All Chapters of アイドルの秘密は溺愛のあとで: Chapter 81 - Chapter 83

83 Chapters

第81話

 皇羽さんが Ign:s に加入して世間は大きく騒いだけど、しばらくすると混乱は落ち着いてきた。 最初は戸惑っていたファンも、今や笑顔で「新体制 Ign:s 」について話している。もう誰も戸惑ったり怒ったりはしていないみたいだ、良かった。 私にも変化があって、そのままの状態で学校に残っている皇羽さんの机を、やっと見てみようと思えた。 もしも悪いことが書かれていたらどうしようかと心配して見る勇気がなかったけど、アイドルの道へ進んだ皇羽さんを見て、私も前進しようと思えた。 皇羽さんは、批判を覚悟でアイドルデビューした。かなりの勇気が必要だったと思う。 今こそファンから受け入れられているけれど、公になっていないだけで、最初は批判もあったはずだ。玲央さんの事情があったとはいえ、ファンや世間を騙していたことには変わりないから。 だけど私と電話で話をした後、勢いよく芸能界へ飛び込んだ皇羽さんを見て。私もウジウジしていちゃダメだと思った。皇羽さんを見習って、前を見なきゃって。「何が書かれているんだろう」 放課後。誰もいない教室で、ドキドキしながら皇羽さんの机へ近寄る。 すると、そこには―― 麗有くんが Ign:s だったら最高! 超イケメンと同じ教室で勉強が出来ていた事実に、KP(乾杯)! ずっと応援してます! 学校で同じ空気を吸えていたという、貴重な時間をありがとう… また学校で会えたら昇天する~っ(涙)「これ……っ」 びっしりと文字が書かれた机を眺める。どこを見ても、皇羽さんへの批判は書かれていなかった。応援メッセージばかり。  それは学校だけでなく、世間も同じ。帰り道にすれ違うファンたちの声に、耳を傾けてみると……「レオの一途に頑張る姿も、それを密かに支えてたコウの努力も……すべてが尊いよ」「ほんと兄弟愛だよね……。美し過ぎ、神」「さっそくコンサート応募したよ!!!」「楽しみ過ぎて不眠だー! 幸せ!」 こんな嬉しい会話が、ファンの間で繰り広げられていた。 「良かった……よかったっ」 安心して、帰り道に涙を流す。 皇羽さん、玲央さん、あなた達の思い、ちゃんと皆に伝わっているよ。今までの頑張り、何一つムダになっていないよ。ちゃんと実っているよ。 だから安心してね。安心して、全力でIgn:s をやってね。私は、いつまでも二人
last updateLast Updated : 2025-06-03
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第82話

「萌々、やっぱりコウのことが好きなんだ!」「え、や、あの……!」 言っていいのかな? いや、もう言っちゃったし! どう返そうか迷っていると、クウちゃんは「よくあることだよ」と、私の背中を優しく叩く。「アイドルとガチ恋って、よくあることだから元気出して! でも辛いよね、しんどいよね。気持ちは分かる、痛い程に分かる!」「が、ガチ恋……?」「アイドルに本気で恋していることだよ」 な、なるほど……。確かに、今の私ってガチ恋だ。といっても、皇羽さんがアイドルになる前から好きなんだけど、この場合もガチ恋なのかな? 何が何だかわからなくなっていると、クウちゃんが自分のボトルの蓋を開けた。ミルクティーの甘い香りが漂って来て、私の鼻孔をくすぐる。「私は、萌々を応援しているからね」「クウちゃん?」「なんか、最近の萌々って〝一人ぼっちで寂しい〟って顔をしているからさ。そういう時こそ、私と一緒にたくさん遊ぼうよ!」 そうだ!と、クウちゃんはスマホを操作する。「コウが入った記念コンサートがあるんだけど、チケットが当たったんだ! 良ければ、また一緒に行こうよ」「え、コンサート?」 クウちゃんのスマホには「当選」の文字が。すごい、倍率が高いのに当たったんだ! このコンサートに行けば皇羽さんに会えるの? やっと、会えるんだ……!「クウちゃん。私、行きたい! 一緒に行ってもいいかな⁉」 大きな声が出た私を笑うことなく、クウちゃんは「もちろん」と笑みを返してくれる。「またうちわで応援しよう。コウが萌々に気付いてくれますようにって。私も、思い切りうちわを振るね!」「クウちゃん……っ」 私のためにそこまでしてくれる、クウちゃんの優しさがありがたい。思わず泣きそうになった私につられたクウちゃんの声が、少しだけ震えていた。「私はね、いつだって萌々の味方だからね? 一人で抱えきれなくなってどうしようもなくなったら、いつでも私に相談しといでよ?」「うん……ありがとうっ」 改めて、彼女の優しさが胸にしみる。いつだって私のことを思ってくれる、優しい親友。「クウちゃんも、何かあったら私に言ってね? クウちゃんと違って全く頼りにならないけど、話ならいくらでも聞けるから。徹夜もできるよ!」「いや、徹夜は私が眠いわ」 あはは!と一笑するも「ありがとう」と、クウちゃんはスマ
last updateLast Updated : 2025-06-04
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第83話

『全国のハニーたち! Ign:s だよー!』『元気にしてる? 寒いなら俺の肌で温めて、』『ミヤビは黙ってて。ほらコウ! 新人なりに挨拶して!』 大画面の中央に皇羽さんがいる。 ラフな服ではなく、真っ白な衣装に身を包んでいた。……カッコイイ。 全てが完璧に似合っている。耳につけられたピアスも、手につけているアクセサリーも、毛先の一本まで何もかも。「皇羽さん、遠いなぁ……っ」 手を伸ばしても、全く届かない。 ねぇ皇羽さん、私はここにいるよ。 だけど皇羽さんはメンバーと話をしていて、全然カメラを見ない。私だけが、穴が開かんばかりに皇羽さんを見つめている。「はは、目さえ合わないや……」 呆れた笑みを零した時。ふと、桃を持ったポスターの皇羽さんを思い出す。 ねぇ皇羽さん。最初はピンク色どうかと思いましたが、意外に似合っているかもしれません。圧の強いあなたの雰囲気を、良い感じに中和させれくれるピッタリな色じゃないですか――「って、そういう冗談とか、直接言えたらいいのになぁ……」 悲しくなって切なくなって、思わず「はぁ」とため息をつく。すると画面の中にいる皇羽さんも同じくため息をついた。「え」『え』 私も Ign:s の皆も「まさかこの瞬間にため息をつくなんて……」と、驚いた顔で皇羽さんを見つめる。 だけど私の周りにいるファンの熱気は、とんでもない勢いで上昇した。「見てー! コウがため息をついた、可愛い!」「コウってヤンチャだよね~!」「急に入って来た新人がツンケンしてたら萌えるわ……!」 ため息をついたのに、なぜか好感度はアップ。やることなすこと全てが良く見える、謎の現象が発生中だ。どうやら皇羽さんは、ファンの間でツンデレ萌えキャラになっているらしい。「ツンケンしたやんちゃ坊主」って、まんま皇羽さんだ。家にいる皇羽さん、そのものだ。 今までは私だけが見ていた皇羽さん。そんな皇羽さんを、今や全国の女子たちが目をハートにして見ている。「もう、私だけが知っている皇羽さんじゃなくなったんですね……」 家の中の皇羽さん。 私だけが知ってる皇羽さん。 実は几帳面で、心配屋で、肉食系で……。 あんな大きな体をしながら私を震えながら抱きしめたり、切羽詰まった声で名前を呼んでくれたり……。たまに「泣いてるの?」って思うような顔をする事も
last updateLast Updated : 2025-06-05
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