真奈が答える前に、福本陽子はもう真奈の手を取って、デッキの端へと連れて行っていた。少し離れたところで、福本陽子が真奈を連れ去るのを見た黒澤は、眉をひそめた。また俺の奥さんを連れ去ったな。女同士は、そんなに話すことがあるものなのか?福本陽子が真奈の耳元で何か囁くと、真奈は真剣にうなずいた。福本陽子が尋ねた。「できそう?」「できると思う」真奈が「できる」と言うのを聞いて、福本陽子はようやく安堵の息をつき、それから黒澤に手を振って言った。「黒澤さん、ちょっと来て!」「……」黒澤は二人のほうへ歩いていった。福本陽子は真奈を黒澤の胸元に押しやり、言った。「真奈がサーフィンを習いたいって、でもやったことないから、ちょうどここにサーフボードが二枚あるし、あなたが教えてあげてよ」「習いたいのか?」黒澤は真奈を見た。以前の真奈は、サーフィンに興味があるなんて一言も言ったことがなかった。「うん!」真奈は真剣な口調で言った。「一度もサーフィンをしたことがないから、挑戦してみようと思って。遼介先生、コーチをお願いします」「わかった」真奈が習いたいと言うなら、黒澤は決して断らない。福本陽子は悪戯っぽく笑って、その場を下がった。スタッフはすぐに二枚のサーフボードを真奈と黒澤の前に持ってきた。「ここは安全じゃない。岸に寄せてもらおう。そこで教える」「大丈夫、救命ボートがあるから」そう言いながら、真奈は海に浮かぶ救命ボートを指さした。噂では、福本陽子が海でサーフィンをすると聞いて、福本信広が心配し、十隻の救命ボートを手配したらしい。しかも救命ボートに乗っている救助員は、全員が十年以上の救助経験を持つベテランだという。万が一のことなど、まず起こりようがなかった。「それならいい。でも危険を感じたら、やめよう」「いいわ」真奈はかつて溺れた経験があったため、黒澤は普段から、真奈を海に入らせたがらなかった。しかし今のところ、大丈夫そうだ。やがて、黒澤と真奈は海に入り、黒澤は真剣に真奈にサーフィンのコツを教えていた。最初は真奈も真剣に学んでいたが、あっという間に姿が見えなくなった。黒澤が振り返った時、真奈の姿が見えず、黒澤の顔色は一瞬で青ざめた。「真奈!」黒澤はほとんど即座に海に飛び
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