真奈がそこまで言い切ると、朝霧は唇を噛みしめ、ためらいがちに口を開いた。「わ、私……あるディレクターからもらったチャンスで……」真奈は眉をひそめ、ぴしゃりと言った。「あなた、まだ佐藤プロの練習生でしょ。会社に黙ってディレクターと会うなんて、契約違反よ」「ただ、芸能界で生き残りたかっただけなの……本当にデビューしたくて……そのディレクターが、立花グループの晩餐会にチャンスがあるって言って……名刺もくれたの。彼の紹介って……でも、こんな場所だなんて、知らなかった……」朝霧には、大人の世界の裏側なんてわかるはずもなかった。立花グループの晩餐会が、企業家たちが欲望のままに獲物を物色する場だなんて、想像もつかなかったのだ。真奈はさらに問い詰める。「どのディレクター?」「前に会社がやり取りしてた番組のディレクター……私のことを将来有望って言って、連絡先を交換してくれたの。もう、どうしていいかわからなくて……」「そんな見え透いた手口に騙されて、本気で信じたの?」朝霧の愚かさに、真奈の声には呆れと怒りが滲んでいた。「そのディレクター、なぜ自分は来ないであなたに名刺を持たせて行かせたの?こんな大きな晩餐会で人脈も作らずに?あなたはただ、立花グループに差し出す商品だったのよ。何もわからないうちに売られたのよ!」その一言で、朝霧の顔から一気に血の気が引いた。彼女は何も知らなかった。本当に、何も……「道は自分で選んだんだから、自分でどうにかしなさい」必要な情報を手に入れた真奈は、それ以上朝霧に時間を割く気はなかった。真奈がその場を離れようとすると、朝霧は慌てて呼び止めようとした。だが、その肩を背後からそっと押さえる手があった。振り返ると、そこにいたのは森田マネージャーだった。呆然とする朝霧に、森田はにこやかに言った。「朝霧さん、ちょっとお願いしたいことがありまして」しばらくして、朝霧は不安げにシャンパンを二杯持って真奈の姿を探していた。彼女がこちらに手を振っているのを見つけて、真奈は眉をひそめる。「また何の用?」「さっきは言ってくれてありがとう。もう、自分が間違ってたって気づいたわ。お礼と……お詫びに来たの」そう言って、朝霧は手に持っていた一杯を真奈に差し出した。少し離れた場所では、森田とメイドが緊張した面持ちでその様子を
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