離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい のすべてのチャプター: チャプター 991 - チャプター 1000

水谷苑は桐島霞に桐島宗助とはどうしたいか尋ねた。桐島霞は淡々と言った。「宗助は私がB市で派手に遊んでいると思っているみたいですけど、そのままにしといたんです......結局、もう一緒にならないんですし、説明するのも面倒ですから」水谷苑は深く頷いた。桐島霞にはもっと良い人生を送ってほしいと思っていた。......あっという間に、水谷苑の誕生日がやってきた。九条羽も生後100日を迎えた。九条時也は帝国ホテルを貸し切り、妻の誕生日を祝った。今や、彼はB市で知らない人はいないほどの存在になっていた。会場には多くの著名人が集まった。黒木智も来ていた。九条時也はあの時の電話を思い出し、嫉妬の炎が再燃した。もう少しで黒木智に殴りかかるところだったが、二人とも世間体があるので、なんとかこらえた。少し離れたところで、九条薫は藤堂沢に寄りかかり、微笑んでいた。九条薫は記憶を失っていたが、藤堂沢は、彼女のことで黒木智と喧嘩をした時のことを思い出した。あの時、黒木智は「俺は彼女が好きなんだ」と啖呵を切った......まだ数年しか経っていないのに、今度は九条時也の妻に惚れているとは。藤堂沢は九条薫に尋ねた。「あいつら、どう思う？」しばらくして、九条薫はこう言った。「男はいくつになっても子供ね」そして、会場の中央を見つめた。兄が、妻を深く愛おしそうに見つめ、愛の結晶である九条羽を抱いている。九条薫の目にはうっすらと涙が浮かび、心から嬉しかった。藤堂沢は静かに彼女の手を握った......会場の中央で、九条時也は九条羽を抱き、マイクを握っていた。その細長い指にはプラチナの細いリングが光っている。今やB市中の誰もが、彼が妻を深く愛していることを知っている。もう誰も彼を夜の店に誘う者はいなかった。隣には、布で覆われたイーゼルが置かれている。これは九条時也が2週間かけて準備した、水谷苑への誕生日プレゼントだ。彼がそっと布をめくると、油絵が現れた――高級車の中で、男女が後部座席に座っていることが描かれている。若い男女だ。男は白いシャツを着ているが、そこには少し血痕が付いている。彼は少女をじっと見つめている......少女の瞳には戸惑いと、とまどいが浮かんでいる。......それは、二人の初めての出会いだった。水

夢の中で目覚めるように、二人はついに再会した。最後に会ってから、もう一年くらい経つだろうか。佐藤玲司は様々な経験を経て、すっかり変わってしまった。しかし、小林墨の瞳にはまだあどけなさ、純粋さが残っていた。それが彼をひどく苛立たせる。なぜ彼女は自分を騙した後で、平然と暮らしていられるのか。なぜ何事もなかったかのように、自分の前に現れるのか。彼女のその純粋さを、彼は憎み、引き裂きたい衝動に駆られた。「久しぶりだな」二人は向かい合って立っていた。街のネオンが彼の横顔を照らしているが、表情までは読み取れない。しかし、声は驚くほど優しく、まるで恋人同士のささやき声のようだった。星空が美しく輝いていた。小林墨は普段着を着ていて、袋を一つ提げていた。中には芽依（めい）のために買ったリンゴが入っていて、後でリンゴのピューレを作るつもりだった。芽依は彼女と佐藤玲司の子供だ。芽依が病気になり、治療のために小林墨はB市に連れてきた。一ヶ月が経ち、ようやく快方に向かっている......この間、小林墨は九条夫婦に頼ることもなく、B市にいることを伝えることもしなかった。本来は、明日には帰る予定だった。しかし、そこで佐藤玲司と出会ってしまったのだ。リンゴの入った袋が地面に落ち、いくつかが転がり出た。どれも黄色く熟していて......小林墨はリンゴを拾おうともせず、ただ立ち尽くしたまま、かつて深く愛した男を見上げていた。身動き一つできない。めまいさえ感じる。それは佐藤玲司と関係を持った後遺症だった。佐藤玲司はかがんで、リンゴを拾い集めた。そして、彼女に差し出した。彼女の唇が震え始めた。精一杯彼の名前を呼ぼうとしたが、声にならない......こんな再会の場面で、情けない。結局、佐藤玲司が口を開いた。「どこに泊まっている？送って行く」まるで昔の友人との会話のように、丁寧に挨拶を交わした。小林墨はようやく声を取り戻した。「大丈夫。自分で帰る」彼女はリンゴを受け取ろうとしたが、男に腕を掴まれた。振り払おうとしたが、男女の力の差は歴然としていた。本気で掴まれたら、逃げられるはずがない。蚊の鳴くような声で、もう一度言った。「自分で帰る」夜風が強く吹いていた。佐藤玲司は白い小さな顔をじっと見つめ、突然尋ねた。「あの子供は

きっといつか佐藤玲司は飽きる、小林墨はそう思っていた。何も言わないけれど、彼の様子や好みから、この1年間、好き勝手に遊んでいたんだろう、と察しがついた。小林墨はゴールドカードを握りしめながら、小声で言った。「住むところはある。来るときは連絡して、先に来て待ってる」佐藤玲司は異議を唱えなかった。彼女がどこに暮らしているかなど、彼にはどうでもよかった。ただ、彼女への憎しみをぶちまけたいだけだった。肉体的な関係だけでは足りない。彼女をどん底に突き落とし、愛する人に裏切られる苦しみを味わわせてやりたかったのだ。数回遊んだくらいでは、生ぬるい。佐藤玲司は夜中に出て行った。......しばらくして、小林墨は疲れ切った体を引きずり、シャワーを浴びに行った。ここは何も変わっていなかった。バスローブの位置さえ、昔のままだった。バスローブを羽織り、鏡に映る自分を見た。青白い顔に、女らしい艶やかさが少し混じっている。体中に点々と残る跡は、男の激しい情熱の証だった。本当は、自分に嘘はつけない。無理強いされているだけでなく、佐藤玲司と一緒にいる感覚に溺れていた。苦しいけれど、生きている実感が湧く。かつての愛情が確かに存在したことを、思い出させてくれる......彼が飽きたら、芽依を連れて出て行こう、そう思っていた。しかし、女の浅はかな考えなど、男には敵わない。それから1ヶ月ほどの間、佐藤玲司は週に1、2回、彼女を訪ねてきた。もちろん、毎回乱暴で、ほとんど何も話さない......用が済むとタバコを2本吸って、出て行く。小林墨は毎回、されるがままだった。彼が時間を指定すると、彼女はいつも先に来て待っていた。彼が来ると、スリッパを出し、滋養のある料理を作る。彼が食べなくても、彼女は怒らない......時折、わざと女の香水の匂いを付けてきて、ゆっくりと彼女を抱き、反応を窺うこともあった。彼女は目に涙を浮かべつつ、唇を噛み締めて黙っていた。それで彼は、彼女が怒っていることを知るのだ。そして、彼の所有欲はさらに激しくなる......その後、彼は少し優しくなった。カードを投げつけることもなくなり、以前のように生活費だと言って、彼女を呼ぶ回数も増えた。週に3、4晩は一緒に過ごした。時々、彼女にちょっとしたプレゼントを

水谷苑は桐島霞を買い物やお茶に誘ったが、霞は急に人に呼び止められて行けなくなった。水谷苑は微笑んだ。彼女は一人で街をぶらぶら歩き始めた。特に目的地はなく、夕方になったら会社へ夫を迎えに行き、二人で行きつけのレストランで食事をして帰るつもりだった。穏やかな日々だ。お金には困っていないし、子供たちは高橋と家政婦が見てくれている。そして、たまには夫と二人きりで過ごす時間も大切にしている。もちろん、食事の後で九条時也にホテルに誘われても、絶対に行かないと決めていた。あれこれ考えながら街を歩いていた彼女は、まさか小林墨に会うことになるとは夢にも思わなかった。ベビー用品店で、小林墨は子供服を選んでいた。彼女の目元が生き生きしていて、白い肌も血色がよく、どうやら幸せに暮らしているようだった。水谷苑を見ると、小林墨は少し慌てた様子で言った。「水谷さん」水谷苑は彼女を責めることなく、安心させるような目で見つめた。小林墨が持っている子供服を手に取り、優しく言った。「もうこんなに大きくなったですね」小林墨はすぐに説明した。「子供がC市でずっと病気がちで、それでB市に来たんです......都会の小児科はお医者さんが優秀で、一ヶ月で完治しました」水谷苑は子供に会いたいと言った。小林墨は水谷苑に感謝しており、まったく警戒していなかったのであっさり応じた。小林墨は生活に困ってはおらず、B市で3LDKのマンションを借り、C市から家政婦を連れてきて子供の世話をさせているため、普段は佐藤玲司と会う時間もあった。水谷苑もそれは悪くないと思った。特に、芽依って子は、小さくて可愛らしい。水谷苑はとても気に入った。急な出会いだったのでプレゼントを用意していなかった水谷苑は、腕にしていたブレスレットを外し、芽依に贈った。小林墨は質素な家の出だったが、そのブレスレットが高価なものであることはすぐに分かった。彼女は受け取ることができなかった。水谷苑は子供を抱きながら、微笑んで言った。「考えてみれば、血縁上では私は芽依ちゃんの『おばあちゃん』になるんですね！さあ、遠慮なく受け取ってください。大きくなって結婚する時には、私からもお祝いをしますよ」小林墨は恐縮して、不安そうに言った。「水谷さん」水谷苑は家政婦を避けて、小林墨に言った。

夜、小林墨は佐藤玲司に電話をかけた。佐藤玲司は電話に出た。少しの沈黙の後、小林墨は低い声で言った。「玲司さん、私、もう別れたいの。過去のことは私が悪かった。でも、自分のやり方で償うつもり......」「償う......」佐藤玲司は少しお酒を飲んでいた。ソファに寄りかかり、小さく笑い、優しい言葉を囁いた。「どうしたんだ？またそんなこと言って。拗ねてるのか？墨、俺が望む償いは、お前が俺のそばにいてくれること......いつでもお前の顔が見られることだ」......小林墨は布団に顔を埋め、声を押し殺して泣いた。「玲司さん」佐藤玲司は再び優しく彼女を宥めた。小林墨は、彼と完全に縁を切ろうと決心していたが、今は少し気持ちが揺らいだ。佐藤玲司はビジネスの世界で長く生きてきたため、人の心を見抜く術を知っていた。彼女の揺らぎを見逃さず、さらに甘い言葉を重ね、クリスマスイブを一緒に過ごすよう誘った。「付き合ってずいぶん経つのに、まだ人前で堂々と食事をしたことがないよな。墨、何かあればクリスマスイブに話そう......いいか？ここのところ、本当に仕事の付き合いで忙しいんだ」......小林墨は彼を深く愛していたため、どんなに辛いことがあっても我慢し、相沢静子のことは一言も口にしなかった。声を詰まらせながら、彼女は言った。「玲司さん、本当にあなたとの関係が公になるなんて、考えたこともなかった」もともと、ただの取引だった。彼女は身分や彼の心の中での自分の立場など気にしていなかった。しかし、一度恋に落ちた女は、もっと多くのものを求めずにはいられなくなる。彼が本当に自分を愛しているのか、ずっと一緒にいられるのかそんなことを気にし始めたのだ。だが、それも結局は、片思いゆえに自分が抱いただけの想いに過ぎなかった。男はずっと冷静だった。冷静に彼女が一人で溺れていくのを見ていた。......佐藤玲司は電話を切った。ソファに背をもたれかけ、スマホをいじりながら、鼻で笑った。佐藤美月がお茶を持ってきた。電話しているところをちょうど聞いてしまった。佐藤美月は小林墨に会ったことがあった。水商売の女の薄情さを憎んでいたが、それ以上に息子が憎しみに囚われることを望んでいなかった......佐藤家の憎