「庄司先生、こんばんは」「どうして今頃帰ってきたのか?」「図書館で少し勉強しました」話しているうちに、二人は七階まで上がっていた。「あ、弁当箱はもう洗っておきました。少しお待ちください……」凛はドアを開けて部屋に入り、すぐに弁当箱を持って出てきた。陽一は手を伸ばして、それを受け取った。突然、彼が口を開いた。「最近、大谷先生が課題、見てくれてるんだろ?」「はい。ただ、進捗はあまり……」「前に大谷先生とその話したことあるけどさ、アプローチに問題があると思う。でも先生の性格、君も知ってるでしょ?最後まで検証しないと引き返さない人だから」凛も気づいていた。実際、それは大谷にもお話ししたことがあった。しかし先生は、「まだ十分なデータが揃っていない状態で研究の方向を変えるのは、これまでの二年間の努力を無にする」と言っていた。「今週の土曜日は空いてる?一緒に飯でも食いながら、どうやって説得するか相談しよう」「土曜日ですか……」凛は少し唇を引き結び、申し訳なさそうに言った。「申し訳ありません、すでに予定が入っていまして……」陽一は一瞬間を置いて言った。「大丈夫、じゃあ都合がついたらまた誘うよ」「ぜひ」……土曜日、凛は早苗と一緒に学而の家で落ち合った。【もう管理会社に連絡済み。入るときに部屋番号を伝えて】学而からLINEメッセージが届いた。凛は目の前にそびえるマンションを見上げた。早苗は感心したように口を開いた。「学而って本当にお金持ちなんだね」この部屋は賃貸ではなく、購入したものだった。そして、登記されている名義は学而本人だった。さっき入館手続きをしたとき、二人ともその名前を確認していた。「そうぞ。使い捨てスリッパあるから」学而は12階に住んでいた。凛と早苗が玄関に入ると、感応ロックが自動で解除され、彼はドアを開けながら軽く声をかけた。「何か飲む?」早苗の目がぱっと輝いた。「コーラ、ある?」「あるよ。普通のコーラにする?それともゼロ?」「もちろん普通のコーラよ!ゼロなんかまるで偽物だよ!」学而は特に肯定も否定もせず、今度は凛に視線を向けた。「何か飲む?」「水で結構」凛は飲み物にこだわりがなかった。スリッパに履き替えた凛は、部屋の中をさっと見回した。内装
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