門は固く閉ざされ、物音一つしない。彼女はふと、陽一にしばらく会っていないことに気づいた。二人は出かける時間帯が似ていたので、以前はよく顔を合わせたものだが、最近はなぜか一度も会っていない。陽一は忙しすぎて、研究室に泊まり込んでいるのかもしれない。凛はあまり気に留めなかった。夜、彼女は図書館で少し過ごしてから帰宅し、着いた時にはもう八時を回っていた。アパートの入り口に入った途端、背後を何かがすっと通り過ぎた――それは夜のランニング中の陽一だった。彼女は慌てて声をかけた。「先生――」だが彼は気づかなかったかのように、そのまま走り去ってしまった。凛は少し戸惑った。声が小さすぎたか、それとも彼はイヤホンをしていたのだろうか。凛は家に帰って運動着に着替え、自分もランニングに出かけることにした。ついでに陽一に会えれば、CPRTの購入ルートについて聞くつもりだった。正直なところ、機器を購入するという話が出た時、真っ先に思い浮かんだのは陽一と大谷だった。けれど大谷は最近また体調が優れず、頻繁に病院に通っているので、凛は気軽に頼ることができなかった。自費で機器を購入する話が広まれば、上条のチームが意図的に研究室を占拠していたことも隠せなくなる。大谷の性格なら、病院から飛び出してでも上条と学校に直接抗議しに行くだろう。だが今のところ、学校は明らかに上条の肩を持っている。大谷が出ても、いい結果にはならない。無駄に怒って体調を崩すのは、どう考えても割に合わない。だから、陽一に頼るのが一番いい。けれど、どうしたことか、凛がメッセージを二通送り、電話も一度かけたのに、彼からの返信も応答もなかった。凛は、彼が忙しくて携帯を見る暇もないのだろうと推測した。直接会おうにも、ようやく今日になって姿を見かけたくらいだ。もともと凛は時也と連絡を取り、明日の食事の約束をしていたが、心のどこかで、やはり陽一から協力を得たいと思っていた。彼女はなぜそんな思いが湧くのか、自分でも考えた。もしかすると……時也の不確実さや圧の強い雰囲気に比べて、陽一ははるかに安心できる存在だった。彼の生来の誠実さか、それとも紳士的な態度のせいか――いずれにしても、彼の助けは凛にとって重荷にならなかった。常に「どれだ
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