桜子は最終的に、達也に手配され、隆一に家まで送られることになった。隼人は裕也の車椅子を押しながら駐車場に向かって歩いていた。その後ろには、昭子がまるでお尻を追いかけるようについてきて、かなり煩わしい存在だ。「いつまでついてくるつもり?」隼人は急に立ち止まり、振り向かずに問いかけた。突然立ち止まったため、昭子は慌てて隼人にぶつかりそうになり、ぎこちなくよろけてしまった。「隼人お兄ちゃん、私、あなたと一緒におじい様を家まで送って行きたいの」昭子は可愛そうな表情を浮かべて言った。「おじい様は病院から帰ったばかりで、きっと色々と気を使わないといけないところがあると思うの。手伝いたいの......」「手伝い?お前に何ができる?」隼人は冷たく反問した。昭子は言葉に詰まる。「俺はお前を育てたからわかるよ。本田夫人とお前の兄がどうやってお前を守っているか、全部見てきた。でもお前は手も汚したことがないだろう。お前ができることなんて何もないよ」隼人は冷たく言い放った。「隼人お兄ちゃん、私は......」「おじい様が必要としているのが誰か、お前はわかっているだろう?」隼人は桜子のことを思い出し、胸が痛むような感覚に襲われた。長い睫毛を伏せて、「お前の気持ちはわかるけど、本田家に帰って、本田会長に孝行してあげた方がいいよ」と言い放った。その言葉を言い終わると、隼人は裕也を連れて歩き去った。昭子はその場に立ち尽くし、顔を真っ赤にして、風の中で無力に立ち尽くしていた。帰り道、運転手が車を運転し、武田秘書が車を押して、隼人と裕也は後部座席に座っていた。車内は暖房がしっかり効いていたが、裕也の険しい顔を見ていると、車の中の空気がまるで冷蔵庫のように冷たかった。隼人は裕也がとても怒っていることを感じ取った。桜子との離婚は事実であり、二人の間に解決不可能な矛盾があることも事実だ。隼人は無我夢中で桜子を追い続け、全身全霊で尽くしたが、それでも桜子からの信頼を得ることはできなかった。一方的な努力を恐れてはいなかったが、ただ、桜子が自分を信じていないことを恐れていた。ようやく月見浜の別荘に到着し、隼人は車から降りて武田に車椅子を準備させ、裕也を座らせようとした。「車椅子なんて使わない!わしは障害者じゃない!なんで車椅子に
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