「……おい、桜子……き、君……どうやって入ってきた?いつから……」隼人の頭はまだぼんやりしていた。無意識のまま彼女に手を伸ばし、気づけば両脇に添えて、やさしく上下になでている。桜子は胸元を押さえ、ぷくっと頬を膨らませて唇を尖らせた。「はぁ……びっくりした。さっきの目、分かる?すっごく怖かったんだけど。今にも食べられそうだったよ?」「……ごめん、桜子。昔、軍にいた頃の癖だ……治らないんだ、反射みたいなもので」その言葉を聞いた瞬間、桜子の瞳にじわりと痛みが滲んだ。白い指先で、そっと彼の頬を撫でる。隼人は胸が締めつけられるような思いになり、彼女の手を取って掌に口づけた。けれど、心の奥はどこか落ち着かないままだ。「……どうして来たんだ。こんな時間に。誰かに見つかったら――」「こっそり?ここ、私の家だよ?」桜子はくすっと笑って、彼の鼻先を指でつついた。「何がこっそりなの。私は堂々と入ってきたんだけど?」「……」「ん?なに、宮沢社長。ちょっと焦ってる?」隼人は小さく息をつき、苦笑を浮かべる。「……ここに来るのは初めてなんだ。本当の意味での君の家に。桜子……俺は、君の家族に、ちゃんとした印象を持ってもらいたい」その声は、どこか自信がなかった。「ぷっ……なにそれ」桜子は思わず吹き出しながら、彼のシャツのボタンを二つ、いたずらっぽく外す。「うちの人たちってね、めちゃくちゃ面倒で、扱いづらくて、媚びも通じないタイプなの。じゃなきゃ、あの白石家の連中がとっくに入り込んでるでしょ?」「……桜子」「でもね」彼女は優しく微笑んだ。「みんな、少しずつあなたを受け入れてる。だから怖がらなくていい。あなたはあなたのままでいいの」そう言いながら、いつの間にかボタンはすべて外されていた。「それよりさ、また徹夜で仕事してたでしょ?そんな座ったまま寝てたら、明日絶対腰やるよ。ヘルニアとかになったらどうするの」軽く額をつつく。「ほら、脱いで。ちゃんと着替えて、横になって寝る」「……分かった」隼人は素直に従った。だが着替えの途中、軽く伸びをした瞬間――ピキッ、と鈍い痛みが走る。思わず顔が歪んだ。……マジで歳か……?「桜子、もう部屋に戻って――」言い終わる前に。するり、と小さな体
続きを読む