30分ほど経った頃、寝室のドアが再び開いた。入ってきた水谷苑は、深刻な顔をしていた。九条時也は両手を頭の後ろに組んで言った。「どうしたんだ?」水谷苑はベッドの脇に座ると、九条時也の顔を見つめた。そしてしばらくして、口を開いた。「小林さんが妊娠したの。玲司の子よ」九条時也は舌で歯の裏側を押し付けながら、鼻で笑った。「まさか、あいつらが本当に仲良くなるなんてな」水谷苑は心配そうな顔で言った。「子供に何かする気じゃないよね?」九条時也は思わず笑ってしまった。彼は水谷苑の頬をつねりながら、優しく言った。「まさか。俺の子でもないのに、中絶させる理由なんてないだろう?それに潤さんも彼女を許したんだ」彼は少し考えてから言った。「明日の朝、太田さんに彼女を海外に行かせるよう手配する。大事になる前にね」水谷苑はじっと彼を見つめていた。タイミングは悪かったが、九条時也は含み笑いしながら尋ねた。「欲しい、かな?」珍しく、水谷苑は彼を罵らなかった。それどころか、優しく彼の顔を撫でながら、低い声で頼み込んだ。「小林さんは玲司に会いたがっているの。時也、あなたならできるでしょ?」九条時也の黒い瞳は、深い闇をたたえていた。しばらくして、彼は嗄れ声で言った。「相変わらず優しいな、お前は。だが、頼み事をするなら、それ相応の態度ってもんがあるだろう?苑、誠意を見せてみろ」普段はいつも彼が誘っていた。水谷苑は身を委ねるだけだった。しかし今は、彼が誠意を求めている。彼女は恥ずかしさでいっぱいだったが、彼を抱き寄せた。彼はまだ服を着替えておらず、白いシャツが無数の皺だらけになった。だが、それがかえって男の色気を増していた。九条時也は酔いが回っていたため、その気はなかった。彼は彼女の唇に触れながら、からかうように言った。「肉食系女子になったな。男のズボンを脱がそうとするなんて」水谷苑は何も言えなかった。しかし、彼が承諾してくれたことは分かっていた。......翌朝、水谷苑は小林墨を太田秘書に託した。寝室に戻ると、柔らかな日差しが差し込んでいた。昨夜酔っていた男は、朝早くから上半身裸でベッドのヘッドボードに寄りかかり、隣を軽く叩きながら言った。「苑、選択肢は二つだ。俺と復縁するか、子供を作るか......」水谷苑はド
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