「野崎?」静華はしばらく動きがないのを感じ、とろんとしていた目が次第に覚醒していく。「どうしたの?」胤道は彼女の胸に顔をうずめた。「……もう少し、待ってくれ」「何を待つの?」「目が良くなるまで」静華はそこでようやく、胤道が自分にそれ以上触れようとしないことに気づいた。彼女は身を起こした。「どうして?」胤道は彼女が誤解するのを恐れ、苦しげな声で説明した。「神崎に言われた。お前の今の体では……危険だと。万が一、力を入れすぎて脳の血腫に障れば、治療に影響が出る、と」「神崎さんが言ったの?いつ?」「あの日のバルコニーで」静華はそれでようやく理解した。どうりで、これまで胤道がいつも会議や仕事を口実に、彼の熱を感じていながらも、途中で不意に止めてしまっていたわけだ。「だから、お前の目のためだ。あと数ヶ月、待ってくれ」胤道は彼女を抱きしめ、その耳元で囁いた。「あるいは……」彼が何を囁いたのか、静華は二秒ほど固まり、やがて顔を真っ赤にして布団の中に体を丸め、穴があったら入りたいとでも言うように縮こまった。「どうだ?」胤道は彼女の意見を尋ねた。静華は考える間もなく首を横に振った。「私、別にそこまで……もう寝ましょう。彼女がダメだっていうなら、それでいいわ」ただ、考えてみると、どうにも気が滅入る。香澄の一言で、胤道の態度が左右されてしまうのか?では今後、香澄が胤道に自分と接触するなと言えば、彼もその通りにするのだろうか?胤道は静華の機嫌が良くないのを感じ取り、彼女を腕の中に抱き寄せてなだめた。静華はしばらく身じろぎしていたが、やがて彼の腕の中で眠りについた。翌朝、静華は胤道の腕の中で目を覚ました。だが、胤道はすでに上着を着ており、おそらく、昨夜のように理性を失うのを恐れたのだろう。彼女が少し身じろぎすると、胤道の薄い唇が追いかけてきて、昨日我慢した分を取り戻すかのようにしばらく唇を貪った。「お前はもう少し寝てろ。俺は書斎に行く」「うん」静華は目を閉じたまま眠りを続け、胤道はネクタイを締めると、まっすぐ書斎へと向かった。その頃、階下で書類を見ていた香澄は、胤道が静華の部屋から出てきて書斎へ向かうのを見ると、考える間もなく書類を閉じ、、階段を上って書斎へと向かった
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