一晩中ほとんど眠れぬまま、翌朝まだ空が白み始める前に、中井が真奈と冬城を迎えに来て、空港へと向かった。今回のバラエティ番組の撮影地は、ある島だった。島全体が事前に番組側によって貸し切られており、参加するゲストは一組だけではなかったが、すでに離婚している夫婦たちは、それぞれ独立したアパートに振り分けられることになっていた。真奈と冬城が割り当てられたのは、島内にある一軒のアパート――というより、むしろ小さな別荘と呼んだほうがふさわしい造りだった。冬城の地位を考慮してのことだろう。冬城家ほどの規模はないものの、二階建てのこの家は、延べ床面積にして百平米は優に超えている。他のゲストたちは別々のエリアに滞在しており、少なくとも当面の間、真奈と冬城が顔を合わせることはなさそうだった。番組制作側の要求はいたって簡単だった。二人にこの静かな庭付きの家で一ヶ月間一緒に暮らしてもらう。ただそれだけだ。とはいえ素材を多く確保するために、撮影期間は一ヶ月から二ヶ月程度を見込んでいるという。また、制作側が用意した台本によれば、彼女と冬城は時間差でこの家に入ることになっていた。もちろん、この家の内外には隅々までカメラが設置されている。死角など存在しない。どこで何をしていても、すべて記録される環境だ。小さな庭に足を踏み入れた瞬間、真奈は思わず立ち止まり、目を見開いた。庭には色とりどりの花や木々が植えられ、廊下には小ぶりで愛らしい一羽のオウムがぶら下がっていた。玄関をくぐった途端、青々とした草の香りがふわりと鼻をくすぐる。こんな庭はずっと真奈の好みだった。だが、ふと現実に引き戻されたのは、あまりにも目立つ場所に取り付けられた監視カメラの存在に気づいたからだった。室内のインテリアも実に温かみがあり、どうやら番組ディレクターは事前にかなりのリサーチをしているようだった。ただ見映えのいいセットではない。この番組は、本気で「離婚した夫婦の心の奥底にある、最も大切にしているもの」を掘り起こそうとしている――それは、家庭という名の温もりだった。すぐに、冬城も中に入ってきた。真奈の荷物はすでにすべて片付け終わっていた。彼女の寝室は二階で、もちろん離婚した夫婦という前提のもと、部屋はきちんと分けられていた。冬城も一言も発さずに、隣の部屋に荷物を片付け
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