理仁は結城グループの株、株式譲渡契約書、それから銀行カードに、理仁名義の店舗を含む全ての不動産権利書、彼の個人財産までも整理し、そのファイルに入れて唯花に渡したのだ。「君に株を全て渡したからって、会社の経営をやれと言っているわけじゃないんだ。グループは引き続き俺が管理する。そして、稼いだ金は全部君のものだよ。つまり君が本物の社長で俺はただ君のために働いているだけさ。唯花さんがいくら稼ぎたいか、どれほどの財産を持つ星城一の女富豪になりたいか、俺はその理想のために一生懸命働くから。君が良いと言うなら、ここにある財産は全て残さず君の名義に書き換える、その手続きをしに行くよ。毎月俺に小遣いをくれるだけでいいさ。結婚当初、俺は確かに唯花さんが金目当てなんじゃないかと疑っていたんだ。今は喜んでいくらでもお金を出すよ。あの頃と違って今では唯花さんのことを信用しているんだ。財産を譲渡することで君への謝罪にしたいと思う。それに今後はもう二度とあんなふうにはならないって約束する」唯花はもうその不動産権利書やらを見るのを止め、全部ファイル入れの中に放り込み、何も言わずに彼を見つめていた。「唯花さん、何か言ってくれよ。ただ、いいか悪いかだけ言ってくれればいいんだから」彼女がずっと黙っているので、理仁は自信がなかった。彼女が今一体何を考え、どうしたいのか予想がつかない。唯花はそのファイルを彼の前に押し戻し言った。「結城さん、これはいただけないわ」それを聞いて理仁は焦った。そして衝動的に唯花の手を掴み、慌てて尋ねた。「唯花さん、どうしたいのか言ってくれないか?君の言うことなら、全部その通りにするからさ。君が俺は金持ちで君はそうじゃないから差があり過ぎると思っているのなら、俺の財産を君の名義にすればそれは全部君のものになるだろ。こうすれば俺は無一文で、君のほうが俺より上に立てるんだ。それでも安心できない?」彼は本当に全ての財産を彼女に渡すつもりだった。「結城さん、あのね、私は別にあなたから施しを受けたいだなんて思ってないの。あなたに頼って生きていきたくないの、わかる?私は何をするにもあなたにやってもらうような、お荷物になりたくないのよ」彼からの愛が深ければ、彼女が彼に頼っていても問題はないだろうが、もし、その愛が消え失せ、彼に頼ることに慣れてし
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