All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 911 - Chapter 920

1370 Chapters

第911話

理仁は結城グループの株、株式譲渡契約書、それから銀行カードに、理仁名義の店舗を含む全ての不動産権利書、彼の個人財産までも整理し、そのファイルに入れて唯花に渡したのだ。「君に株を全て渡したからって、会社の経営をやれと言っているわけじゃないんだ。グループは引き続き俺が管理する。そして、稼いだ金は全部君のものだよ。つまり君が本物の社長で俺はただ君のために働いているだけさ。唯花さんがいくら稼ぎたいか、どれほどの財産を持つ星城一の女富豪になりたいか、俺はその理想のために一生懸命働くから。君が良いと言うなら、ここにある財産は全て残さず君の名義に書き換える、その手続きをしに行くよ。毎月俺に小遣いをくれるだけでいいさ。結婚当初、俺は確かに唯花さんが金目当てなんじゃないかと疑っていたんだ。今は喜んでいくらでもお金を出すよ。あの頃と違って今では唯花さんのことを信用しているんだ。財産を譲渡することで君への謝罪にしたいと思う。それに今後はもう二度とあんなふうにはならないって約束する」唯花はもうその不動産権利書やらを見るのを止め、全部ファイル入れの中に放り込み、何も言わずに彼を見つめていた。「唯花さん、何か言ってくれよ。ただ、いいか悪いかだけ言ってくれればいいんだから」彼女がずっと黙っているので、理仁は自信がなかった。彼女が今一体何を考え、どうしたいのか予想がつかない。唯花はそのファイルを彼の前に押し戻し言った。「結城さん、これはいただけないわ」それを聞いて理仁は焦った。そして衝動的に唯花の手を掴み、慌てて尋ねた。「唯花さん、どうしたいのか言ってくれないか?君の言うことなら、全部その通りにするからさ。君が俺は金持ちで君はそうじゃないから差があり過ぎると思っているのなら、俺の財産を君の名義にすればそれは全部君のものになるだろ。こうすれば俺は無一文で、君のほうが俺より上に立てるんだ。それでも安心できない?」彼は本当に全ての財産を彼女に渡すつもりだった。「結城さん、あのね、私は別にあなたから施しを受けたいだなんて思ってないの。あなたに頼って生きていきたくないの、わかる?私は何をするにもあなたにやってもらうような、お荷物になりたくないのよ」彼からの愛が深ければ、彼女が彼に頼っていても問題はないだろうが、もし、その愛が消え失せ、彼に頼ることに慣れてし
Read more

第912話

唯花がそれでも拒否するだろうと予想し、彼女から断られる前に、先手を打って彼女をちょっと脅してみた。「もし、それを受け取ってくれないって言うなら、あの窓から下に放り投げるよ。俺たちの家庭は君に決定権がある。唯花さんがうちの財産なんてどうでもいいっていうんなら、俺だって別に気にしないよ?俺は君のことしか頭にないんだから」唯花「……」一週間会っておらず、彼が会おうと言ってきた時、彼女は彼が自分のことをようやく理解してくれたものだと思っていたのだ。それにあの俺様気質を改めたんだと。しかし、この時彼がこのように脅迫まがいのセリフを吐いたので、唯花は心の中でため息をついた。人間、本質を変えるのは難しい。彼は生まれつきこうなのだ。いくら彼女といってもこの結城理仁を変えるのは非常に困難だ。彼は変わらない。彼女も変わるつもりはない。今後ただそれにどうやって折り合いをつけていくか考えていくしかない。暫くの間彼を見つめ、彼女は再びあのファイルを手に取り、中からブラックカードを取り出して、それを彼に差し出して言った。「大の男が、しかも大企業の社長が、生活するのにカードがなければ、どうやって威厳を保つって言うの?このカードはあなたが持ってて、他のは暫くは私が保管しておくから」本気でこれらを窓の外に放り投げられては、たまったもんじゃない。彼なら本当にそれをやってしまいかねない。唯花は賭けに出るつもりはなかった。理仁はだいたいこんなもんかと思い、そのカードを受け取りながら言った。「もう家庭用のカードのほうにかなり入れておいたから、買いたい物があれば好きに買っていいよ。辛い思いをしてまで君が働く必要なんかないからね。お義姉さんに家を購入しないか聞いてみて、二人で部屋を見に行ったらいいと思うよ。借りてる部屋は、なんだか自分の家って感じがなくて落ち着かないだろうし。もし、お義姉さんがお金が足りなかったら、貸すかあげるかは君が決めてくれ。お義姉さんと陽君にはきちんとした家が必要だろう」一週間冷静に考え、理仁は全財産を唯花に渡して彼女に安心感を与えることと、義姉をサポートすることに結論を出したのだった。唯花がこの世で最も気にかけているのは姉と甥なので、義姉をサポートすることこそが一番重要だと思ったのだった。「お姉ちゃんはまずはお店にお金を使うことにし
Read more

第913話

「じゃあ、うちの家でも見に行ってみる?」理仁が言っているのはもちろん彼が結婚する前に購入していた家のことだ。彼が購入した家はどれも別荘で、プライベートガーデン付きの広いものばかりだ。ただ、付近に学校の多い地区にある家はマンションの部屋を購入していた。家を買う時、彼はまだ独身だったが、親たちが一生彼が独身であることを許すはずもなく、いつかは結婚して子供が生まれるだろうから、通学に便利なようにと、そこを選んで買ったのだった。彼の子供がどの地区の学校で勉強するかに関わらず、どこにでも家はあるから、子供は自由にどこででも勉強すればいい。「仕事、忙しくないの?」「君がいてくれれば、忙しくないよ」唯花「……それなら、週末はあなたも私も仕事しなくていいから、その時にしましょうか」彼女は彼の仕事の邪魔をしたくなかった。理仁はさっき探りを入れながら言葉を選んで話していた。探りの結果はもう表れ、彼はふうーと長く息を吐き出した。唯花が彼と一緒に以前購入していた家を見に行くということはつまり、唯花はやっぱり彼のことを夫として見てくれているということで、彼らは家族であるということなのだ。今はただ別々に暮らしているだけだ。「いいよ。だったら、土曜日の朝、お義姉さんのマンションまで君を迎えに行くから。お義姉さんに俺の朝食もお願いできないか聞いてみてくれないだろうか」「わかったわ。あなたが来るってわかってるのに、お姉ちゃんが作らないなんてことないでしょ」唯花は陽を抱っこしながら立ち上がり、理仁に言った。「じゃ、私帰るから、仕事を続けてちょうだいね」理仁も急いで立ち上がり、期待を込めて尋ねた。「一緒に食事でもできない?」彼は時間を確認したが、この時まだ午前十時を回ったところで、昼まであと二時間ある。もちろん、彼女が食べたいならいつでも食事に連れて行ってあげる。「やめておくわ。先に陽ちゃんを連れてお姉ちゃんのところに行くわね。あなたは体に気をつけて、あまり無理しちゃダメよ。お酒も控えめにして、酔っぱらってでたらめなこと話さないように」理仁「……」まさか誰かが彼を裏切って、酒に酔った後、怒りに任せて言ったあの言葉を唯花に話したんじゃないだろうな?実のところ、誰も彼を裏切ってなどいない。以前、彼がヤキモチを焼いた時、酒の力
Read more

第914話

理仁はこの時突然、階層の違いというものに気づいた。もし唯花が仕事をしなければ、離婚する前の唯月と同じ状況になる。収入がないから何をするにも彼からお金をもらわなければならず、しかもそれは彼の気分次第ということになってしまう。まるで施しを受けているのと同じだ。それに彼がお金を渡すときに、ただ金を浪費するだけで稼ぎもしないと文句を垂れることになるかもしれないのだ。唯花が彼の母親と同じように、どこかの名家出身で、同じく名家に嫁ぐことになれば、別に働かなくとも実家から譲り受ける財産の収益によって経済的に独立することも可能なのだ。彼は母親から当時、彼女が結婚する時、理仁の父親ももちろん結城家の御曹司であり、麗華の両親は結城家から嫌がらせを受けるのではないかと心配して、麗華には多くの財産を与えて送り出してもらったことを聞いたことがある。不動産、車、店舗、小さな会社などだ。麗華の父親が彼女が結婚する時に渡したその小さな会社は、数十年経って彼女の手によりすでに大企業に成長している。その収益は数十億にのぼる。唯花が自立したいと、彼の世界に溶け込み慣れるまで時間がほしいと言ったその理由が少しわかった気がした。唯花は笑った。「自分のことは自分で面倒見れるから。あなたもでしょ」理仁はもう長いこと彼女の笑顔を見ていなかった。この時やっと彼女の笑顔を見ることができて、彼は我慢できず手を伸ばし、軽く彼女の顔に触れた。熱のこもった瞳で見つめ、その声はかなり落ち着いていた。「唯花さん、君の笑顔は太陽の光みたいに、心を照らしてくれるね。冷たくなった心がすごく温かくなったよ」エレベーターの中には他には誰もいない。彼はその長い腕を伸ばして陽ごと唯花を抱きしめた。陽は二人の間に挟まれて顔は理仁の胸元で視界を遮られた。その隙に理仁は素早く彼女のその赤い唇を奪った。お互いの唇が重なり、理仁はたまらずため息を漏らした。彼女にキスしたい、もはや狂ってしまいたい。もっと深くキスをしたいと思ったところで陽がお邪魔虫となってしまった。陽は二人の間に挟まれて苦しくなって、必死にもがき始めたのだった。それで理仁は抱きしめるその手をしぶしぶ離すしかなかった。まるで何事もなかったかのように陽を彼女の元から抱き上げて、清らかな顔をして陽に尋ねた。「陽君、どうしたんだい?」陽
Read more

第915話

唯花は陽を抱いて車の前までやって来ると、鍵でドアを開け先に陽をチャイルドシートに座らせ、彼女の後ろに立っている理仁に振り向いて言った。「じゃ、行くわね」理仁は何か思いを巡らしている様子で彼女を見つめ、暫くしてからやっとひとこと絞り出した。「気をつけて」車のフロント部分をサッと見て、また言った。「車を変えようよ」すでに車に乗り込み、エンジンをかけていた唯花は車の窓を開けてひとこと彼に言った。「これはあなたが初めて私に買ってくれた車よ」その言葉に心が震えた。そして彼女は車を出して去ってしまった。彼はその場に立ったまま、その車が遠ざかるのを見つめていた。七瀬はボディーガードたちを引き連れて遠くから理仁を見守り、彼に近寄ることも離れることもできなかった。若旦那様と若奥様はもう喧嘩はしていないようだが、二人の間にはまだ距離があって以前のような仲の良さはうかがえない。唯花の車が見えなくなってから、理仁は手で合図を出した。そしてボディーガードたちはササッと彼の元へ集まった。「会社に戻る」理仁は低い声でそう言った。七瀬は運転手に連絡し、理仁はあのロールスロイスに乗り込むと、ボディーガードの車に護送されながら勢いよく会社に戻っていった。一方唯花のほうは直接姉の弁当屋へと向かった。唯月の弁当屋の内装はもうすぐ終わりを迎える。必要な物も全て買いそろえてしまっていた。彼女はイートインスペースも作りテーブルや椅子もきれいに並べ、掃除も終わらせて後は開店する日を待つのみだった。商売をするには、大安の吉日を選んで営業を開始する人が多い。弁当屋の店名は「まんぷく亭」である。おしゃれな名前ではないが、万人受けする大衆派の店といった感じだろう。この通りにはすでにファストフード店や飲食店がたくさんある。そして唯月がこの店の内装工事をしている間には、同じ通りにある店の店主がみんな、一体何の店ができるのか見に来ていた。彼らと競争相手になるのか気になったのだろう。それに中には早い段階で唯月に尋ねてきた店主もいた。彼女も別に隠すことなく弁当屋を開くことを伝えた。それからは、他の弁当屋の店主が唯月の店に暇を見つけてはやって来て、今は商売するのはとても難しいだのなんだの話してきたのだった。この通りには飲食店がその大半を占めているので
Read more

第916話

唯月はテーブルを拭いていたその手を止め、布巾を手に外へ出てきて微笑みながら妹が息子を抱いて車から降りてくるのを見ていた。「ママ」陽は小走りに母親のほうへやって来た。幼い陽が車から降りると、すぐ母親のほうへ駆けだしていくのを見て、唯花は姉にニコニコしながら言った。「いくら陽ちゃんを可愛がっても、やっぱり一番はママなのね」「それは当然よ。あなたも結城さんも子供好きなんだから、考えてみたらどう?」唯月はそう妹をからかうと同時に妹の顔色の変化にも注意していた。妹がただ笑うだけで何も言わないので、この夫婦のわだかまりはまだ完全には解けていないのだとわかった。「結城さん、あなたに何だって?」唯月は息子を抱き上げて、妹と一緒に店に戻ると、心配して尋ねた。姉にそう質問され、唯花はハッとしてあのファイル入れを取りに車に戻った。中には理仁の全財産が入っている。店に戻ると、唯花は作業員もそこにはいないのを確認して、姉に尋ねた。「もう終わったの?」「ええ、さっき終わったばかりよ。作業の方には先に掃除をして、それからどこかやり直しが必要なところはないか見るって伝えたの。もし、特になければ、明日費用の残りを内装会社に振り込むわ」唯月は息子を下におろし、店の中で好きなように遊ばせて、妹にお茶を一杯入れてやり二人はテーブルについた。唯月が何度もテーブルを拭いて綺麗にしたので、ぴかぴかだった。「お姉ちゃん、今とってもやる気があるでしょ?」唯月は笑って言った。「それはね。陽との将来のために、私は絶対頑張らないといけないんだもの。私の目標はこの『まんぷく亭』をここだけじゃなく、この星城の一番有名なチェーン店にしたいの」「お姉ちゃんならできるわ」そして唯花はあのファイル入れを姉のほうに差し出した。「これ、結城さんがくれたの。私はいらないって言ったんだけど、何度もしつこく私に保管してくれって引き下がらないのよ。彼、私が本当に求めているものは何なのか、まだ理解していないみたい」唯月は「これはなに?」と尋ねながら、その中を開けて取り出した。不動産権利書や店舗、車の鍵などだ。それよりも結城グループの株式譲渡契約書を見て、これこそ相当な額だろうと驚いた。あの会社の株はかなりの価値があるものなのだから。「結城さんはこれ全部あなたにって?」唯月
Read more

第917話

「まだお互いに時間が必要なんじゃないかしら」唯月は妹の手の甲をポンポンと軽く叩き、あの不動産権利書諸々をまたファイル入れに戻してから言った。「こんな重要書類、ここには置いておかないほうがいいわ。ここのマンションもなかなかだけど、それでも住んでいる人にはいろんな人がいるからね。セキュリティ面から言ってフラワーガーデンには敵わないわ。これ、あなたと結城さんのお家で金庫を買って保管しておきなさい。そのほうが安全だから。これは彼の全財産なんだもの」唯花は暫く黙ってから言った。「後でおばあちゃんに電話して、これ持って帰って保管しておいてもらう。あちらの家のほうが安全だから」「それもそうね」唯月はそれに関して特に意見はなく、妹に尋ねた。「昼ご飯はここで食べて行く?」「ちょっと神崎家の伯母様のところに行こうと思ってて、たぶんあっちでご馳走になると思う」「何か用事なの?」唯月は心配になって尋ねた。「何か伯母様にお願いすることがあるの?」神崎詩乃は彼女たち姉妹の血の繋がった伯母であり、星城において雲の上の人というような感じだ。しかし、姉妹は詩乃が伯母であることがわかった後も、姪であるという肩書きで何か自分たちの有利になるようなお願いなどしてこなかった。それに詩乃からの金銭的サポートだって断ったのだ。彼女たちが詩乃が伯母であるとわかっても、それはただ親戚の中の一人にすぎず、二人の生活がどう変わるということもないのだ。唯月のあの元義母が彼女の元へ現状の不満をぶちまけにやって来た時、唯月に対してあなたは馬鹿だ、神崎夫人に頼んで資金提供してもらいビジネスを始めればいいのにとまで言われたのだ。それをしなくても、神崎夫人にお願いして神崎グループで働かせてもらえば高給取りになれるのに等、云々言ってきた。それから、唯月に俊介の仕事もどうにかしてもらえないか夫人に頼んでくれとまで言ってきたのだ。俊介は家に帰るたびに、もうすぐクビになりそうだと弱音を吐いていて、佐々木母は慌てて唯月に彼の仕事まで頼みに来たのだった。しかし唯月は元義母の話は右から左に聞き流し、まったく聞く耳を持たなかった。「私、伯母さんを頼って、社交界に足を踏み入れて、溶け込めるかどうか、やっていけるかどうか試してみたいの。この間姫華がある投資に興味あるかどうか尋ねてきたわ。今ある全
Read more

第918話

食事制限もきちんとやっていて、糖分や脂肪分など摂らないようにしているのだ。今、唯月の体重は七十五キロまで減っていて、目標にしている五十キロまで、あと二十五キロ落とすのみとなっている。もう暫く努力すれば、標準体型に戻れるのだ。何十キロも脂肪を落として、彼女はかなり綺麗になっていた。唯月がジョギングを終わらせて店に戻ってきた時、店の前で元夫が待っていた。俊介は車を店の前に止めていた。唯月が店のドアを閉めていたので、彼は中に入ることができなかったのだ。片手をポケットに突っ込み、もう片方の手でタバコを持ってひたすらそれを吸っていた。唯月は眉間にしわを寄せた。本当に元夫が目の前に現れるのが好きではなかった。彼がここへ来るのも、別に息子に会いに来るためではないのだ。唯月はとても皮肉に思った。まだ離婚する前、俊介は朝早くから夜遅くまで家をあけていて、夫婦はちょっとした話をすることすらなかったのだ。彼女が彼にする話も家庭内のあれこれで、彼にとっては、なんの価値もない話題ばかりだったので、聞いて煩わしく思うだけだから、彼も彼女と交流するのは嫌がっていた。彼がしたいのは株や、プロジェクトなどの話で、彼女はもう会社を辞めてだいぶそのような話題からは離れてしまっていたので、彼に何かアドバイスすることもできなかった。彼はいつも二人には共通の話題がないと言っていて、彼女に構うのがうっとうしかったのだ。今は離婚してしまったので、彼女は一度も彼に会いに行ったことはなかったのに、彼は暇があれば彼女の目の前に現れるのだった。「どこ行ってたんだ?」俊介は唯月が帰ってきた後、姿勢を正して冷たい表情で彼女に詰問を始めた。「店を閉めてしまって、どうやって商売する気だよ?俺の金を無駄に使うんじゃねぇよ。お前、商売は簡単にできるとでも思ってんの?誰でも簡単に店長やってけるとでも思うのかよ?」「なにがあんたのお金よ。私は自分のお金を使ったわよ」俊介は冷たい態度を取ったので、唯月も同じく冷たい態度で返してやった。「あんた、ここになんの用なわけ?この時間帯、会社で働いてるんじゃないの?佐々木さん、私たちもう離婚したのよ。それなのにこう頻繁にやって来て、私の静かな日々を邪魔しないでくれない?あんたの奥さんが知ったら、またあんたを横取りしようとしているとかなん
Read more

第919話

唯月はあまりの怒りで笑いが込み上げてきた。「私があんたに仕事を失わせた元凶?あんたが欲深くなけりゃ、あんたにとって都合の悪い証拠なんて落ちてくるわけなかったんじゃないの?あんたは自分から仕事をなくすような真似をしたのよ。誰かを恨むなんておかしいったらありゃしないわね」彼女は冷たく言った。「私だって後悔しているわ。さっさとあんたがこれほどのクズだって見抜けなかったことをね。もっと早くあんたと離婚しておくべきだったわ。佐々木俊介、言っとくけど、私は一生あんたと離婚したことを後悔したりしないわ!」俊介は怒りの目で彼女を睨みつけ怒鳴った。「俺が欲深くなくとも、てめぇには結城理仁の助けがあったから、どのみち俺が仕事をなくすことには変わりなかったんだ!唯月、夫婦としての情は一切なかったのか、俺らだって数年は夫婦としてやってきたんだ。それなのに、ここまでひどい真似して、俺をはめやがったな!」離婚する時、彼は彼女に対して、あの証拠を使って彼に復讐しないようにと条件をつけていて、唯月もそれに同意していたのだ。しかし、それはただ彼女自身が何もしないと約束しただけで、唯花夫婦二人のことは言及していなかった。これは明らかにわざとだろう。「おまえ、もっと前から結城理仁があの結城家の御曹司だっていうことを知っていたんじゃないのか?あいつが俺を完膚なきまで叩きのめすと、仕事を失って前途を断たれると知っていたんだろう」「私がどうやって結城さんの身分を知ることができるのよ?」唯月はそれに反発した。「私はただ子供の面倒を見ることができるだけの専業主婦よ。それなのにどんな手で彼の正体を知ることができるっていうの?私があんたをはめたって言うけど、どうやってはめるって?離婚は私たち二人のことよ。自分がやることは自分で決められるけど、唯花と結城さんがどう思って、何をするか、私は思いもつかないことだわ。あんたの母親と姉が今後私に迷惑をかけにくることは絶対ないって言い切れないでしょ?それと一緒よ」佐々木英子の話になって、俊介はまた新たな突破口を見つけたようにこう言った。「姉ちゃんと義兄さんも仕事をなくしたんだぞ。それも結城理仁がやったことなんだろ?絶対にあいつだ、結城理仁の野郎がおまえに代わって手を出してきたんだ!」唯月は冷たく笑った。「結城さんは唯花の夫よ。妹の夫が私のた
Read more

第920話

彼はあんなに太っていて、醜くなったんだから、唯月のことなどとっくに興味はないと言いたかった。しかし、今彼女は数十キロ痩せて離婚前と比べるとかなり綺麗になっているので、喉元まで来たその言葉を呑み込んでしまった。太る前の唯月は、実際かなりの美人だったのだ。見た目も能力においても莉奈に劣らないくらいに。「莉奈は考えすぎなところだあるからな。俺らは一度夫婦だった仲だから、俺らが連絡を取り合えば莉奈が誤解し疑ってくるのも仕方ない話だ。唯月、莉奈と無駄な争いなんてするなよ」もし唯月がまだ彼のことを愛していたら……二人の女性が彼をめぐって争うことになれば、俊介は思わず自分が相当ハイスペックだろうと自画自賛するところだ。しかし、これはただの戯言。唯月はとっくの昔に彼には冷めている。俊介は複雑な気持ちになった。彼のほうが先に唯月のことを裏切ったのだ。しかし、唯月が彼への愛を失った後、なんだか悔しく感じてきたのだ。彼は離婚した後、莉奈との日々がさらに熱く燃え上がり、幸せに過ごしていくと思っていた。そんな彼らとは逆に、唯月は落ちぶれていき、惨めな日々を過ごすことを期待していた。しかし現実は、唯月のほうが良い生活を送っている。「唯月、今俺は仕事をなくして、新しいのを見つけるのも困難だ。あの結城理仁が絡んでるから、仕事を見つけようにもうまくいくわけないんだ。俺らは夫婦として数年やってきたし、陽っていう息子だっている。ちょっと助けてくれねぇかな?この店に一体いくらかかった?百万ちょいか?多くて開店資金は二百万ってとこか?俺らが離婚した時、二千万以上そっちに渡しただろ。残ってる金を臨時で貸しといてくれないか。俺と莉奈はいつ結婚式を挙げるか今考え中だ。吉日を選んで結婚式、披露宴にみんなを招待したりで、いろいろ金がかかるんだよ。今手元にはそんなにたくさん金がなくてさ。金を貸してくれたら、新しく仕事見つけて稼いでまたおまえに返すよ。陽だっているんだから絶対に返すって約束する」唯月は彼に背を向けて店のドアを開け、店の中からバケツに水を入れて出てきた。そして、そのバケツを力いっぱい俊介の前まで運んできて、彼に向かって言った。「ちょっと腰屈めてこの中のぞいてみなさい」「何を見せたいんだ?」俊介は訳がわからないといった様子だった。「水に映
Read more
PREV
1
...
9091929394
...
137
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status