時也が華恋を抱えて外に出ると、暗影者の一団がぽかんと彼を見つめていた。まるで新大陸を発見したような目だった。彼は眉をひそめた。「何をぼうっとしてる。さっさと車を回せ!」暗影者組織のリーダーであるアンソニーが最初に我に返り、すぐに無線で車を呼び寄せた。まもなく黒いサンタナが到着した。時也はすぐに華恋を抱いたまま乗り込んだ。「すぐに……」彼が告げたのは、マイケルの弟子が運営する心理療法室の住所だった。運転手は一瞬驚いたが、すぐに車を目的地へと走らせた。その間、運転手は何度もバックミラー越しに後部座席をチラチラと見た。そこにいるのは、あの冷酷で有名な時也様なのかと、何度も自問した。ついに車は心理療法室に到着した。時也は華恋を抱えたまま中へ入り、正面でマイケルと出くわした。「いつ帰ってきた?」時也の顔に、ようやく少しだけ柔らかい表情が浮かんだ。「今朝帰国したばかりです」マイケルは時也の腕に抱かれた顔面蒼白の華恋を見ると、すぐに眉をひそめた。「何がありましたか?」「襲われて、精神的ショックを受けた」「外傷は?ケガがあるなら、まずは病院です」「ない。俺が確認した」時也は焦りながら続けた。「ちょうどお前が戻ってきてよかった。早く診てくれ……」彼が最も心配しているのは、ショックが華恋の精神にどんな影響を及ぼすかだった。「分かりました。ここで少し待っててください」マイケルは看護師を呼んだ。「ギャッジベッドを準備して、このお嬢さんを検査室に運んで」数人の看護師がすぐにギャッジベッドを押しに行った。まもなく、彼女たちは戻ってきた。「この方、彼女をギャッジベッドに寝かせてください」時也はM国にいる時も謎めいていて、これらの看護師たちは時也の素顔を一度も見たことがなかった。ましてや、時也の顔にはマスクがかかっているため、目の前の人物が名高いSY社の社長であることなど、当然ながら知る由もなかった。時也は言われた通り、華恋をベッドに横たえようとした。そのとき、彼女の小さな手が彼の服の裾をぎゅっと握っていたことに気づいた。彼女の顔色は真っ青で、目をうっすら閉じたまま、まつげは蝶の羽のようにかすかに震えていた。口元は恐怖の呟きでいっぱいで、その小さな手は必死に服の裾を握りし
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