陣内皐月はすべてを忘れ、藤堂群がもたらす快感の波にただ身を委ねていた。空から、雨が降り始めた。藤堂群は彼女を車に乗せた。曇った窓ガラス越しに、男女の顔がぼんやりと映る。指輪が、陣内皐月の華奢な首元で揺れていた............高級会員制レストランの個室。高田浩は泣きそうな顔で、九条津帆の腕にしがみついた。「津帆さん、お願い、群さんに言って、俺はわざとじゃないんだ!陣内社長に楯突くなんて、そんな度胸は俺にはないよ。俺は群さんのためにやったんだ!」九条津帆は彼を突き放し、冷たく笑った。「今日、ここで始末されなかったことを幸運に思うんだな。会社に戻って、自分のしでかした事の尻拭いでもきっちりやっておけ。言っておくが、群の機嫌を損ねたら、いとこの俺でさえ痛い目を見るんだ。ましてやお前にとってはなおさらだぞ!浩、俺はお前を助けられないし、助けたくない。忘れたのか?皐月さんは俺の義理の姉なんだぞ。群と一緒にお前を潰さなかっただけでも、運がいいと思え。さっさと消えろ」......高田浩が去った後、個室は静まり返っていた。皆、高田浩のこの先がどうなるか分かっていた。この業界では生きていけない。顔見知りの仕事は全てなくなるだろう。これからは外の世界で泥水をすすって生きていくしかない。血を吐くほど酒を飲んで接待したところで、二度と今の華やかな地位には戻れないのだ。周囲の人々はため息をついた。九条家と藤堂家が手を組んだら、誰が逆らえるだろうか?陣内皐月くらいだ。陣内皐月の妹は九条津帆に嫁ぎ、そして陣内皐月は藤堂家の大切な跡取り子を産んだ。B市では知らぬ者はいない存在だ。高田浩はそんな彼女のプライベートをネタにしたのだから、命知らずもいいところだ。皆が噂をしていると、九条羽が先に席を立った。九条羽は九条家の次男だ。彼はまだ九条グループを継いでいないが、九条時也は息子をないがしろにすることはなく、それなりの支援をしている。そのため九条羽は若くしてIT企業を経営し、従業員数は2000人にものぼる。最近は、成田栄治と買収の話を進めている。成田栄治は再婚し、海外で暮らす予定だ。九条羽は藤堂言の従弟にあたる。成田栄治は藤堂言への貸しとみなして、相場の8割で事業を譲渡する意向を示していた。その心遣いを察した九条羽
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