先天的に感情が欠けていたわけじゃなかった。感情という神経が、自分の中に存在しなかったわけでもない。黒澤は自分の感情を全部麻痺させていただけだった。恐怖も悲しみも感じなくても済むように。黒澤を冷たく、無感情な人間へ変えていたのも、結局は身体が自分を守るためだった。あの日、黒澤家に事件が起きた。両親が交通事故に遭ったのだ。同じ車に乗っていた黒澤は、なぜか生き延びた。病院は大混乱で、黒澤は無感覚のまま手術室の外に立ち尽くしていた。駆けつけた祖父は、高齢にもかかわらず、息子と嫁が手当ての甲斐なく亡くなったと知り、ほとんど気を失いそうになった。黒澤は周囲の感情を感知できなかった。それらが自分の体から引き離されたかのようだった。祖父は黒澤を抱きしめて泣いたが、黒澤には涙が出なかった。なぜ泣く必要があるのかもわからなかった。黒澤は生きる意味を見失い始め、毎日ぼんやりと過ごすだけだった。その後、祖父は黒澤に復讐のために生きろと言った。祖父の言葉を信じるしかなかった。復讐への道のりで、生きる希望を見出せるかもしれないと。海外での生活は苦しかった。だが幸いにも、黒澤はどんな苦痛も感じなかった。すべては復讐復習のためだけだった。黒澤は海外の勢力を必要とし、だからどんなに多くの人を殺しても、それは任務を達成するためだけのことだった。瀕死の人間が助けを求めるのを見ても、黒澤は冷淡にその命を奪うだけだった。あの数年間の血と死に染まった日々が、黒澤をさらに深い闇へ突き落としていった。そんな黒澤を救ったのが、真奈だった。あの一筋の赤いドレスは、血と同じ色なのに、真奈の身にまとえば、不思議なほど生命力に満ちて見えた。黒澤は、焼け野原の中でも必死に芽吹く草を見たような気がした。これほどまでにみなぎる生命力を、久しく感じていなかった。清らかで、純粋で、誠実で、勇敢。それはまるで、黒澤の胸の中で枯れ果てた稲田に、再び水を注ぐかのようだった。水を与えられた稲は、狂ったように伸びていった。真奈への愛もまた心の中で芽生え、時が経つにつれて、もう止められないほどになっていた。もしあの交通事故がなければ……『ドーン――!』「くそっ!どこのどいつだ!」赤髪の少年が、大通りでさっさと車から降りると、怒
Read more