「確かに私と皇羽さんは将来結婚する約束をしました。指輪も交換しています……だけど結婚するタイミングも発表も、今ではないと思うんです。日本だけでなく世界中から注目を浴びているIgn:sの一人から既婚者が出るなんて、ファンの方々への裏切りです」「……それで、いいの?」 かげろうさんが、ゆっくり尋ねる。玲央さんと似た、心配してくれている顔だ。あまり口数は多くないけど、こういった何気ない所作からでも優しい人だと分かる。 そして、それはかげろうさんだけじゃない。メンバー全員が、皇羽さんと玲央さんを見守ってきた優しい人たちだ。玲央さんを支えようと一致団結してくれていたのも、記憶に新しい。 (そんな優しい人たちが集まるIgn:sだからこそ、迷惑はかけたくない) 迷惑――自分で言った時に、ツキンと胸の奥が痛む。私と皇羽さんは好き合っているから一緒にいて、二人で過ごす時間を幸せだと思っているけれど……私たち以外の人からすれば、迷惑以外のなにものでもないんだ。 唇に力を入れないと、口が情けない「への字」になっちゃう。まさか私と皇羽さんの恋が、これほど前途多難だったなんて……。 だけど、ここで諦めない。モデルデビューする前、私はもう二度と「皇羽さんを自分から諦めない」と決めた。だから今だって繋いでみせる。私と皇羽さん、二人の気持ちを未来へ繋げていく。 切り開くんだ。みんなが認めてくれる、私たちが寄り沿う未来を。 例え結婚が今じゃなくても、どれほど時間がかかっても―― 「そもそも結婚を発表するのであれば、私がモデルとしてデビューする際に〝皇羽さんと恋仲である〟と明言しておくべきだったのです。そこでたたかれてデビューできなければ、それまでの私だったということ。 だけど当時の私は、デビューすることが大事だと思っていたので……皇羽さんとの関係を明かす、なんて微塵も思っ
Last Updated : 2025-10-10 Read more