真奈も呆然とした。「これ……オーストラリア産のロブスター?1.5キロもあるの?」近づいて覗き込むと、さらに目を疑うような巨大なカニがあった。「5キロのタラバガニ?幻の高級魚・クエ?」冬城は少し黙り込んだあと、ぽつりと言った。「それだけじゃない。ケブカイセエビと松葉ガニもある」「……」真奈は完全に言葉を失った。いくらここが海鮮の島なんて言われていたって、南海やオーストラリアの高級海産物がこんなに一度に揚がるなんて、ありえない。カメラマンのほうをちらりと見る。その目には「これ、まさか番組の仕込み?視聴者をバカにしてるの?」と書かれていた。カメラマンは慌てて首を横に振る。ほんとに違いますって!うちの番組にそんな予算ありませんし、ディレクターだって自分でこんなの食べたことないですよ!そうは言っても、もう獲れてしまったものを海に戻すわけにもいかない。昔から言うだろ、「タダで手に入るものを逃すのはバカのすること」って。なら、持って帰るしかないか。真奈が気づかないうちに、冬城はすでにあたりを見回していた。すぐに一艘の漁船に目を留め、眉をひそめながら漁師に声をかけた。「戻ろうか」こうして真奈と冬城は、海鮮をどっさり抱えて帰路についた。だが、その大量の高級海産物の入った袋を見た番組スタッフは、しばし無言で思案に沈んだ。ここには、こんなにたくさんの海鮮があるはずがない。冬城は袋の中を指さしながら聞いた。「足りるか?まだ欲しいなら、もう少しは獲れると思うけど」どうせ黒澤がタダで提供してきたんだ、だったらもうちょっと痛い目を見てもらっても構わない。「いえいえ、これで十分です!」ディレクターは汗を拭った。本来なら、真奈と冬城が投げた網には魚もエビもかからないよう、漁師に細工を頼んでおいたはずだった。なのに、この島の魚やエビはどうして揃いも揃って目がないんだ?よりによって、いちばん脂が乗って美味そうなやつばかり、二人の網にかかってやがる……計画は変更された。真奈と冬城の最初の任務は、完璧にこなされたうえ、驚くほど短時間で終わった。そのころ、伊藤と黒澤はすでに岸に上がっていた。黒澤が尋ねる。「次の任務は?」「市場で買い出し。今日一日の準備をしないといけないから。市場を回ったら、そのまま料理に取りかかる
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