Semua Bab アイドルの秘密は溺愛のあとで: Bab 71 - Bab 80

103 Bab

第71話

「昔から”どうせ俺なんて頑張ったところで無意味”って、変な諦め癖がついててさ。高校もそう。どうせ皆と一緒には出来ないだろと思って、端からヤル気がなくて受験しなかった。 Ign:s に入って忙しくしてるから、まぁ結果オーライなんだけどさ」「そうだったんですか」「でも萌々ちゃんから叱られて、自分が恥ずかしくなった。最初から諦めるんじゃなくて、限界まで頑張りたいって。レオの名にふさわしい俺でありたいって。久々にやる気が起きたよ」 ここで初めて、玲央さんは私を見る。 照れくさそうに眉を下げながら。「だけど今日レオになれなかった。理由は色々あるんだけど……すごく自分が情けなくなったよ」「理由?」 聞き返した私に、玲央さんは何も言わなかった。ふっと、憂いのある笑みを浮かべるだけ。「このままじゃ、あの日萌々ちゃんに言われたみたいに……いつか皇羽が、本当にレオになる日が来るかもね」「……」 確かにあの時、私は言った。――サボってばかりいると、本当に皇羽さんにレオを取られちゃいますよ? だけど今の玲央さんを見て、あの日と同じ気持ちにはならなかった。 だって玲央さんの目の輝きが、あの日とは違うんだもん。自分と戦っているって分かる。本気でレオと向き合っているって分かる。玲央さんの頑張りが、全身から伝わって来ている。「玲央さんは頑張っていますよ」「俺が、頑張っている……?」 玲央さんはキョトンとした。次に苦笑を浮かべて「気を遣ってくれなくていいよ」と言う。 だけど玲央さん、私は本音を言っているだけです。「私は、皇羽さんが Ign:s のためにどれほど努力しているか知っています。全てはあなたのピンチヒッターを的確にこなすため。最初は〝皇羽さんすごい〟と思っていました。だけど……その皇羽さんと肩を並べる玲央さんもすごいんだって。最近やっとわかったんです」「! 俺がすごいって、何かの間違えじゃ……」「いいえ、すごいです」 きっぱりと言った私に、思わず玲央さんは固まる。その一瞬の隙を見逃さず、畳みかけるよう続きを話した。 玲央さんに自信を持ってほしい――そんな祈りを込めながら。「スタッフの名前を丸暗記する、ファンの子の特徴を覚える――玲央さんが始めた努力だろうが、皇羽さんが始めた努力だろうが、結果的にお二人はその努力を分かち合い共有している。そして1
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-20
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第72話

 まさか玲央さんが私を好きだなんて……。 そもそも本気なのかな? いつもの冗談?「今のは空耳ですか?」 とぼけるでもなく、本心で尋ねる。だって、いつもニコニコとアイドルスマイルを浮かべている玲央さんが、まさか私の事を好きになるなんて。そんなの嘘に決まっているよ。 自分の中で「なーんだ冗談か」とホッとしたのもつかの間。 玲央さんの口から「本当だよ」と、優しい声が漏れる。「覚えておいて。萌々ちゃんを好きなのは皇羽だけじゃないって事」「え……」 どうして皇羽さんが私を好きって知っているの? まさか皇羽さん、みんなに公言しているのかな?「私のことが好き」って。もしそうなら恥ずかしい! 体中の汗がブワッと噴き出た感覚を覚える。そんな私を見て、玲央さんは面白そうに笑った。「皇羽からは何も聞いていないよ。でも分かる。皇羽は萌々ちゃんの事が好きだって」「どうして分かるんですか?」「ふふ、秘密。というわけでさ、萌々ちゃんに好きになってもらえるよう俺も頑張るよ。もっとたくさんの人に認めてもらう。俺がレオだって事実をね」「もう充分みんなに認められているのに?」 すると玲央さんの目つきが変わった。 次に「いや」、重たく口を開く。「まだだ……俺なんて、まだまだなんだよ」「玲央さん?」 何やら空気が重たくなった。まさか玲央さん、何かに悩んでいる? だけど話してくれそうにない。いつものアイドルスマイルで、この場の空気をすぐに払拭した。「さ、一日は長いよ。まだまだ遊べるから、はっちゃけちゃお! 萌々ちゃんはゲームをしたことある?」「ないです」「じゃあ手取り足取り教えるから、一緒にやろうよ。俺も久しぶりだから、楽しみだなぁ~」 こんな調子で、一日を通して玲央さんと一緒に遊んだ。私は初めてゲームを触り、その面白さから没頭。あっという間に時間が過ぎて、気づけば夜。「じゃあ萌々ちゃん、戸締りしっかりね。もう皇羽も帰って来ると思うから」「はい。今日はありがとうございました。すごく楽しかったです」「俺も!」 そうして玲央さんが扉を出た瞬間、皇羽さんから「あと10分で家に着く」とメールが入る。ウキウキと、ソファに座って待っていたのだけど……今日はっちゃけすぎたせいで睡魔が襲ってきた。「ダメダメ、皇羽さんが帰って来るまで、待つ……んだから……」 そうは思
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-21
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第73話

「は~一曲目終了。いつ天国に行ってもいいくらい満足した……」 「早! ちょっとクウちゃん、まだ始まったばかりだよ! あ、今の内にお手洗い行って来る」 「早! それこそ始まったばかりだよ⁉ 次の曲までに遅れないようさっさと行ってきな!」  クウちゃんに「爆速で!」と言われて、急いでホールを後にする。そして張り出してあるマップを見ながらトイレに…… と思っていたのに、 「あれ、ここどこ?」  いつの間にか、全く知らないところへ来ていた。一つの扉を抜けた後「変だな」と思っていたけど、ここにきてやっと会場の雰囲気が違うことに気付く。スタッフらしき人が、皆バタバタと動いていた。 もしかしてここ…… 関係者以外、立ち入り禁止の区域⁉  そこへスタッフの一人が「おいレオさんはどこ行った⁉」と叫んでいる。こんな話を、客がいる前でするはずがない。やっぱりここは入っちゃいけないところなんだ。「見つからない内に、クウちゃんの所へ戻らないと!」 だけどコツコツと足音が聞こえる。長い廊下の先から、誰かがこちらに来ているらしい。見つからないよう、急いで近くの部屋へ入る。 バタン ここは衣装部屋なのか、たくさんの衣装が掛けられていた。衣装だけじゃなく靴もウィッグも、小道具まで、何もかもが揃っている。これだけ物があれば、廊下にいる人が少なくなるまで、身を隠せるかも!  電気をつけないまま、衣装の間へ隠れる。その瞬間、ガチャリと誰かが入ってきた。 「……っ」  誰だろう、いや誰でもいいや。とにかく早く出て行ってくれますように……! 息をひそめて身構える。だけど部屋は真っ暗なまま。一向に電気がつかない。なんで電気をつけないんだろう? いや、つけてくれない方が助かるけど……。 不思議に思って衣装の間から顔をのぞかせた、その時だった。 「……ッ、ゴホ! ゲホ、ゲホ!! ゴホ……っ!!」 「!」  この咳、どこかで聞いた事ある。 そう、夜道で怖い思いをした日だ。 『ゴホ!ゲホ、ゲホ……!!』 『玲央さん! 大丈夫ですか⁉』  あの日、玲央さんがしていた咳と同じだ! 衣装の隙間から、咳がした方を見る。その人は部屋の真ん中に置かれている椅子に、首を垂れて座っていた。荒い呼吸を繰り返しながら、震える手で「何か」をカチャカチャと動かしている。 だけど…… 「ゴ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-22
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第74話

「もう休め、交代だ、玲央」「ッ!!」 そう言われた時の玲央さんの表情は凍り付いていて、瞳は色を失っていた。まるで時間が止まったように咳込みもせず、この場に沈黙だけが流れる。 だけど皇羽さんが部屋を去った後。私にまで伝わってきそうな怒気が玲央さんから溢れていた。「く、そ……クソ、くそ……っ!!」 持っていたスプレーを、力強く床へ叩きつける。衝撃が加わったスプレーは音もなく止まった。 再び静寂が訪れた部屋で、煙さえ出なくなったスプレーを見て。一瞬だけ我に返った玲央さんは、座ったままダランと首を垂れる。「知ってたよ、こうなるって分かっていたよ……っ。ゴホッ……。 トップバッターは皇羽がやればいいって、皆はそう言ったけど……。 でも、それじゃぁ…… 俺がピンチヒッターみたいだろ……。 俺じゃなくて、皇羽のレオになるだろ……!!」「ッ!!」 この時。私は初めて、玲央さんの本当の姿を知る。――いつか皇羽さんにとられますよ? あんな言葉、言うんじゃなかった。だって玲央さんは、誰よりもそのことを危惧していたのに。自分が一番よく分かっていたのに。「ゴホ……ゲホッ!ゲホ……っ!!」 あぁ私、最低だ……っ。 ごめん、ごめんなさい玲央さん……っ。 言ってはいけない事を言った。 私が言った事は、最低な言葉だ。「ゴホ……っ、何で俺じゃないんだよ……。いつも交代交代って言いやがって……。 頼むから…… 俺を、諦めさせないで……っ」「……っ」 胸が締め付けられると同時に、頭では玲央さんと自己紹介した時のことを思い出していた。――俺の調子が悪いときや気分がノらない時……おっと。気分が悪い時は、皇羽にレオ役をしてもらっている 聞いた時は「ちゃらんぽらんだ」と思ったけど、今なら分かる。あれはウソだ。 本当は、こうやって玲央さんが動けなくなった時。皇羽さんから「交代」と言われ、強制的に〝レオ〟を休まされる。 玲央さんの意志とは関係なしに。 全ては、自分の体が弱いせいで――「逃げ癖がついていたんじゃない。玲央さんは、レオから離れざるを得なかったんだ」 玲央さんの周りが、レオを続けさせなかった。玲央さんの体の事があるから。玲央さんに無理はさせられないから。それは全て、彼を心配しているからこそ。 その配慮は間違っていない。だって目の前にいる玲央
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-23
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第75話

 コンサートが終わった翌日。皇羽さんに詰め寄ると、渋々ながらも話してくれた。 小児喘息を患って以降。大人になった今も、玲央さんが発作に苦しんでいることを――◇「萌々、学校に行くぞ」「……」 玲央さんの事を知った日から。 私は自分が許せなくて、何もする気が起こらなくなっていた。 玲央さんに言ったひどい言葉と、玲央さんが見せた涙。その両方が、常に頭に浮かんでいる。あの日の玲央さんを見た日から――「おい萌々」「……」「はー。全く」 そんな私に、皇羽さんはいつも通りの態度で接する。「萌々、何度も言うがお前は悪くない。どんな奴にも玲央の事は〝極秘〟なんだよ。事情を知らなかったお前がどうこう言った言葉を、玲央だって本気で捉えちゃいない」「……うん」 それは分かっている。 だけど私は、やっぱり自分が許せなくて……。「玲央さんに謝りたい、です……っ」「萌々……」 あの日から、私は玲央さんに会えていない。 何度も「会いたい」と言ったけど、玲央さんが拒否をしているようで……。どうやら拒絶されたみたいだ。 きっと、あのコンサートの日。衣装部屋にいたのが私だってバレているんだと思う。いくらウィッグとマスクをしたところで、声は丸々私だったし。 だから……なのかな。 勝手に事情を知った私を、玲央さんは怒っているのかもしれない。 当たり前か。関係者以外立ち入り禁止の場所へ、勝手に入っちゃったんだもん。 だからこそ謝りたい。不法侵入したことも、秘密を知ったことも、私の言葉で傷つけてしまったことも、全て。「……っ、ぐす」「……」 学校へいくため、半泣きでカバンの中身を整理する私を見て。皇羽さんは短く息を吐く。 その後、自室へ向かい「はい」と。皇羽さんから、とある物を渡された。 それは黒こげになった四角い箱。「これ……」「開けてみろ。触ったら手は黒くなるが、洗ったら落ちる」「……はい」 不思議に思いながら、黒い箱を触る。ギュッと握ったら、黒い破片がポロポロと落ちた。まるで炭化しているみたいな……「え、炭?」「炭」という単語に、頭が勝手に反応した。次に真っ赤に燃えた私のアパートを連想する。 「もしかして……」 一枚のティッシュを机へひき、その上に黒い箱を置く。壊さないように、ゆっくりと丁寧に蓋を開けた。中に入っていたのは――「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-24
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第76話

 ……その通り。私は分かってる。 ウジウジしたって、玲央さんは喜ばないって。何の役にも立たないって。 全部ぜんぶ、分かっている。「玲央は、なにも大病を患っているわけじゃない。薬もある。発作が出ても、携帯している吸入器で対処できている。大人になって喘息が完治する人もいる。だから悲観するな」「分かっています。だけど何だか、体が動かなくて……」 体にブレーキがかかって、前みたいに歩けない。どうやって前に進んでいたかな?と、そんな事を思ってしまう。玲央さんの気持ちを思うと、辛くて悲しくて……。 すると皇羽さんが「ん」と。五百円玉を握り締める私の手の上から、自身の大きな手を重ねる。温かい温度が、強張った体に優しく浸透していった。「今お前が思っていることは、俺も思っている。ついでに Ign:s 全員も思っている。 何とかしてやりたい、玲央をレオとして活躍させてやりたいって。皆そう思っているんだ」「そうなんですか……? てっきり私は、玲央さんが一人ぼっちで悩んでいるのかと」「萌々も見ただろ? バイト先で撮影している時の、アイツらの雰囲気。ギスギスしているように見えたか?」「!」 喫茶店に Ign:s が撮影に来たあの日。確かに私は、彼らの絆を目にしたような。そんな気分になった。――皆さん、本当はすっごく仲良しですね? 冗談を言い合ったり、時にはケンカし合ったり。だけど芯では互いを信用していて、見えない所で支え合っていたり。彼らには確かに絆があると、そう思った。 メンバーの皆も「レオはスゴイ」と言っていた。どっちのレオか分からなかったけど、今なら分かる。発作を繰り返しながらもレオを諦めない、玲央さんのことだ。 皆、玲央さんを含めて【 Ign:s 】だって、そう思っているんだ。「 Ign:s が仲が良いってのは、その通りだよ。だから信用してやれ、メンバーの事を。玲央がレオでいられる方法を、アイツらだってずっと探しているんだ」「良かった、玲央さんを見捨てたわけじゃなかったんですね」 すると皇羽さんは目を開いて「ぶは!」と吹き出した。「見捨てる? そんなことしない。ってか出来ない。もし強制的に脱退なんてさせてみろ。俺らがファンから殺される。知ってるだろ? レオは Ign:s で一番人気なんだ。その人気者を引きずり降ろそうなんて、例え Ign:s
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-26
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第77話

 ◇「萌々ー、今日はバイトがないんだよね? それならどこか寄らない?お腹空いた〜!」「行くっ。楽しみだね、クウちゃん」 あれから……家から皇羽さんがいなくなってから、一週間が経った。 学校にも来られなくなった皇羽さんの机は、いつもポッカリと空いている。さすがに寂しい。無人の席を見ては、何度もため息が出てしまうくらいには。 この前まで一緒に登校したり、この教室で授業を受けていたのに。今じゃ、会いたくても会えない人だ。「あった、ココだよ。レオのお兄さんの席」 休み時間に、何人かの先輩が皇羽さんの席を囲む。持っているのはペン。彼女たちは目くばせをして、皇羽さんの机に何やら書き始めた。 実は、この光景を見るのは初めてではない。ニュースで皇羽さんの存在が明るみになった日から、もう何度となく彼の机はあぁやって囲まれている。 きっと Ign:s のファンなのだろうけど……ファンが何を書いたのか、怖くて見られない。 だって、もし罵倒だったら? あれほど皇羽さんと玲央さんが頑張っているのに、それを否定するようなことが書かれていたら? ファンの子の気持ちも分かる。今まで騙されていて悲しかったよね。だけど玲央さんのことを思うと、どうしても「二人をレオとして認めてほしい」と思っちゃう。……私のワガママでしかないけど。 そして〝皇羽さんと親戚〟ということになっている私は、ニュースがあってしばらくは学校で質問攻めだった。だけど知らぬ存ぜぬを通し続けていると、一週間後には誰からも聞かれなくなった。やっと落ち着いたみたい。 だけど、久しぶりに学校でゆっくり出来るようになって気づいたことがある。レオ大ファンのクウちゃんが、一度も私に「どういうこと?」って尋ねてきていないのだ。 詳細を、私から言った方がいいかな? だけど言ったら最後、玲央さんの病気のことも話さないといけないよね。個人情報だし、皇羽さんが「極秘」と言っていたし……勝手に話すのはよくないよね。 大親友のクウちゃんに言いたい。だけど事情があって言えない。もどかしいを通り越して、申し訳ないよ。私は〝クウちゃんの親友〟失格じゃないかな?「萌々~、大丈夫? 最近やつれてきてない?」「え……」 学校からの帰り道。クレープを食べながら、私たちは公園のベンチに座っていた。私はイチゴ味。クウちゃんはチョコ味。外は寒
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-27
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第78話

◇ どうぞ――とココアを出した私に、玲央さんは間髪入れずにこんなことを言った。「皇羽が Ign:s のメンバーとして正式にデビューする」「……え」 それは思っても見なかった話で、一気に頭が真っ白になる。 皇羽さんがデビュー? アイドルになるってこと? 何それ、まさかの冗談じゃ――と僅かな望みをかけて口を開きかけた私に、玲央さんは淡々と告げた。「会社からの通達だ。誰も覆せない。ただ唯一、皇羽だけが渋っている。マネージャーとメンバーが、いま必死に宥めているよ」「……玲央さんはどうなんですか?」「俺?」「嫌じゃないんですか?」 発作も出ず体力が続く限りは歌って踊れる皇羽さん。発作が出そうになったらステージを降りるしかない玲央さん。羨ましい代わってくれと、玲央さんが悲しくなる時間が増えるのではないか? そんなことを思った。「俺は……」 私の問いに、玲央さんは閉口する。無言でマグカップを手に取り、ふーと水面を僅かに波立たせた。次にコクリと静かに喉仏が上下する。 とんでもなく綺麗な所作だ。まるでどこかの王子様みたい。 そして、この王子様みたいな顔を、皇羽さんも持っている。歌も歌える、ダンスも踊れる。ルックスも申し分ないほど完璧―― アイドルになりうる条件をすべて満たした、完璧な人。 それが皇羽さんなんだ。 むしろ、アイドルにならない理由がない。アイドルになるべくして生まれた人なのでは?と、そんなことさえ思う。 だけど、拍手喝さいというわけにはいかない。玲央さんの気持ちだって大事にしたい。 玲央さん、あなたは〝アイドルになる皇羽さんのこと〟をどう思っているの?  すると玲央さんがカップを置く。 そして思ったよりも明るい口調でこう言った。「俺は大歓迎だよ。これでやっと正式に戦うことができるからね」「戦う? 誰と?」「もちろん皇羽とだよ」 訳が分からなくて、首を傾げる。 すると玲央さんは「俺はね」と笑いながら話した。「そろそろハッキリさせたかったんだ。俺と皇羽、どっちが本物のアイドルなのかって」「本物って、どういう……」「白黒つけたかった。ただ、それだけだよ」 コクリと、またココアを口に運ぶ。 笑っていた口は、いつの間にか真一文字に閉まっていて。少しずつ、悔しそうな表情へ変わっていく。 そして次の瞬間。 とんでも
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-28
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第79話

 今まで、玲央さんと皇羽さんが二人でレオをしていた。そして人気ナンバーという、ファンの支持を集めていた。 だけど今度から玲央さんはレオ、皇羽さんは名前を変え、二人それぞれ Ign:s のメンバーになる。 つまり―― 「それって、最強ってことじゃないですか?」 「最強……?」 「人気者のレオが二人になるんですよ? 単純に考えて人気も倍です! 相乗効果で Ign:s の知名度もバク上がり! 世の中に Ign:s を知らない人はいなくなりますよ!」  いいことだらけじゃないですか! 自信満々に言う私を、玲央さんは鳩が豆鉄砲を食ったような。そんなポカンとした表情で見た。 「いいことだらけ……?」 「それは〝玲央さんにとっても〟ですよね? 本当の自分をさらけ出しても尚、 Ign:s を続けて居られる。発作が出たら泣きながら隠れなくていい。これからは発作が出ないように、上手く Ign:s をやっていけばいいんですから」「泣きながら隠れるって……! 言い方を考えてほしいなぁ」 「ふふ」  すみません――と謝ると、玲央さんも「ううん俺こそ」と私に謝る。 「今日ここに来たのは、コンサートの日と同じように萌々ちゃんに慰めてほしかったからなのかも。皇羽がデビューすると聞いて……気づいたら、このマンションに来ていた」 「コンサートの日、一応変装したのですが……やっぱり私だってバレていました?」 「そりゃあね」  ははと笑う玲央さん。  その笑顔は、今まで見たことのないような。そんなスッキリとした眩しい顔だ。「萌々ちゃんに出会えて良かった。たくさんの事を、本当にありがとうね」  言い終わると、途端に照れた顔になる玲央さん。ツイと私から視線を逸らし、意味もなくテーブルの端っこを見つめている。 その姿が皇羽さんそのもので、やっぱり双子だなぁとほほ笑まずにはいられない。「いま笑われると、恥ずかしくて帰りたくなるんだけど……」 「だけど、もう帰るつもりですよね? お忙しいことは分かっていますから」 「さすが萌々ちゃんだ」  私の言葉に導かれ、「じゃあそろそろ」と玲央さんは廊下を歩く。 だけど何か言い忘れたらしい。靴を履き終わると、ゆっくりと私へ振り返った。 「最後に、萌々ちゃんへ伝えたい事があるんだ」 「なん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-01
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第80話

「皇羽さん、お話があります」『……』 その声に、皇羽さんは何も言わなかった。 もしかして私が言わんとしていることが伝わっているのかな? 皇羽さんならありえるよ。だって、いつだって私のことを最優先に考えてくれていたもんね。皇羽さんほど私のことを思ってくれる人は、地球上で他にいない。あなただけ。 だけど反対に…… あなたの魅力を知っているのは、私だけじゃない。玲央さんを初め、皇羽さんにデビューしてほしいと願う Ign:s のメンバーは、もうとっくに皇羽さんの魅力を知っている。もちろん Ign:s のファンだって。 だから私が独り占めしちゃダメだ。 あなたは、皆のアイドルになるべき人だから――「皇羽さんと玲央さんが揃ってステージに並んでいる所が見たいです」『え……』「その景色を、私に見せてくれませんか?」 玲央さんが言った言葉が蘇る。「 Ign:s は多忙だよ」って。 そんなこと分かっている。コンサートが近くなったら、皇羽さん全く帰ってこなかったもん。ピンチヒッターじゃなくて本物のアイドルになったら〝今より会えない〟って簡単に想像つく。 だから「アイドルになって」と皇羽さんに言うには勇気がいる。私が「一人になる覚悟を決めないといけない」ってことだから。 だけど言わずにはいられなかった。だって皇羽さんの魅力は本当にすごいから。アイドルになるべくして生まれたような人が、誰にも見られず家にいるだけなんて。そんなのもったいなさすぎるよ。 皇羽さんはスゴイんだぞって、もっと皆に知ってほしい。ピンチヒッターの時ですら、裏で必死に努力をする人だから。本物のアイドルになったら、さらに努力を磨いてどこまでも輝くだろう。 そんな皇羽さんを、私は見たいんだ。 私と言う存在に縛られることなく、自由に羽ばたく皇羽さんを――「あなたはアイドルになるべき人です。 だから…… Ign:s に入ってください」 まるで私の弱さが滲み出て来るように、声が震える。なんとか押さえながら言い切ると、今まで黙っていた皇羽さんが「はぁ」とため息をついた。『……玲央がそっちへ行ったな?』「さ、さすが。頭の回転が速いことで……」 ははは……と乾いた笑いをする私とは反対に、皇羽さんは黙った。 そして真剣な声で、私に確認をとる。『俺が Ign:s に入る。それが何を意味する
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
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