何の物音もしなかった。静華は不思議に思い、手を伸ばすと、布団の中は空だった。ベッドに彼の姿はなかった。洗面所にも気配はなかった。静華は、湊がいつ出て行ったのか分からなかった。洗濯に行った時、ベッドに彼がいるか確かめる余裕はなかったのだ。こんな寒いのに、湊はどこへ行ったのだろう?ちょうど彼の行き先を考えていた時、ドアが開き、外の風と共に、男特有の匂いが流れ込んできた。静華はベッドから立ち上がった。「湊?」「俺だ」静華はほっと息をつき、歩み寄った。「どこに行ってたの?」湊が握ってきた手は、少し冷たかった。彼は空いた方の手で説明する。「医者に、もっと運動しろと言われてな。今朝は少し早く目が覚めたから、下を散歩してきた。どうした?」「……ううん」静華は一瞬、上の空になった。なぜ不安なのか、自分でもよく分からなかったのだ。おそらく、その大部分は、胤道が湊の存在を知り、何か行動を起こすのではないかという恐れから来ていた。「今度散歩に行く時は、私も連れて行って」「疲れてないのか?」湊はからかうように言った。「昨日は枕に頭をつけた途端に寝てしまったじゃないか。よほど眠かったんだろう。しまいには、俺が話しかけても返事もしなかった」静華は気まずくなった。確かにこのところ、心のわだかまりのせいで、よく眠れていなかった。だが今は違う。湊は湊なのだと、もう確信している。その事実は、これからも変わらない。「昨日は、ずっとちゃんと休めてなかったから。もう大丈夫。私だって、今日は早く起きたじゃない?」湊はテーブルの上に置かれた服に目をやり、笑った。「そうだな。しかも、かいがいしく洗濯までして。恋人になった途端、ずいぶん甲斐甲斐しくなったな。いつになったら、その……恋人としての『役目』を果たしてくれるんだろうな」彼はからかっていた。機械音のせいで、かえって奇妙な雰囲気があった。静華は顔を真っ赤にした。湊は彼女の髪を撫でる。「冗談だよ。お前の恋人としての役目は、ただ俺のそばにいてくれることだけだ」「うん」静華は彼の胸に顔をうずめた。湊はしばらく彼女を抱きしめ、尋ねた。「少しは気分が良くなったか?」その言葉に、静華は固まり、心の中は複雑だった。彼女は無理に笑った。「気分が良
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