都内湾岸地域。 夜中の都内湾岸地域。 海岸沿いの道をクーカは一人歩いていた。鹿目の工場に向かっているところだ。 本当はヨハンセンに送って行って貰おうとしていたのだが、生憎とクーカの脱出経路の準備に忙殺しているらしかった。 そこでクーカはテクテク歩いて向かう羽目に成ったのだ。 普通、夜中に女の子が歩いていると、厄介な連中に絡まれてしまうのを心配するものだ。だが、工場地帯の真ん中では車すら滅多に通らず心配は無用なようだ。 もっとも、何も知らずにクーカを襲うと後悔するのは犯人の方であろう。 すると、そこに一台の車が接近して来た。車はクーカを追い抜く事も無く並走するような感じで速度を緩めた。「……」 クーカが車内を見ると先島がハンドルの上で両手を広げていた。敵意は無いと言いたいのだろう。「……」 クーカは静かにため息を付いて助手席に乗り込んだ。どうせ無視してもしつこく付いて来るのは分かっていたからだ。 先島はのほほんとしてる風を装うが、事態の推移を自分の望む方に誘導しようとする。中々厄介な奴だとクーカは考えていた。「やあ、お嬢さん。 偶然だねぇ…… どちらまで?」 先島がニコヤカに聞いて来る。(笑顔が張り付いている……) そうクーカは思った。愛想笑いが苦手なのだなとも思っていた。「同じ処よ……」 クーカはシートベルトを体に付けながら答えた。(分かってる癖に……) 先島が工場の存在を海老沢から聞き出したとヨハンセンから予め電話で知らされている。つまり、クーカが先島に近づいた目的も感ずいているに違いなかった。 クーカは研究所にあると思われる両親の臓器を探したかったのだ。「ははは。 じゃあ、一つだけ…… 相手をなるべく殺さないようにね?」 先島はクーカの方を見ずに言ってきた。「…… 努力はするわ ……」 クーカが仕方なく返事をした。敵を殺さないで無力化するには結構手こずるものだ。 体力勝負になると自分自身が危なくなってしまう。 返事とは裏腹に手加減はするつもりは最初から無かった。「後処理が面倒なんだよ……」 先島が車を運転したままに続けた。車は一路工場へと向かっている。 その言い分にクーカはキョトンとしてしまった。「そっち?」 てっきり人を殺める方を咎めているのかと思っていたからだ。 クーカを車に乗せた先島は鹿
Last Updated : 2025-04-20 Read more