「責任を取る」。その言葉は、亜矢子の心の琴線を激しく震わせた。だが彼女は意を決し、栩を強く押しのけると、その腕の中から逃れた。「安心して。私、そんな面倒な女じゃないから。それに、初めてのキスってわけでもないし。大げさに責任取るなんて言わなくていいの」亜矢子はさらりと髪をかき上げ、気さくに手を振った。「高城検事、かっこいいのは認める。でも私、ちょっと悪い男が好みなの。正義の化身みたいな優等生にはあんまり興味なくて」悪い男?まさか、檎のあの魔王――優希みたいなタイプか?!優希にはもう相手がいる。だが檎はまだ独り身だ。しかも今夜は酒も入って、空気はまるで合コンのように賑やかだった。自分でさえ理性を保つのに苦労したほどだ。もしかして彼女は……檎に惹かれているのか?突然襲ってきた危機感に、栩は思わず口走った。「たまには好みを変えてみる気はないのか?」亜矢子は平静を装っていた。だがその言葉に口元がぴくりと引きつり、吹き出しそうになるのを必死で堪える。「私は別に構わないよ。恋愛なんて、一番大事なのは新鮮さと刺激だから」妖艶な笑みを浮かべる彼女は、まるで人の心を惑わせる妖精のようだった。「でも高城検事。いつ心変わりするか分からない独身主義の私に、ついてこられるの?」……その後、亜矢子は慌ただしく桜子に事情を説明し、仕事の用事があると言って、迎えに来たアシスタントとともに帰っていった。桜子は親友のことが心配でならなかった。同時に、二人の間で何があったのか気になって仕方がない。そこで彼女は、急いで栩を問い詰めに向かった。一階のリビングでは、栩がソファに沈み込み、白倉が持ってきた酔い覚ましのお茶を飲みながら、どこか浮かない顔をしていた。「いったいどういうこと?亜矢子に何したの?」桜子は初手から完全に詰問モードだった。何があろうと、まずは親友の味方である。「キスした」ここまで来たら、隠す気もない。聞かれたことに、素直に答えた。もしかしたら妹が何か助言をくれるかもしれない。そんな期待も少しだけあった。「きゃあっ!」次の瞬間、栩は額に痛みを感じた。桜子が果物皿からブドウを一粒つまみ上げ、思いきり彼の額へ投げつけたのだ。「だからだったのね!亜矢子、戻って
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