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572 Chapters

第571話

乃亜は電話を取ると、すぐに裕之の冷たい声が聞こえた。「今すぐ契約書を持って、安藤グループに来てサインしろ!」その口調は強引で、拒絶の余地はなかった。乃亜は唇を噛みながら、昨日直人が言ったことを思い出した。少し冷たく答えた。「安藤社長、すみませんが、私たち天誠は安藤グループとの契約を結ぶつもりはない」昨日、裕之はわざと直樹と陽子を呼んだのは、彼にもっと選択肢があることを見せつけたかったからだ。しかし、桜華法律事務所では彼にとって最良の選択肢ではなかった。直樹と陽子は長年桜華法律事務所にいるが、特に目立つ存在ではない。今の桜華法律事務所は、乃亜にとって十分な対抗力を持つ弁護士がいない。そのような桜華法律事務所がどうして彼女と競えるのか?安藤グループとの契約を結ばないことで、確かに収入が減るかもしれないが、それほど大きな問題でもないと気づいた。以前は悩んでいたが、今では気にしなくなった。電話の向こうで一瞬の沈黙があった後、再び裕之の声が響いた。「乃亜、お前は天誠の小さな弁護士に過ぎない。俺の提案を拒否する権利はない!今すぐ上司に電話して、お前を解雇させてやるぞ!」乃亜はその言葉を聞いて、思わず笑った。「今すぐ上司に電話してみなさいよ」そう言って電話を切った。裕之は天誠の上司が誰かすら知らないくせに、どうしてそんなことを言って脅すことができるのか。本当におかしい。安藤グループのオフィスで、裕之は怒りに満ちた顔で電話をデスクに投げた。乃亜という女が、どうして彼と対立できるのか!彼女は本当に、自分が電話して解雇させられると思っているのか?秘書が部屋に入ってきて、彼の怒りを感じ取り、慌ててファイルをデスクに置いた後、彼の後ろに回って、首に手を回しながら囁いた。「誰があなたを怒らせたのですか?教えて、私が代わりに怒りを晴らしてあげますよ」裕之は彼女をデスクに座らせ、指を彼女の唇に当てて、軽く笑いながら言った。「どうやって助けてくれるの?」「あなたが求めるなら、何でもします」彼女の声は甘く、柔らかかった。裕之はその声に惹かれ、思わず息を吸い込んだ。その後......オフィスの温度が上がった。しばらくして、裕之は椅子に座り、煙草を吸いながら静かに考え込んだ。その瞬間、彼は喜びを感じること
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第572話

だが、すぐにまた同じ番号から着信があった。裕之は顔をしかめ、苛立ちを隠さず電話を取った。「莉子、今俺仕事中だってのに、何のつもりだ!」すると、冷たい声が返ってきた。「莉子は今日、亀田病院で中絶手術を受ける。夫のサインが必要だ。今すぐ来い」それは直人だった。裕之は思わず声を荒げる。「は?俺は手ぇ出してねぇっての!妊娠なんて有り得ねぇだろ。署名が欲しいなら、そのガキの父親を連れてこい!」莉子は、母親に無理やり押しつけられた女だった。裕之は初めから、彼女を好きになったことなど一度もない。結婚してからの数年間、酔った勢いで暴力を振るうこともしばしば。手を上げるのも珍しくなかった。あれで渡辺家のお嬢様なのか、と思うほど、莉子はいつも怯えていた。殴られても家族には何も言わず、ひとりで黙って耐えるだけ。だから、余計に酷くなっていって、どんどん手がつけられなくなった。泣いて許しを乞う姿を見ると、妙な快感が湧いてくる。上流家庭の娘だって、俺の前じゃ地面に頭をつけて懇願する。それが、たまらなかった。「裕之、俺は莉子じゃねぇ。口の利き方に気をつけろ」直人の声が、さらに低くなる。「莉子は手術を受ける。今すぐ署名に来い。てめぇが安藤家の社長だろうが、関係ねぇ。舐めてるとどうなるか、身をもって教えてやる」それだけ言って、電話は一方的に切られた。裕之の目が細くなった。その目には、薄暗い光が宿っている。チッ、今回は兄貴にチクったのか。家に戻ったら、どうなるか思い知らせてやる。そう思いながらも、彼はデスクに戻って書類をまとめ、そのまま病院へ向かった。その頃、亀田病院の一室。莉子はベッドに横たわり、顔色は真っ白だった。昨夜、裕之に腹を蹴られ、夜中からずっと腹痛が続いていた。朝になって病院で検査を受けたところ、妊娠が判明した。子どもは、まだ守れる状態だった。けれど、もう無理だ。裕之との結婚生活は、すでに終わっている。この先を考えたとき、子どもを産む理由なんて、どこにも見当たらなかった。この三年間で、莉子はまるで別人になってしまった。明るくて、よく笑っていた自分は、もうどこにもいない。これ以上、裕之と関わるなんて、考えただけで吐き気がする。だから、決めた。
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