捨て台詞を吐き捨てると、教室は不気味なほどの静寂に包まれた。子供たちも大人たちも、感情を爆発させたこの男の子に啞然とするばかりだ。彼は夕月を睨みつけたまま、小さな肩を荒く上下させていた。その瞳には涙と怒り、そして絶望に近い期待が入り混じっていた。やがて彼は意を決したように踵を返し、教室を飛び出していった。けれど、廊下に出るとその足取りは次第に重く、遅くなる。彼は待っていたのだ。これまで数え切れないほどそうしてくれたように、ママが追いかけてきて抱きしめ、「よしよし」と慰めてくれるのを。しかし、夕月はただ静かに、息子が去っていく背中を見つめるだけだった。彼女はその手を、張り詰めた空気に不安そうな表情を浮かべる瑛優の肩にそっと置いた。それは、無言でありながらも確固たる「守る」という意志表示だった。瑛優はポカンと口を開けていた。橘邸で悠斗が癇癪を起こす姿には見慣れていたけれど、幼稚園での彼はいつも自信たっぷりで、まるで王様のように振る舞っていたはずだ。それなのに今は、まるで冬真そっくりの負け惜しみを残して逃げ出していくなんて。悠斗は廊下で足を止め、教室の方を振り返った。誰も、追いかけてこなかった。「行かないで」と引き止めてくれる人は、一人もいなかったのだ。その瞬間、悠斗の心に残っていた最後の微かな希望の灯火が、完全に吹き消された。巨大な失望と屈辱が、まるで津波のように小さな体を飲み込んでいく。「うぅ……っ」耐えきれずに漏れたその嗚咽は、張り裂けそうなほど悲痛なものだった。彼は傷ついた小動物のように勢いよく振り返ると、二度と後ろを見ることなく校門の方へと走り去っていった。「あ……」担任先生は立ち尽くし、気まずさに顔を歪めた。「夕月さん、橘社長に電話してみますね」彼女は慌ててスマートフォンを取り出し、冬真の番号をコールした。受話器を耳に当てるも、相手が出る気配はない。彼女の唇はますます固く結ばれていく。二度目をかけたが、今度はすぐに切断されてしまった。着信拒否だ。担任先生の顔には、隠しきれない困惑と恥ずかしさが滲んでいた。教室内にも重苦しい空気が漂う。園児たちは顔を見合わせ、保護者たちはヒソヒソと低い声で言葉を交わし始めた。夕月は、悠斗が消えていった扉の方をじっと見つめていた。袖の下で指先が微かに震え、
Read more