を探すのはとても難しかったのよ」詩乃は何も言わずに、静かに和子の芝居を見ていた。そして和子が話し終わると、詩乃はゆっくりと口を開いた。「私の母が生きていれば、私は長女だから、黛家当主の座は私だったはずです。当主になるチャンスはあなたにも娘の若葉さんにも回ってこなかった。いえ、彼女は我々黛家の血を引いてはいませんよね。実の娘が他人と入れ替えられたというのに、二十年以上も気付かないなんて、あなたも大したことがないのですね」その言葉を聞いた瞬間、和子の顔色が一変した。それでも詩乃に怒りをぶつけることはなく、ただ当時のことを後悔しているような感じで言った。「凪が生まれたばかりの頃、一族内は荒れていて、出産して弱った体のままそちらの処理に追われていたの。それで凪に構える余裕がなくて、その隙を昔雇っていた執事につかれてしまったんですよ。昔の黛家の執事は長年働いていて、徐々に悪い考えを持つようになっていたのでしょう。それで凪と彼の娘を入れ替えたんです。生まれたばかりの赤ちゃんは似ているし、私が一族の動乱を鎮めた時にはもう出産から数日経っていました。そしてゆっくりと娘に会えるようになった時には、なんとなく出産時に見た時と違うような気はしたのだけれど、数日経っていたし、子供は日々成長するものだから、少し違うくらいは普通のことだと思い、まったく疑うこともなかったんです。まさか執事が悪だくみをしてこのようなことをするなんて夢にも思っていませんでしたよ。詩乃ちゃん、一族の当主というものは本当に大変なんです。会社のことも一族内のことも注意しないといけないから。もちろん、姉が生きていた頃は、あな
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第2497話

和子は言葉を詰まらせた。自分に唯月の後継者教育をしろというのか?そんなことは絶対にできるわけはない。和子は当主を数十年務めてきて、引退することになったら、絶対にその座を実の娘である凪に明け渡すつもりだ。凪こそ和子の正統な後継者である。若葉と比べると凪は一度教えたらすぐに覚えてうまくこなす。ただ、凪は狡猾な人間で、わざと自分には能力がなく弱いと周りに思わせる。今、柏浜の人はみんな凪にまんまと騙されているのだ。みんな凪が弱く、簡単に人からいじめられやすいと思い込んでいる。彼女は田舎で育ったから、世間を知らず、黛家に戻ってきたが能力などないと口を揃えて言う。凪が出した成果は、彼女を支えているチームのおかげだと本気で思っているのだ。和子の実の娘に対する態度はずっと悪いままで、見た感じ養女である若葉のほうを可愛がっている。若葉が実の娘ではないと知ってから、和子はすぐに気持ちを切り替え、自分の血を引く娘、凪を受け入れた。凪は和子のもとで育てられていない。和子も、もう年で、あと数年すれば引退してしまうだろう。いくら彼女が健康だったとしても、八十歳手前には必ず当主の座を退くべきだ。年のせいで最近の考え方ができなくなり、一族の発展に不利でしかない。そして凪になるだけ早く一族のことや会社のことを覚えさせるために、凪が実は高い能力を持っていることを見抜いた後、和子は娘の演技に付き合っている。和子は姉と妹に自ら手をかけ、ようやく当主という座に就き、数十年も守ってきた。後継者もすでに育てているというのに、今さら姉の血を引く後代にその座を譲るというのはどうしてもできなかった。和子が言葉に詰まっている様子を見て、詩乃はまた乾いた笑い声をもらした。その笑い声は和子には皮肉にしか聞こえなかった。この姪は、小さい頃からすごかった。まさに姉の生き写しのようだ。数十年過ぎて再会しても、やはり昔と変わらない。和子は自分の娘の凪は若葉よりも当主としての素質を持っていると思っているが、詩乃とは比べようがない。詩乃は神崎家に嫁入りして義父と夫から深い信頼を得た。そして大企業である神崎グループの重要なポジションにつき、荒波に揉まれた経験を持つ。そんな詩乃と比べれば、凪は赤子同然だった。和子が最も悶々としているのは、代々、黛一族の長女の血を受け継いで
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第2498話

敵を野放しにしておけば、必ず自分に害を及ぼす。「うちは足りないものなどありませんから」和子は穏やかな声で言った。「それはもちろんわかっています。これは叔母である私の気持ちです。私たちは数十年ぶりにやっと再会できたのだから、これからは頻繁に交流しましょう。前からずっとあなたが私の姪じゃないか確かめに来たかったんだけど、ずっと時間が取れなかったんです。今回は結城社長の結婚式に出席する機会があったから、私もかなり時間をかけてようやくあなたが私の姪っ子だってわかったんです」和子はその話をする時には、ずっと慈愛に満ちた表情で詩乃を見つめていた。詩乃のほうは相変わらず無表情だった。数十年ぶりに会った叔母には、どうしても親近感など湧かなかった。親戚同士の感動の再会というわけでもない。「それにしても、唯花さんが結城家に嫁入りできて本当に良かったわ」和子は詩乃が黙っているので、自ら別の話題を見つけるしかなかった。「詩乃ちゃんの妹さんも、天国できっと安心していますよ。彼女の二人の娘さんはどちらも幸せに暮らせているみたいで、彼女たちの親戚としてとても安心しています」結婚式に参加している時、和子は唯花から姉の面影を見つけようとした。唯花と姉は似ていなかったが、フラワーボーイをしていた子供がとてもよく似ていた。その時、和子は唯花が姉の後代ではないことを期待していた。しかし、情報を探しまわり、事実を知って失望に変わった。幸運など期待しても無駄だ。詩乃は確かに姪であることが判明した。唯花と唯月姉妹も、姉の血脈だった。そして唯花が嫁いだ相手は星城一の財閥家である結城家。詩乃は神崎家の女主人。さらに星城の結城家と神崎家は二大名家であり、彼らが手を組めば、黛家には対抗できる力などない。和子はよく考えた末に、神崎家を訪問し、いっそのこと詩乃を姪だと正直に認めることにしたのだ。血の犠牲を払った深い恨みに関しては、すでにあれから数十年という長い年月が過ぎ、証拠など誰の手元にもありはしない。和子が姉と妹を殺害したという証拠など見つかるはずがない。証拠がなければ、いくら姪に力も、権力もあったとしても、和子をどうにもすることはできないだろう。黛家当主として数十年その座についていた和子がそれを簡単に手放すはずなどない。もし、姉の血を引く後代
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第2499話

「黛当主、他に何もないのであれば、どうぞお帰りください。私は孫の様子を見に行くつもりですので」詩乃は和子と余計な話をするのが面倒で、直接帰れと言うと、立ち上がり見送る姿勢を見せた。そう言われてしまえば、いくら面の皮が厚くとも、和子はここに留まることができなかった。和子は神崎家に来たら、詩乃からきちんともてなしを受けるものだとばかり思っていた。しかし、過去自分がしたことに対して詩乃は証拠はないが、よくわかっていることだから、そのまま追い出されなかっただけでもマシだと言えるだろう。和子もまた毅然とした態度を貫いていた。しかし、和子と詩乃、それから唯月、唯花姉妹は普通の親戚としての付き合いなどできはしない。詩乃は心の中で、和子が両親を殺害した犯人だと確信していた。和子は立ち上がって言った。「私はあと数日したら柏浜に帰る予定です。詩乃ちゃん、お孫さんの一カ月祝いの時には、連絡してちょうだい。お祝いにまたこちらへ伺います」「どうぞお帰りください!」詩乃は和子が一カ月祝いに来ると言ったことには返事をしなかった。和子はじっと詩乃を見つめ、それから航に会釈した。この姪の夫の家庭内での地位は、きっと自分の夫と同様だろうと和子は思った。彼ら黛一族の女性は夫を尻に敷くほど強い女性ばかりだ。詩乃は和子が持ってきた贈り物を手にとった。彼女一人では持ちきれない量だったので、航がすぐに妻を手伝い、それらを全て和子に返そうとした。「詩乃ちゃん、これはお宅のお嫁さんとお孫さんに買って来たプレゼントですよ。私達は数十年ぶりで、同じ一族としての情は薄いかもしれないけれど、私たちには同じ血が流れているんです。親戚でもあり、私はあなたよりも年上なのだから、その贈り物を拒むだなんて」「どうも、でも、うちに足りないものなどありませんので、どうぞお持ち帰りください。持って帰ってもらえないのなら、ゴミとして処理させていただきます」こんなもの、嫁にも孫にもあげてたまるものか。和子「……」詩乃は和子相手にまったく容赦しなかった。和子は何度か深呼吸し、怒りをどうにか鎮めた。そして穏やかな気持ちをどうにか保ち、詩乃に言った。「詩乃ちゃん、これは私からの贈り物。もうお渡ししたのだから、どう処理しようとあなたの勝手よ」そう言いながら、和子は背を向けて大
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第2500話

「それもいいね」航は自ら和子が持ってきた物を持って外に出て、ゴミ捨て場に持って行った。詩乃は将来は娘の家にもなる隣の善の家に行った。内装業者から神崎夫人が来たと教えられ、善と姫華は急いで裏庭から出てきた。二人はさっき裏庭の工事の状況を確認していた。「お母さん」「おば様、いらしたんですね」姫華と善が前後で詩乃に挨拶をした。姫華は母親のもとに駆け寄ると、嬉しそうに腕に手を絡めた。そして笑顔で言った。「お母さん、やっとここを見にきてくれたのね」詩乃は娘の額を軽くつっついて言った。「そんなに嬉しいの?」桐生家の家族も熱心な態度を示し、弦とのあれこれもあったことで、詩乃は最終的に善と姫華の結婚を許した。だから、二人がいつ結婚しても構わない。詩乃はもう邪魔することはないのだ。善は星城に持ち家が二つある。そのうち一つがここ、神崎邸の隣だ。善は星城で長期的に働く予定だから、姫華が結婚してからも星城で暮らすことが多くなる。詩乃が娘に会いたいならいつでも会うことができる。それに、姫華はこの年齢になってやっと好きな人ができた。最初に好きになったのは理仁で、その後は善だ。理仁は姫華を嫌っていて、今は唯花の夫だ。あの夫婦はとて仲が良く、唯花も妊娠中だから、姫華が理仁への気持ちを引きずることはありえない。詩乃は娘がまともな考えを持っていることでホッとした。理仁が既婚者であると知るとすぐに姫華は身を引いた。理仁への気持ちはスッパリ切って、つきまとうことなどなかった。そして次に好きになった善との仲を認めなかったら、娘は一生結婚しないのではないかと詩乃は心配した。娘が一生独身でいるのと、桐生家に嫁に行かせるのとでは、詩乃は後者を選んだ。「もちろん、とっても嬉しいわ。お母さん、もう少ししたら理紗さんのところにまた行くでしょ、私にも声をかけてね、甥っ子に会いたいもの」詩乃は笑って言った。「玲凰が夜は来なくていいって言ってたわよ。理紗さんのお母様が来られるんだって。理紗さんも明後日には退院できるそうだから、それからは毎日甥っ子に会えるでしょ」詩乃も孫に会いたくてたまらかった。「理紗さんのお母様が来ても、私たちが赤ちゃんに会いに行ったっていいじゃないの。お兄ちゃんが帰れって私たちを急かしたじゃない?そうじゃなかっ
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