二人とも、愛する人のために絶望という名の泥沼の中でもがき、地獄のような苦しみを味わい、そこから抜け出せなくなって、心を病んでしまったんだ。霜村凛音と望月景真の境遇は、似ているようで似ていない。二人はどちらも、全てを捧げて愛したのに、結局、その愛は実らなかった。ただ、霜村凛音はそこから抜け出すことができた。愛した人は、どうしようもない事情を抱えていたのだと、理解することができた。しかし、望月景真は......彼もまた、仕方なく諦めた。しかし、彼にとってさらに残酷だったのは、かつて彼を深く愛してくれた女性が、彼が記憶を取り戻した後、他の男を愛してしまったことだ。霜村凛音がが落ちた地獄がまだ浅い方だと言うなら、望月景真が落ちた地獄は底なし沼のようだ。10年以上も愛し続けた人が他の男を愛するなんて、誰が受け入れられるだろうか。霜村凛音は望月景真の絶望を理解していた。だから、この話を聞くとすぐに、荷物をまとめて駆けつけたのだ。別に恩を売ろうと思っているわけではない。ただ、かつて自殺まで考えた自分が、誰かに助けてほしかった、手を差し伸べてほしかった、という思いがあったからだ。望月景真がどのようにして今まで耐えてきたのか、何のために生きているのか、自分は知らない。ただ、同じ病気で苦しむ人を、死に追いやりたくなかった。霜村凛音が来るとは思っていなかった和泉夕子は、彼女がうつ病を患っていたことを少しだけ知っていたので、もしかしたら桐生志越の助けになるかもしれないと考えた。「もし差し支えなければ、ご一緒しよう」霜村凛音は首をかしげ、和泉夕子に上品な笑みを浮かべた。「困っている人を助けるのに、面倒だなんて思わないよ」彼女はボランティア活動もしており、多くの困っている人たちを助けてきた。彼女にとって、これはただの善行に過ぎなかった。温厚で優しい彼女は、お嬢様育ちなのに気取らず、誰にでも優しく接する。和泉夕子は彼女のことを気に入った。ブルーベイの女主人が了承したので、主人である霜村冷司も異論はなく、三人の女性を連れてヘリコプターに乗り込んだ。夕方7時頃、ヘリコプターは霜村冷司の帝都にある別荘に到着した。日が暮れていたので、和泉夕子は白石沙耶香と霜村凛音を別荘に泊めることにした。しかし、白石沙耶香は冷たい雰囲気の霜村冷司と一緒の空
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