All Chapters of クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚!: Chapter 1341 - Chapter 1350

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第1341話

紗雪は、清那が急に口を閉ざし、ただ遠くを見つめていることに気づいた。少し不思議に思って尋ねる。「どうしたの?」「ううん。ただ頑張らなきゃって思って......」「そうだよ」その考えに対して、紗雪はむしろ好ましく思っていた。「ちゃんと頑張らないとね。ご両親のためにも。それに私、清那が一人前の大人になってほしいの。今みたいに純粋なのもいいけど、世の中には悪い人も多いから」「そうだね。わかったよ、紗雪」そんなふうに二人は笑い合いながら、テレビ局へ向かった。制作チームは、番組の進行について簡単に説明しただけだった。しかし紗雪の姿を目にした瞬間、その満足げな表情を隠しきれなかった。まさか、本人はテレビで見るよりもずっと美しいとは。むしろ実物の美しさが、カメラでは捉えきれていないとさえ言える。画面越しでは、彼女の魅力の二割も伝わっていない。それでもなお、カメラの前に立つ彼女は非の打ちどころがないほど完璧だった。もしファンたちが実際に彼女を目にしたら、どんな反応を見せるのか、想像もつかない。監督は紗雪を見た途端、さらに熱のこもった態度になった。まだ撮影は始まっていないというのに、この番組がどれほど大ヒットするか、すでに頭の中で思い描いていた。「はじめまして。今回の番組は主に建築をテーマにした内容でして、あなたのスタジオのコンセプトに合っていると考え、ぜひご出演いただきたくお声がけしました」紗雪は軽くうなずく。「奇遇ですね。私もスタジオの関係で、この番組を見て参加を検討しました。お声がけいただき、ありがとうございます」「いえいえ。二川さんほどの容姿をお持ちなら、芸能界に進出しないのはもったいないくらいですよ」紗雪は気に留める様子もなく、ただ紅い唇に淡い笑みを浮かべた。こういうことを言われるのは、子どもの頃から数えきれないほどあった。だが、彼女の志はそこにはない。「監督、番組の流れについてお話ししましょうか」紗雪はさりげなく話題を切り替える。「番組に出る以上、半分は芸能界に足を突っ込んでいるようなものですから」二人は顔を見合わせ、軽く笑い合った。監督も抜け目のない人物だ。紗雪にその気がないことは一目で分かる。彼女はスタジオの宣伝のためにこの番組に参加している
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第1342話

監督もまた、二人が自分の考えに賛同してくれたことをとても喜んでいた。「そういうことであれば、まずは契約を結びましょう。細かい点については、また改めてご相談させていただければと思います。実際の流れとしては、主に建築に関するプロジェクトに参加していただいたり、いくつかのゲームにも挑戦していただきます。視聴者に楽しんでもらいながら、『建築にはこんな使い方もあるんだ』と知ってもらうのが目的です」紗雪は、監督の意図をしっかりと理解した。「分かりました。では、この方向で契約内容を詰めていきましょう。詳細については、明記していただければ」紗雪は一言付け加える。「ただ、収録場所はあまり遠くならないようにしていただきたいです。スタジオの仕事も処理しなければならないので」「その点ならご安心ください」紗雪が立ち上がると、監督もそれに合わせて立ち上がった。「そういうことでしたら、今後の業務について、全面的に協力させていただきます」「ありがとうございます。これからはよろしくお願いしますね」「こちらこそ」二人は手を差し出し、固く握手を交わした。これで今回の契約は成立した。監督は続ける。「収録の際も、どうぞよろしくお願いします」「いえいえ。私も、バラエティ初心者ですから」和やかなやり取りが続き、互いに謙遜し合うような雰囲気すらあった。こうして紗雪と番組チームは、今後の予定を正式に決めた。帰り道、清那は終始ご機嫌な様子だった。紗雪は思わず笑いながら尋ねる。「何かいいことでもあった?」「そりゃね。これからたくさんの芸能人に会えるんだよ?誰だって嬉しくなるでしょ」紗雪は少し不思議そうに首を傾げる。「テレビで見るのと何が違うの?」彼女は特に「推し」を追いかけるようなこともなく、画面越しでも現実でも大差はないと感じていた。人それぞれ、生活のリズムも違うのだから。「全然違うよ」清那は少し憧れるように言った。「前から気になってたんだ、あの人たちの仕事って実際どんな感じなのか。ああいう映像ってどうやって撮ってるのかも。今度は自分で体験できるんだって思うと、ワクワクしてきた!」「はいはい、頼りにしてるよ、アシスタントさん」清那はわざとらしく真面目な顔で手を差し出す。「これからもよろしくね
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第1343話

結局、紗雪は小さくうなずいた。「分かった。先に着替えてくるよ」京弥の目に、ふっと笑みがよぎる。「ああ。こっちも仕上げが少し残ってるから、君が戻ってくる頃にはちょうどできてると思う」紗雪は軽くうなずくだけで、それ以上は何も言わず、そのまままっすぐ二階へ向かった。その瞬間、京弥は心の底から匠に感謝した。やはりあの「攻略」は効果があったらしい。今では紗雪も、きちんと彼と会話をしてくれるようになった。以前なら、こんなことはあり得なかった。彼の好意を拒むか、何も言わずにそのまま部屋へ上がってしまうかのどちらかだったはずだ。だが今は違う。キッチンの前で足を止めてくれた――それだけでも、まだ汚名返上のチャンスがあるということだ。そう思えば思うほど、京弥の気分はどんどん良くなっていった。料理をすべてテーブルに運び終えた頃、紗雪もちょうど着替えを済ませて階下に降りてきた。すらりと伸びた白い脚が、無意識に彼の視界の中で揺れる。思わず視線が引き寄せられ、胸の奥がじんと熱を帯びる。「できたよ」京弥は無理やり視線を引き戻した。紗雪は何も言わず、静かに食卓へと向かう。並べられた料理は、見た目も香りも申し分なく、中には手間のかかる品もいくつかあった。一目で分かる――京弥がかなり時間と労力をかけて作ったのだと。そしてそのすべてが、彼女の機嫌を取るためのもの。そう思うと、紗雪の胸の奥に、言いようのない満足感が静かに広がった。京弥はエプロンを外し、引き締まった体のラインをうっすらと覗かせながら言う。「ちょっと手を洗ってくるから、先に食べてていいよ」紗雪はただ軽くうなずくだけだった。京弥が潔癖症気味なのは、彼女もよく知っている。それでも彼女のために何度も料理をしてくれるのは、簡単なことではない。紗雪は彼を待たず、箸を伸ばして自分の好きな料理を取る。そのまま口に運ぼうとした、その瞬間――リビングの明かりが、ふっと消えた。一瞬で視界は真っ暗になり、何も見えなくなる。紗雪は眉をひそめ、胸の奥にわずかな不安が広がった。思わず箸を置き、反射的に名前を呼ぶ。「京弥?これは何のドッキリ?」電気代は毎月自動で支払われている。停電になるはずがない。それにこの家には発電
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第1344話

実のところ、京弥のその顔に対して、紗雪が見飽きることは決してなかった。むしろ、時間や場所が変わるたびに、その顔はいつも違った驚きと感情を彼女にもたらしてくる。横顔を見れば、ほどよい厚みの唇が視界に入り――思わず衝動のままにキスしてしまいたくなる。けれど、今はそれをしてはいけないと分かっていた。紗雪は、体の横に垂らしていた手をそっと握りしめ、深く呼吸を数回繰り返して、胸の奥に湧き上がる衝動をなんとか抑え込んだ。キャンドルに火を灯し終えると、京弥は振り返って紗雪を見つめた。黒い瞳はきらめき、その奥にある想いは隠しようもない。「紗雪、分かってる。今までのことは、全部俺のせいだ。君に隠していたのが間違いだった。だから今の俺がしたいのはただ一つ――君に償うことだ」そう言いながら、彼はゆっくりと紗雪へ近づいていく。二人の間の空気は、次第に甘く、濃密なものへと変わっていった。その声は柔らかく、どこか低く響いていて、耳に心地よく残る。その瞳には、まるで紗雪しか映っていないかのようで、もう他の誰も入り込む余地はなかった。「ただ、君と幸せな日々を送りたい。それだけなんだ。君を初めて見たあの瞬間から、俺の目にはもう他の誰も入らなくなった」京弥は瞬きもせず、まっすぐ彼女を見つめる。「この間、色々考えた......君は、俺が他の女を考えてるじゃないかって誤解してたと思う」その言葉に、紗雪の胸がドクンと大きく鳴った。――どうして、それを知っているの?自分ではうまく隠せていたつもりだった。まさか、気づかれていたのか。彼はそんな彼女の戸惑いを見透かしたように、一歩近づいて目の前で立ち止まる。二人の距離は、息が触れ合うほどに近い。キャンドルの光に照らされ、紗雪は彼の頬を見つめた。こんな距離なのに、不思議と嫌ではない。それどころか、どこか胸が弾むような感覚さえあった。次の瞬間、京弥は彼女の目の前でスマホを取り出し、メモアプリを開いた。そこに記されている内容は、紗雪が以前から気にしていた「趣味や好み」のメモだった。その画面を見た瞬間、紗雪は彼がなぜこれを見せたのか理解する。まさか......彼女の胸に一つの予感がよぎる。だが、軽々しく確かめることもできず、ただその場に立ち尽くした。
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第1345話

「それは......本当なの?」京弥は迷いなく答えた。「もちろん、全部本当だ。もし少しでも君に隠してることがあったら、今すぐ天罰が――」言い終わる前に、紗雪が一歩踏み出して、彼の口を手で覆った。その先の言葉は、そのまま喉の奥に押し戻される。紗雪は焦ったような目で彼を見る。「そういうこと、軽々しく言わないで」京弥が本気だと分かっていても、そんな誓いを口にされるのは心地よくなかった。京弥は「うん」と小さく答えたが、彼女の手をどけることはせず、その手のひらに触れたまま、ゆっくりと言葉を続ける。「信じてほしい、紗雪。君に対しては全部本気なんだ。隠してることなんて何もない......あのことを除けば、だけど。あの時の俺はどうかしていた。必ず埋め合わせはする。だから、もし許してくれるなら――これからは君の言う通りにする。何でも、だ」その真剣すぎる表情に、紗雪は思わず吹き出した。しかも、その目はまっすぐで、すべてが自分の好みにぴったりと重なっている。ますます抵抗なんてできなくなる。「いいよ。信じてあげる」京弥の目に、ぱっと喜びが浮かぶ。「じゃあ......許してくれたってこと?」期待に満ちた視線を受けて、紗雪はうなずいた。「うん。その謝罪、受け入れるから」優しく微笑みながら続ける。「だから、もう変な誓いはやめて。私を独りぼっちにするつもり?」「ちょ、ちょっと紗雪!」今度は京弥が慌てて彼女の口を手で覆う。「縁起でもないこと言うなよ。俺はまだ元気なんだから」紗雪は抵抗しなかった。口は塞がれていても、その目は正直で、笑いがこぼれそうなほど、柔らかく輝いていた。「ほら、早くご飯にしよう」弾むような声には、今の彼女の機嫌の良さがはっきりと表れている。京弥も、ようやく胸のつかえが取れたように息をついた。スイッチのところへ行き、部屋の明かりをすべてつける。ぱっと明るくなった瞬間、紗雪は思わず目を細めた。さっきまでの柔らかな暗さに慣れていたせいで、少し刺激が強い。目が慣れてから、ようやく目の前の赤いバラへと視線を落とす。みずみずしく咲いた花びらには、まだ水滴が残っている。丁寧に手入れされていたことが一目で分かった。「ありがとう。すごく好き」その言
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第1346話

これから匠が何か失敗をしでかしたとしても、もうF国送りにする必要はないだろう。近場で適当に処分してやればいい。今の彼は、自分の中でいわば「免罪符」を手に入れたようなものだ。もちろん、そんなことを紗雪は知る由もない。ただ、京弥の「気の利き方」が、以前に比べて明らかに上がっているとは感じていた。たとえ誰かに教わったのだとしても、それが何だというのか。自分のために、こうしたことを学ぼうとする男は、それだけで世の多くの男よりずっと上だ。中には不器用なままでも構わないが、学ぼうともしないで言い訳ばかりする男もいる。そんな人間を、わざわざ手元に置いておく必要がない。食事を終え、二人はようやく部屋へ戻った。ベッドに横になった瞬間、京弥は手を伸ばし、紗雪を抱き寄せる。身体がぴたりと重なり合う。その瞬間になって、ようやく胸の奥が満たされるような安堵を覚えた。思わず小さく息を吐く。その音に気づき、紗雪は少し苦笑する。「どうしたの?」「いや......さっちゃん、本当にいい女だなって」京弥はぎゅっと彼女を抱きしめ、離そうとしない。紗雪はその胸に身を預けたまま何も言わなかったが、口元の笑みは次第に深くなっていく。彼の言いたいことは、ちゃんと分かっている。けれど、この空気を壊すような言葉は、どちらもあえて口にしなかった。京弥は天井を見上げながら、彼女を抱きしめる。心の中が、静かに満たされていく。「さっちゃん......」胸の奥で響くような低く柔らかな声で、その名を繰り返す。「ん......?」紗雪は無意識に小さく声を漏らした。一日中動き回って、すでに少し疲れている。顔を上げた、その次の瞬間――京弥の薄い唇が、彼女のそれを覆った。紗雪はぱっと目を見開く。その瞬間、呼吸さえ奪われたようだった。うまく息ができない。京弥は一度そっと唇を離し、彼女の耳元で囁く。「息、忘れてるよ」紗雪の頬は一気に赤く染まった。よりを戻した途端、この男は一層遠慮がなくなっている。前はこんなふうじゃなかったのに。「もっと優しくして」思わず小さく抗議する。だが京弥はくすりと笑う。「えぇ......もう十分優しくしてたのに」そう言いながら、抱きしめる腕にさらに力
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第1347話

口を開こうとしたが、紗雪の穏やかな寝息が聞こえてきた。「......」あれこれ悩んでいたというのに、当の本人はとっくにぐっすり眠っている。――あんなに悩んでたのに、彼女は最初から気にしていなかったのか?そう思うと、京弥は思わず手を伸ばし、紗雪の鼻を軽くつまんだ。「薄情なやつ」とはいえ、その仕草はとても優しく、彼女がわずかに眉をひそめた瞬間、すぐに手を引っ込めた。ためらいは一切なかった。それでも、こうして堂々と紗雪を抱きしめて眠れるだけで、胸の奥は満たされていた。この夜は、この数日の中で一番心地よく眠れた。翌朝、目が覚めたときには、すでに紗雪の姿は隣になかった。しかも今回は、彼女がいつ起きて出ていったのか、まったく気づかなかった。ベッドサイドのテーブルには、一枚のメモが残されている。【スタジオの方に用事があるから、先に出るね。私の料理の腕は知ってるでしょ?私には無理だから、適当に済ませてね】最後には、いたずらっぽい顔の落書きが添えられていた。それを見た瞬間、京弥の目元には笑みが溢れそうになる。やはり仲直りすると、天気さえも前よりずっと気持ちよく感じられる。......会社に着き、オフィスに入った直後、ポケットのスマホが震え出した。取り出して画面を見ると、思わず目を細める。――この時間に、父さんから?「もしもし、父さん?」電話に出た瞬間、向こうから重みのある男の声が飛んできた。「このバカ息子、まだ自分に親父がいるって分かってるのか?」「......」やっぱりな、と内心でため息をつく。この人が電話してくるときは、だいたいこういう調子だ。最初の一言は、必ず説教から始まる。少し間を置いてから、ようやく口を開いた。「もちろん分かってるよ。それで、何か用?」京弥の父――椎名宇一郎(しいな ういちろう)は、椎名家現当主の長男だ。その宇一郎は、彼の言葉を聞いた瞬間、さらに苛立った声を上げた。「ネットで流れてる話、見たぞ。お前、結婚してたのか?父親の俺が最後に知るって、どういうことだ」京弥は少し驚く。「母さんと旅行してるんじゃなかった?どうしてそんなことを?」「こっちはネットが使えないわけじゃない」不機嫌そうに続ける。「それで?いつになった
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第1348話

京弥が返事をしようとしたそのとき、電話の向こうから父親のため息が聞こえてきた。「まさかお前が結婚する日が来るとはな。どこの娘だ、お前なんかを気に入ったのは」「......」――親父の中で、自分ってそんな評価低いのか?京弥は少し不機嫌そうに言い返す。「用がないなら、もう切るけど。こっちも仕事があるんだ」「はいはい。嫁ができたから親はもういらない、か」そう言い残すと、父親は京弥より先に電話を切った。京弥は思わず心の中でため息をつく。――まったく、歳を取るほど子どもみたいになってきたな......そもそも、母と旅行に行きたいなんて言い出して、あっという間に引退すると騒ぎ出したのは誰だ。だからこんなに早く、自分が会社を継ぐことになったのだ。そう考えると、また一つため息がこぼれる。――親父のことだ。もう自分でどうにかするしかないな。......一方その頃、紗雪は吉岡と柿本のプロジェクトについて話し合っていた。「南の土地プロジェクトがどれだけ重要かは、わざわざ言わなくても分かってるわよね」吉岡はすぐにうなずく。「はい」「このプロジェクト、もうすぐ着工になるけど、現場のデータがまだ揃っていない。時間を見つけて、自分で現地に行って測量してきて。誰かに任せたりしないで」「分かりました」吉岡は迷いも不満も見せず、素直に引き受けた。測量データがどれほど重要かは、建築業界にいる以上、よく分かっている。もし基礎となるデータに誤りがあれば、それはすでに土台が崩れているのと同じだ。どれだけ高い建物を建てても、決して安定することはない。この仕事を任される意味も、彼は十分に理解していた。だからこそ、紗雪の期待を裏切るつもりはなかった。「それと、新しく入った二人、どう思う?」紗雪はさりげなく尋ねる。吉岡は真面目に報告した。「二人ともすごく真面目ですし、気も利きます。仕事もきちんとやっています。おかげで自分の負担もかなり軽くなりました。片山さんも、少し口数が少ないですが、しっかり働くタイプです」その言葉を聞き、紗雪は安心した。吉岡の目には素直な評価が浮かんでいる。よく考えれば、彼がわざわざ隠す理由もない。良い人材を確保することは、彼自身にとってもプラスになる。それな
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第1349話

吉岡はこの機会をとても貴重だと感じていた。「そういえば社長、番組の収録って、いつ頃行くことになっているんですか?」吉岡ははっきり確認しておきたかった。今のところ、具体的な日程はまだ決まっていない。先に把握しておけば、自分が現地測量に行くタイミングとずらすこともできる。そうすれば、スタジオに誰もいないという状況を避けられる。何しろ、新人の二人はまだ業務に不慣れだ。もちろん、最初は誰だってそうだし、少しずつ慣れていけばいい。だからこそ、吉岡は紗雪のスケジュールを確認したのだった。紗雪は少し考え込む。そういえば、監督からもまだ具体的な日程は伝えられていない。「それは......まだ分からない」少し思案してから続ける。「こうしましょう。明日、スタジオは私に任せて、あなたは現地に測量に行って。たぶん、この二日は収録には行かないと思う」「分かりました」吉岡もその配慮をありがたく受け取った。会議室を出ると、紗雪は新しく入った二人の様子に目を向ける。二人とも真剣に仕事に取り組んでいて、その姿に自然と満足感が湧いた。上司が何を話していたのか、余計な詮索をする様子もない。それだけで、多くの人よりずっと印象がいい。紗雪は柔らかく微笑みかける。「仕事頑張って。私が収録から戻ったら、ボーナスは倍にするから」「ありがとうございます、社長!」二人は声を揃えて答えた。紗雪も分かっている。自分がスタジオを離れる間、一番大変なのはこの二人と吉岡だ。今はまだ立ち上げの段階。だからこそ、人材をつなぎ止める大事な時期でもある。こうしてこそ、次の段階へ進めるのだ。仕事を片付けると、紗雪はそのまま帰宅の準備をした。無駄な時間は取らず、そのまま別荘へ戻る。少し休もうと、レモンティーを淹れたちょうどそのとき、玄関の開く音が聞こえた。「おかえり」自然な調子で声をかける。京弥は「ただいま」と短く返すと、背後から彼女の腰に腕を回し、顎をその首元に軽く預けた。長年連れ添った夫婦のように、自然な距離感だった。紗雪も、この関係がどこか心地よく感じられる。思わず振り返りながら聞いた。「何があった?いきなり抱きついてきて」「ずっとこうしていたいんだ......」京弥はまった
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第1350話

京弥は、紗雪の姿をじっと見つめていた。きちんとしたスーツ姿が、その整った体のラインを際立たせ、しなやかな曲線が余すところなく浮かび上がっている。整った小さな顔立ちは、緊張のせいかどこか落ち着かず、少し戸惑ったような表情を浮かべていた。だが、そんな彼女を見て、京弥はむしろ親しみのようなものを感じていた。これまでどこか手の届かない存在だったその顔に、今はほんの少し温度が宿り、彼の目にはいっそう生き生きと映っている。「そんなに緊張しなくていい」京弥は唇を軽く上げ、紗雪の耳元へと顔を寄せる。「すごく綺麗だよ」そう囁くと同時に、彼はそっと彼女の耳たぶに口づけた。その瞬間、紗雪は耳元から全身へと、じんわりとした痺れるような感覚が広がるのを感じた。「でも......やっぱり、まだ心の準備ができてないかも」すると京弥は、真面目な顔で言う。「こんなに完璧なんだ。これ以上、何を準備する必要がある?うちの親が見たら、こんなに綺麗な嫁だなって、きっと喜ぶよ」「......!!」紗雪は思わず言葉を失った。まさかこんな台詞が、この男の口から出てくるとは思ってもいなかった。――やっぱり、ネットで言われてることって当たってるのかも。普段は冷静な社長様でも、時々こういう直球なことを言う。しかも、こんな言い方をする京弥を見るのは初めてで、どこか新鮮に感じてしまう。じっと見つめられていることに気づき、今度は京弥の方が少し照れた。「どうした?そんなに見つめて」紗雪はくすっと笑う。「そんな褒め方、初めて聞いた」「別に普通だろ?」京弥は彼女の柔らかい頬を軽くつまむ。「君にピッタリな言葉だと思うよ」その言葉に、紗雪の方が逆に照れてしまった。こんなにストレートな彼は、初めてだ。これまではどこか遠慮や含みがあったのに、今はまるで何も隠さない。紗雪は唇を軽く噛み、微笑むだけで、それ以上は何も言わなかった。しかし京弥はさらに続ける。「で、どうする?親に会いに行く?ちょうどこの数日で実家に戻ってくるみたいなんだけど」紗雪は眉を寄せる。「でも、近いうちに番組の収録があるかも......いつ始まるか分からないけど」「それなら簡単だ」京弥はスマホを取り出し、今にも電話をかけようとする。
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