口が乾いたのか、クウちゃんはジュースを含む。 「ファンはね、とりあえず推しが消えずにそこにいてくれたらいいの。 推しを見て一日頑張ろうと思えるファンなんてごまんといるからね。同時に、推しが急に消えたら、発狂するファンもごまんといる」「推しの存在って、かなり重要だね」「そう重要なのよ。キーパーソンなのよ。だから好き勝手に消えられちゃ困るのよ。 むしろ……その道を歩くと決めたのなら、最後まで歩みきってほしい。 申し訳なさそうにしないでほしい。堂々してほしい。もちろん指輪もためらわないでほしい。 本当に既婚者なんだって、そういう現実をファンに見せてほしいな」「そういうものなの?」「じゃあ萌々。もし皇羽さんが他の女性と結婚したとする。 結婚発表があって、その女性が萌々に及び腰で〝すみません、すみません〟って消極的だったらどうする?」「……」 なんで、あの人が皇羽さんのハートを射止めたんだろうって思う。 それほどの魅力が、本当にこの人にあるの?って疑っちゃうかも……。 それに私の皇羽さんを奪ったのであれば、せめて堂々としてほしいと思う。私の方が劣っていたと、完敗だと思わせてほしい。 そうすれば諦めもつくから。二人を、応援できるかもしれないから。 するとクウちゃんが「その通り」と言った。 え、もしかしてさっきの心の声、ぜんぶ声に出ていた? 「知名度とか、注目度とか、好感度とか。そんなの関係ないのよ。皇羽さんの結婚相手として、堂々と振る舞っていればそれでいいんだから」「でも私はしがないモデルで、スーパーアイドルのコウをとった女で……」「じゃあ聞くけど、二人は何か罪を犯したの? 警察の世話になるようなコトをしちゃったの?」「えぇ、まさか!」
最終更新日 : 2025-10-20 続きを読む