「いい子にして。俺が行ってくる」黒澤は真奈の不安を察し、声を潜めて言った。「この数日は佐藤邸でゆっくり休んでいろ。俺が代わりに様子を見てくるから」真奈は首を振った。「だめよ。福本宏明さんは陽子のために白石を助けに行ったの。その陽子は私のために動いてくれた。今、何か起きているかもしれないのに、あなたを一人で行かせるなんてできないわ。ここに残れと言われても、安心なんてしていられない」真奈の様子を見て、黒澤は胸を締め付けられる思いだったが、彼女の意思を尊重することにした。黒澤は頷いた。「どうしても行きたいなら、一緒に行こう。二人なら何かあっても互いに支え合える」真奈が頷いた。何事もないのが一番だ。すべてがただの偶然であってほしいと願わずにはいられない。だが、もし白石に問題があるのなら……自分の口で直接、問い詰めなければならない。この二年間、共に戦い支え合ってきた絆は、果たして偽りだったのか。「海外へ行く必要はなくなった」不意に、二人の耳に冷ややかな声が飛び込んできた。入口に立っていたのは、佐藤泰一だった。佐藤泰一沈痛な面持ちで言った。「たった今、知らせが入った。海外の福本家で不幸があった。福本宏明は深夜に急病で倒れ、いまも病院で救命処置を受けている」「白石は?」問いかける真奈の声は、激しく震えていた。「白石は……行方不明だ」その場にいた者たちは皆、鋭い察しを持っていた。白石の失踪が何を意味するか、理解できない者はいない。一同の視線が、一斉に真奈へと注がれた。真奈の瞳は、すでに赤く潤んでいる。あまりの衝撃に言葉を失ったのか、彼女はただ立ち尽くし、一言も発せぬまま全身を小刻みに震わせていた。「真奈……」幸江が慰めの言葉をかけようとした。だが、何も言葉が出てこなかった。信じていた者に裏切られる――そのつらさは、決して軽いものではない。「海外を見に行きたい」「行ったところで、事態は変わらない」佐藤がそれを遮った。「福本宏明は昏睡状態だ。すでに福本家は福本信広が引き継ぎ、福本宏明は秘密裏に軟禁されている。面会は一切、許されない状況だ」「誰がそんな命令を?」「福本家の新当主、福本信広だ」その名を聞いた瞬間、真奈は自嘲気味に、信じられないといった様子で短く笑った。福本信広?
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