佐藤玲司は夜通し車を走らせ、C市へ向かった。深夜、粉雪が舞い散る中、小林墨の「私はあなたが好きなのよ」という言葉が、頭の中離れることはなかった。外はすでに白い雪が積もっていた。真冬の深夜を走る車内で暖房もつけず、シャツ一枚の佐藤玲司の体は凍えきっていた。しかし、心の中はまるで燃え上がる炎のようだった。小林墨に対する自分の気持ちが、分からない。今まで、じっくり考えたこともなかった。いつも、彼が愛し憎んできたのは別の人だった。しかし今、「私はあなたが好きなのよ」という言葉が耳元で鳴り響き、消えない......5時間後、佐藤玲司の車は小さな洋館の前に止った。洋館の玄関前は、うっすらと雪が積もっていた。C市にも雪が降っていた。世界中が雪に覆われているようだった。そして佐藤玲司の心にも。彼は鍵を取り出し、門を開け、ゆっくりと小林墨が住んでいたこの世界へと足を踏み入れた......庭いっぱいの椿が、炎のように真っ赤に咲いている。軒下には淡いピンク色のガラスのランプがたくさん吊り下げられていた。かつての佐藤家の豪華なものとは違うけれど、一つ一つが可愛らしく、風が吹くと澄んだ音色が響く。佐藤玲司は軒下に立ち、静かにガラスのランプを見上げると、いつの間にか涙が頬を伝っていた――なんて馬鹿な女だ。彼女にガラスのランプのことを口にしたとき、彼の心では別の女を想っていた。だが、この愚かな女はそれを真に受け、彼の好みだと思い込んだのだ。そして、いつかは彼との暮らしを思い描いて、ここを飾り上げていたのだ。しかし、彼女は自分があれだけ愛した男から命を狙われていたとは。鍵を差し込み玄関のドアを開けた。佐藤玲司がそっとドアを開けると、ひと月以上誰も住んでいない家の、湿っぽい冬の夜に埃っぽい空気が漂っていた。中は、彼女に話した通りに、見慣れた様子だった。金色の縁取りがかかった焦げ茶色の家具。松の木の棚の上には、平たい丸いガラスの水槽が置かれ、二匹の赤い金魚が泳いでいる。一ヶ月以上水換えをしていなくても、元気に泳ぎ回っていた。隣の小さなプレートには、短い言葉が書かれていた。【佐藤玲司と小林墨、いつまでも】佐藤玲司と小林墨、いつまでも。佐藤玲司と小林墨、いつまでも。佐藤玲司は顔を上げ、胸の苦しみを抑えながら
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