こうなったら、厄介者……じゃなくて綾辻さんを蚊帳の外へ出すしかない! 急いでタクシーを呼び止め、記者を中へ押し込む。「え?え?」と混乱する綾辻さんをスルーして、私も後へ続いた。 もちろん皇羽さんは「は⁉」と怒った。むしろ叫んでいた。だけど、ここで私と皇羽さんが残ってもよくないことになりそうで……それならいっそ綾辻さんを遠くへ離した方がいい。その方が皇羽さんを守れるはず!「適当に走ってください!」 私の声に反応した運転手が「はいよ!」と、いきなりアクセルを全開にした。車は、まるで生き物みたいにガコンと前後に大きく揺れた後、エンジンをふかしながら群衆を置いて道路を走る。「はぁ、はぁ……!」 ど、どうなることかと思った! ちらりと後ろを見ると、皇羽さんが般若の顔で叫んでいる。ひい! あれは、そうとうに怒っているよ! いや、怒って当たり前なんだけどね! もしも私が皇羽さんと久しぶりに再会して、女の人とこんなことをされたら黙っていられない。靴を脱いででもタクシーを追いかけるよ……!(ん? まさか……!) まさか皇羽さんも裸足で追いかけてきているんじゃ⁉と思ったけど、群衆が味方してくれた。女性から逃げるのに必死になった皇羽さんが、すぐに回れ右して駅へ走っていく姿が見える。よかった、群衆から無事に逃げられたみたい。「ね、ねぇ萌ちゃん」「はい」「すごい数の不在着信が入っているよ」「……」 スマホを見ると、鬼の形相だった皇羽さんから鬼電がかかっていた。まさに鬼からの電話! 名前は「皇羽さん」ではなく「こっこ」とぼやかして登録しているため、バレてはいない。もちろん通話をするとバレてしまうので、通話するわけにはいかない。 早く綾辻さんを降ろさなきゃ……!「綾辻さん、どこで降りますか? そこまでお送りしますよ」「いや、僕が送る側でしょ。どこに行きたいの?」「自分の家に帰りたいので、綾辻さんに先に降りていただかないと」「はは、ガードが固いなぁ」 そう言いながら、綾辻さんは運転手に住所を伝えていた。どうやら素直に降りてくれるらしい。「それにしても、どうして私をかばったんですか? 萌ちゃん、なんて言って」 ここまで事態が深刻したのは、ほぼ綾辻さんのせいだと言って良い。皇羽さんの存在を隠すだけなら、これほど大事にしなくて良かったのだ。皇羽さんと綾辻
최신 업데이트 : 2025-06-26 더 보기