Todos los capítulos de クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚!: Capítulo 1291 - Capítulo 1300

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第1291話

今の社会では、社員同士のいざこざも珍しくない。自分のスタジオがそんな場所になるのは、紗雪は絶対に望まない。だが人数が少なければ、そうした問題は大幅に減らせるはずだ。採用するのは仕事のためであって、腹の探り合いや足の引っ張り合いをさせるためではない。そんなことになれば、本末転倒だ。紗雪は真剣に考え込む。「今夜、求人広告を出しましょう。明日には面接に来てもらえるよう連絡するわ。私も立ち会うし、いくつか質問を準備しておく。採用は二人までで十分よ」「お任せください、こちらで手配します」吉岡は真剣な表情で引き受けた。今回の採用が、自分の負担を軽くするためだということも分かっている。紗雪も安心して任せられた。これまで彼に任せた仕事は、ほとんどが期待以上の成果だった。時には、彼女の想定を超える出来栄えのことさえある。こんな部下がいてくれるのだから、本当に心強い。余計な手間をかける必要もない。ここまで共に仕事をしてきて、紗雪は吉岡の忠誠心を十分に見極めていた。翌日。紗雪はスタジオに来て、吉岡と採用の準備に取りかかった。質問事項はすでに吉岡がまとめている。彼女は応募者が自分たちと合うかどうか、真面目に働ける人かどうかを見るだけでよい。求人は一つの採用サイトにしか出していないため、応募者はそれほど多くない。およそ10名ほどだ。ざっと時間を計算すると、1時間もあれば終わりそうだ。今回募集するのは、営業担当とアシスタント。吉岡を補佐する役割だ。アシスタントは受付も兼任することになる。毎回誰かが来るたびに清那がドアを開ける、というわけにもいかない。彼女を呼んだのは、受付係にするためではないのだから。紗雪が到着すると、吉岡はすぐに立ち上がった。「社長」彼女は軽くうなずき、挨拶とした。「どう?面接に来る人数は?もうそろってる?」「オンラインでは15人と話していましたが、実際に来たのは12人です」吉岡は12名分の資料を丁寧に整理し、紗雪に差し出す。「こちらが事前にまとめた資料です。本日面接する12名分、すべて入っています」紗雪は受け取り、丁寧に目を通した。「ご苦労様。清那が来たら、すぐ始めましょう」これから共に働く相手だ。日々顔を合わせることになる
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第1292話

彼女は人柄がよく、物事を隠したりもしない。そばにいれば、たくさんのことを学べる。それが吉岡がここにいる理由でもあった。外では応募者たちが紗雪を待っている。彼女はその間に清那へメッセージを送った。【今どこ?】返信はなかった。だが次の瞬間、本人が目の前に現れる。少し息を切らしながら、清那が言う。「ごめんね、ちょっと道が渋滞してて......」「大丈夫よ。そこに座って。もうすぐ面接を始めるから」紗雪は聞かなくても分かっていた。きっとまた寝過ごしたのだ。清那は舌をぺろっと出し、家から持ってきた牛乳をくわえたまま飲んでいる。自分が面接する側になるのは初めてで、どこか新鮮な気分だった。紗雪は手元の資料を清那にも渡す。清那はぱらぱらとめくり、応募者のほとんどが女性であることに気づいた。だがあまり興味は示さない。写真はいくらでも加工できる。実際に会ってみなければ、その人の性格は分からない。「これ見てもあんまり意味ないと思うけど。実際どんな人かを見るほうが大事でしょ」テーブルに置かれた資料を見ながら、紗雪も頷いた。履歴書ではいくらでも自分を良く書ける。結局は人となり次第だ。吉岡も二人の意図を理解した。やがて外の応募者たちに声をかける。「それでは、始めます」12人は一斉に背筋を伸ばした。その一言で空気がぴんと張りつめる。服装を整える者、履歴書を握る手に力を込める者。少しの失敗もしたくないという緊張がにじむ。全員が履歴書を手にしている。最初に庭を見たとき、彼らは少し驚いた。こんな場所にスタジオを構える人がいるとは思わなかったのだ。これまで見てきた職場は、たいてい高層ビルの中だった。そのため、もともと15人来る予定だったうち3人は、環境を見た途端に辞退してしまった。そのことを紗雪は知らない。仮に知っていたとしても、何も言わなかっただろう。それぞれの選択だ。彼女に干渉する権利はない。見た目の印象だけで引き下がるような人なら、むしろ採用しなくて正解だ。第一印象ばかり気にする人は、入社後も何かと問題を起こしかねない。ここを選んだのにも、そうした理由が少しはあった。もちろん、それが主な理由ではない。本当に重要なのは、これから
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第1293話

美しい人は声までこんなに美しいなんて――だが紗雪は、思わず眉をひそめた。その返答に、心の奥で不快感が広がる。「面接に来たのなら、仕事の話に集中してください。さっきからずっと私の方を見ているけど?」その一言で、女性の顔色は一瞬にして青ざめた。自分の一挙一動がすべて見抜かれていたとは思わなかったのだ。しかも真正面で、逃げ場などどこにもなかった。吉岡も空気を察する。この応募者はすでに不合格だと理解した。これ以上引き延ばしても、余計な手間が増えるだけだ。吉岡は軽く咳払いをする。「本日の面接はここまでです。結果は後日ご連絡しますので、お疲れ様でした」女性は緊張したまま立ち上がり、指先をいじりながら何か言おうとした。だが紗雪の冷ややかな表情に視線がぶつかると、結局何も言えず、そのまま背を向けて出ていった。自分が不合格だということは、もう分かっている。幼いころからの癖――美しい人や格好いい人を見ると、つい顔をじっと見つめてしまう。そのせいで注意力が散漫になるのも、直せないままだった。扉が閉まったあと、清那がようやく口を開く。「ずいぶんあっさり不合格にしたけど、どうして?」紗雪が声を出した時点で、その女性に不満を抱いているのは明らかだった。長く一緒にいる清那には分かる。紗雪は首を横に振った。「あの人、仕事に気持ちが向いていないのよ。入ってきた瞬間からずっと私を見ていた。大事な面接なのに集中できない人なんて、プロジェクトを安心して任せられないよ」清那はぱっと目を見開いた。確かに、集中できない人は採用できない。任せた仕事も軽く扱われかねない。「勉強になります」吉岡が真面目に頷く。清那も尊敬のまなざしで紗雪を見つめた。やはり面接は面白い。もっとも、自分が面接される側でなければ、の話だが。その後に入ってきた応募者たちにも、特別心を動かされることはなかった。男女問わず、どこか癖が強かったり、妙に高慢だったり、軽薄そうだったり。吉岡もすっかり分かっている。紗雪が口を開いた時点で、その人は見込み薄だ。半分以上が終わったが、いまだに適任者は見つからない。紗雪は眉間を軽く押さえ、疲れを覚えた。このままでは、安心して番組出演に臨めない。吉岡一人では
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第1294話

もともと彼女は、気の合う社員を見つけるのはそれほど難しくないと思っていた。だが現実は違う。7人も面接したのに、いまだにしっくりくる人がいない。12人の応募者の中からたった二人を選ぶだけなのに、これほど難しいものなのだろうか。もしこの調子なら、今後の採用はどうすればいいのだろう。まだ二人しか採る予定がないのにこれでは、将来もっと人を増やしたくなったら、ますます夢物語になってしまう。紗雪は小さくため息をついた。「まあ、それでも頑張って適任者は見つけないと。そうじゃなきゃ、採用してからこちらが苦労するだけよ。慣らし期間も必要だし、相手の顔色をうかがいながら合わせていくなんて......」考えるだけで頭が痛くなる。だからこそ、今回の採用にはとても慎重だった。間に合わせで誰かを入れるわけにはいかない。いずれ彼女が番組に出演すれば、スマホは常に手元にあるわけではないだろう。そのとき吉岡一人では到底回らない。そうした事情を考えているからこそ、人選にはいっそう力を入れているのだ。しかし清那は肩を落として言う。「もう7人も面接したのに、まだ決まらないじゃない。残りの人たちの中に、必ず合う人がいるとも思えないし......」期待を込めた目で紗雪を見つめる。「少し条件を下げてみるのはどう?」その意味は明白だった。紗雪も理解している。彼女は静かに利害を説明した。「もし新しく入った人が無責任だったら?私たちがいない間に、吉岡はどうするの?時間がかかるかどうかなんて、仕事に真剣に向き合ってくれる人が見つければそれでいいから。私はその場しのぎの人材はいらない。育てるなら、長期的な前提で育てたいの」それを聞いた吉岡は胸が熱くなった。彼女の言葉の意味が一瞬で分かった。結局、自分のことを考えてくれているのだ。清那も考え直す。確かにその通りだ。自分と紗雪が現場に出れば、スタジオには吉岡だけが残る。しかも新しいプロジェクトもある。どれほど有能でも、一人で全部はこなせない。清那は深くうなずき、真剣に謝った。「ごめん、紗雪。私、考えが足りなかった。あなたの言う通りね、吉岡さんを一人きりにするわけにはいかない。私たちがいない間、彼が一人ぽっちだもんね」紗雪は清那の肩を軽く叩き、満足
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第1295話

次に入ってきたのは女性だった。きりっとしたショートヘアに、甘い印象の童顔。それでいて服装はどちらかといえば姉御肌の雰囲気だ。身長は170センチを超えているらしく、立っているだけでどこか圧を感じさせる。その姿を一目見た瞬間、紗雪の目が輝いた。清那もこっそり紗雪の腕をつまみ、この人いいかも、という合図を送る。紗雪は「落ち着いて」と目で制した。第一印象は確かに悪くない。だが肝心なのは実力だ。専門能力が伴わなければ、その後の話はすべて空論になる。とりわけ外見など、この世には美しい人がいくらでもいる。一人増えたところでどうということはない。確かに加点にはなるが、決定的な条件ではないのだ。ショートヘアの女性は三人の前に立ち、落ち着いた様子で一礼した。一目で、誰が本当の代表かを見抜いたようだった。澄んだ声が響く。「はじめまして、菅沼凪(すがぬま なぎ)と申します。白間(はくま)大学を卒業し、専攻は電子商取引です」その紹介を聞いた瞬間、紗雪の胸がわずかに高鳴った。設立して間もない自分たちの小さな会社に、白間大学出身者が応募してくるとは思わなかった。吉岡も思わず眉を動かす。紗雪が聞きたかったことを代わりに口にした。「白間大学を卒業された方が、うちのような設立間もないスタジオに来て、もったいなくはありませんか?」白間大学は全国でも常に上位5位以内に入る名門だ。K国屈指のトップ校と言っていい。そんな高学歴の人材が応募してきたこと自体、驚きだった。凪はその問いにも特に驚いた様子はなく、慣れたように微笑んだ。まるで何度も聞かれてきた質問だと言わんばかりだ。「この質問は、御社が初めてではありません。これまで多くの会社を受けてきました」吉岡の表情にわずかな気まずさがよぎる。言い方を変えた。「では、どうして最終的にうちを選んだのですか?これまでの会社にご不満があったとか......?」かなり遠回しな聞き方だった。本来は会社が人を選ぶ立場で、応募者が会社を選ぶ余地などないのが現実だ。建前はそうだとしても、現実はそう簡単ではない。それだけに、高学歴の彼女が他社を受けた末にここへ来た理由は、誰だって気になる。凪は少しも戸惑わず、率直に答えた。「私は田舎出身なので
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第1296話

つまり、彼らは最初から彼女にチャンスなど与えるつもりがなかったということになる。そう思うと、紗雪はこの世界そのものがどこか滑稽に思えてきた。今度ばかりは清那でさえ、思わず机を叩き、怒りをあらわにして言った。「ひどいわ!せっかく苦労して大学に合格したっていうのに!」それを聞いて、凪は驚いたように顔を上げた。清那の顔に浮かぶ怒りは、どう見ても作り物には見えなかった。だがすぐにまた美しい目を伏せ、目の奥に思わずわずかな皮肉がよぎる。こういう人は、これまでにも数えきれないほど見てきた。口では同情すると言いながら、実際には陰で彼女を嘲笑している。結局のところ、彼女を採用することなどないのだ。仮に採用されたとしても、ほかの同僚と一緒になって彼女を排斥する。そういう会社に入ったことだって、一度や二度ではない。だから、紗雪のところでも同じだろうと、彼女は思っていた。ただ、このところ大都市では本当にやっていけなくなっていた。もし地元に戻れば、きっと家族に笑われるだろう。だから、食べていけるならそれでいいと思っていた。とりあえずここで働いてみて、もし年末までどうしても無理だったら、そのときまた別の仕事を探せばいい。でなければ、ここでずっと無職のままでいても、一銭だって手に入らないのだから。紗雪は凪の窮状に気づいていた。大都市で一人きり、必死に生きていこうとする、卒業したばかりの若い娘の無力さ。それは彼女にもよくわかる。誰だってあの年頃を通ってきたのだし、今の彼女だってスタジオを立ち上げるまで、決して平坦な道ではなかった。それでも彼女は、一度も諦めようとは思わなかった。そしてこの女性の目の奥にも、自分と同じ負けず嫌いの気骨がある。そう思うと、紗雪の胸にはむしろ安堵に似た感情が広がった。それに、凪の澄んだ瞳を見ていると、とても誠実そうに思えた。しかもちょうど専門が合っている。名門大学の出身でもある。これはむしろ掘り出し物を見つけた気分だ。これ以上、何を不満に思う必要があるだろうか。紗雪は先に口を開き、凪に向かって言った。「当スタジオのような規模でも差し支えなければ、ぜひお力をお貸しいただけたい。まずはここで研鑽を積んでいただき、もし今後、より適した場所が見つかった
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第1297話

そばには吉岡のように勤続年数の長い人がいて、しかも彼は落ち着いた雰囲気で質問をしていた。普通なら、そちらが中心人物だと思われてもおかしくない。それなのに、この女性は迷いもなく彼女に向かって喋っていた。つまり、そういう先入観で物事を考えていなかったということだ。紗雪も愚かではない。この時点で、彼女が自分の立場を見抜いていることくらい、当然わかっていた。「私の立場を見抜いたのは、あなたが初めてですよ」その言葉を聞いて、凪は少し驚いた様子だった。「え?そうですか?」彼女の顔には、どこか照れたような笑みが浮かんでいた。というのも、紗雪の放つ雰囲気はなかなか強く、一目見ただけで、ただの人ではないと感じていたからだ。「ええ。それはつまり、あなたには独自の見方と、自分なりのやり方があるってことです」紗雪は微笑みながら続けた。「だから、もっと自分に自信を持ちなさい。その能力と見解は、何より大切なものだと、私は思っています」凪は目を輝かせながら紗雪を見つめた。こんな言葉をかけてもらったのは、これが初めてだった。彼女の家庭環境は、ずっと恵まれていなかった。貧しい家に生まれた彼女は、幼い頃、父親が山で虎にさらわれて亡くなり、母親も悲しみのあまり父に続くようにこの世を去った。それ以来、彼女は祖父母の家に身を寄せて育った。だが祖父は男児を重んじる人で、もし祖母が彼女に優しくしてくれなければ、今まで学業を続けることなど到底できなかっただろう。それでも彼女は努力を続け、ついには白間大学に合格し、この大都市へとやって来た。ここで初めて、これまでとは違う景色を見ることができたのだ。やっと苦労が報われると思っていたのに、まさか自分の出自だけを理由に、採用を拒まれることになるとは。そう思うと、凪はどうしても悔しくてたまらなかった。それなのに、まさか紗雪のような人に出会えるとは思ってもいなかった。驚きもあったが、それ以上に嬉しさの方が大きかった。「あの、それはつまり......私は面接に合格した、ということですか?」凪はおそるおそる尋ねた。その視線には、まだ自信のなさが色濃く残っていた。「ええ。おめでとうございます」紗雪は立ち上がり、凪のほうへ歩いていく。彼女の前で足を止めると、手を
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第1298話

凪が部屋を出ると、外で待っていた人たちは皆、彼女の顔に笑みが浮かんでいるのに気づいた。前の七人が出てきたときにはそんな様子は一度もなく、笑顔で出てきた面接者を見るのはこれが初めてだった。皆、少し意外そうに彼女を見た。あの様子からすると、きっともう採用されたのだろう。求人広告には二人だけ募集すると書かれていた。今すでに一人が採用されたということは、残りの人にとって競争がさらに激しくなるということだ。残っている人たちは互いに顔を見合わせ、何を言えばいいのかわからない様子だった。中には、すでに引き下がろうかと考え始めている人さえいた。だが、部屋の隅には背筋を伸ばして座っている男が一人いた。彼は手に持った会社のカルチャー紹介資料を読みながら、セイユキの背景や成り立ちをじっくりと理解しようとしていた。ほかの人たちは皆、早く面接を終わらせて次の会社へ行こうと、先を争うように中へ入ろうとしている。ここで時間を無駄にしたくないのだ。なにしろ、募集人数はあまりにも少ない。ここで時間を費やすくらいなら、ほかの会社をいくつか受けたほうが、可能性はむしろ高くなる。だが、隅に座るその男はそうは考えていなかった。彼が応募した会社はここ一社だけで、ほかに応募を出している会社もなかった。もしここでだめだったら、明日になってから別の会社を探せばいい。彼は一つの会社を選んだら、その会社の募集内容をきちんと理解することに集中する。会社の文化や背景、最近どんなプロジェクトと協力してきたのか――そういったことまで丁寧に調べておくのだ。だから、ほかの人のように我先にと争うこともしなかった。前の人たちが競うように面接へ入っていく中、男は特に焦る様子もない。たとえ自分が最後の一人になったとしても構わない。そのほうが、むしろ準備をより十分に整えられると思っていた。そして最後には、本当に彼一人だけが残った。その間ずっと、紗雪の表情はあまり良くなかった。なかなか適任者が見つからないのだ。極端な人ばかりか、学歴が低すぎるか、あるいは妙にプライドばかり高いかのどちらかだった。そもそも紗雪は、営業担当のポストはもうないとはっきり伝えている。それを聞いた途端、残っているのがアシスタントのポストだけだとわかると、皆
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第1299話

「わかりました。では、彼を呼んできます」吉岡の声を聞き、紗雪は軽くうなずいたが、それ以上は何も言わなかった。やはり、自分でスタジオを立ち上げるとなると、以前とはいろいろと違うものだ。今回入ってきた男は、黒縁の眼鏡をかけていて、どこか堅物そうな印象がある。吉岡に自己紹介を求められると、彼は実にきっちりとした口調で話したが、仕事ぶりは真面目で几帳面そうだった。紗雪はふと思いつき、会社の文化や背景について説明してみてほしいと頼んでみた。すると意外なことに、彼はすらすらと説明してみせた。それどころか、自分から南の土地プロジェクトのことまで話し出した。紗雪は本当に少し驚いた。「そのプロジェクトのこと、どうして?」男の名は片山朝人(かたやま あさと)という。紗雪の問いを聞くと、彼は真面目に答えた。「ネットで公式アカウントを見たんです。SNSの動きを調べてみたら、セイユキと柿本グループのつながりを見つけました。土地プロジェクトを引き受けたからですよね。なので、スタジオ自体はまだ設立されたばかりですが、今後の発展性は非常に高いと思います」片山は真剣な口調で、さらにスタジオの今後の方向性まで丁寧に分析してみせた。その点には、居合わせた全員が少し驚いた。紗雪でさえ、思わず眉をわずかに上げる。認めざるを得ない。この男は、かなり自分の好みに合う人材だった。だが、まだ一つ重要な問題がある。「それで、あなたが応募する職種は?」「アシスタントです」その言葉が口にされた瞬間、まるで救われたような気持ちだった。これまでの状況を総合して見ても、紗雪には彼が非常に適任に思えた。しかも応募している職種も衝突しない。そうなると、彼を残さない理由などまったくない。「明日から出勤してもらって大丈夫です」紗雪は迷いなくそう言った。ここまで細かく会社のことを調べている男性を見るのは初めてだった。会社の背景までここまで理解している人材を、逃すわけにはいかない。片山が去ったあと、清那はようやく我に返った。彼女は紗雪の腕を軽くつつきながら言った。「紗雪、今回ってもしかして当たり引いたんじゃない?二人とも思ってたよりずっといい人材だよ!」「ほんとにね。私もすごく満足してる。それに二人ともそれぞ
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第1300話

紗雪はまったく同意できないという顔で彼を見た。「私はそういう搾り取るようなことはできないから」三人は顔を見合わせて笑い、場の空気はとても和やかだった。......一方その頃、加津也のほうでは、敦が紗雪とプロジェクト契約を結んだと知った瞬間、怒りで目が飛び出しそうになった。このところ、父親からも会社からも圧力をかけられ、彼はまさに身動きが取れない状態だった。あらゆるところからのプレッシャーを、すべて一人で背負わなければならない。もともとは順調に発展していた会社も、敦と決裂して以来、多くの企業が彼らとの協力をやめてしまった。なにしろ敦のほうが大半のプロジェクトを握っている。彼を怒らせるということは、鳴り城の企業の半分以上を敵に回すのと同じことなのだ。そのことは、加津也自身もよくわかっていた。だが、彼だってこんな状況を望んでいたわけではない。まさか最後に敦が紗雪を選ぶとは......しかも最近は、家にも帰る勇気がなかった。両親の視線に向き合うのが怖かったのだ。二人とも、彼に大きな期待を寄せている。とりわけ母親である久美子(くみこ)には、以前「必ず父の右腕になって西山家の名を揚める」とまで言っていた。だが結果はどうだ。プロジェクトは取れず、加津也は今や両親にどう顔を向ければいいのかさえわからない。家に帰るたび、二人の期待に満ちた眼差しに向き合うことすらできなかった。それでも今、父親の吉彦から帰ってくるよう電話があった。加津也は時間を確認した。確かに、もうかなり長いこと家に帰っていない。この間ずっと外で仕事やプロジェクトに追われていた。だが結局、そのプロジェクトは紗雪に持っていかれ、横からさらわれた形になってしまった。もしこのことを吉彦に知られたら、きっとまたきつく叱られるだろう。それでも、もう逃げ続けるわけにはいかない。この家に生まれた以上、責任から逃れることはできないのだ。加津也はため息をつき、車に乗って家へと向かった。このところ、彼はずいぶん成長していた。たとえ吉彦や久美子が相変わらず冷たい態度でも、もう自分で向き合うしかないとわかっていた。案の定、家に入ると、吉彦が厳しい顔でソファに座っていた。横では使用人が彼のためにお茶を入れている。そ
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