唯花も夫側の家族たちは、みんな教養も高く素晴らしい人たちだと思っていた。しかし、義母は彼女のことをそこまで認めてくれていないと、彼女自身感じ取っていたのだった。今のところ唯花と義母である麗華が一緒にいる時間は短く、そこまで深く関わっていないので、まだ摩擦は起きていない。しかし、今後接する時間が長くなれば、伯母が若かった頃のような目に遭ってしまうのではないだろうか?彼女は夫側の家族から嫁としてきちんと認めてもらいたいのだ。「結城さん、とりあえずここまでにしておきましょう。もう遅いし、あなたも早めに休んだほうがいいわ。それじゃあね」唯花は怒りを抑え、理仁とは言い争いをすることはなかった。それに彼を納得させることだってできないだろう。彼女が求めているものを、彼には理解できないのだから。話してもわかり合えないのだから、いくら続けたって無意味だ。唯花はそのような無力感に襲われた。彼女はこれ以上彼と話していると、夫婦喧嘩を起こしてしまいそうに思った。そして、その言い争いがどんどん激化していったら、二人の関係がさらに悪化してしまう。彼女は二人の仲を解決するために来たのであって、喧嘩をしに来たわけではない。理仁は立ち上がり彼女の腕を掴んで、低い声で言った。「唯花さん、俺はもう一度新たに契約を結ぶつもりなんかないよ。俺らは結婚したんだから、一生夫婦であり続けるんだ」「契約しないなら、しないでいいわ。早めに休んでちょうだい」唯花は彼の手を振りほどこうとしたが、彼の力には敵わず、もう片方の手は自由にできるのだが振りほどくことができなかった。ずっと彼は放してくれないのだ。理仁は唯花が真面目に取り合ってくれず、彼の話を全く聞き入れるつもりはなく、やはり彼女が言ったようにしようとしているのを見て、少し苛立ちを覚えたのだ。しかし、怪我をした彼女の左手に目がいった瞬間、彼の怒りは一瞬で消えてしまった。理仁が本屋であの言葉を言った時の態度が悪かったせいで、彼女がうっかりこの傷を作ってしまったのだ。彼女が怪我をして、彼は心を痛めていた。夫婦が何かに対する見方や考え方が違う時、彼も彼女を説得することはできず、彼女も彼を説得できずに平行線をたどる場合、彼が怒りを爆発させてはいけないのだ。そんなことをすればまた彼女を傷つけることになってしまう。
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