紗雪は、清那が急に口を閉ざし、ただ遠くを見つめていることに気づいた。少し不思議に思って尋ねる。「どうしたの?」「ううん。ただ頑張らなきゃって思って......」「そうだよ」その考えに対して、紗雪はむしろ好ましく思っていた。「ちゃんと頑張らないとね。ご両親のためにも。それに私、清那が一人前の大人になってほしいの。今みたいに純粋なのもいいけど、世の中には悪い人も多いから」「そうだね。わかったよ、紗雪」そんなふうに二人は笑い合いながら、テレビ局へ向かった。制作チームは、番組の進行について簡単に説明しただけだった。しかし紗雪の姿を目にした瞬間、その満足げな表情を隠しきれなかった。まさか、本人はテレビで見るよりもずっと美しいとは。むしろ実物の美しさが、カメラでは捉えきれていないとさえ言える。画面越しでは、彼女の魅力の二割も伝わっていない。それでもなお、カメラの前に立つ彼女は非の打ちどころがないほど完璧だった。もしファンたちが実際に彼女を目にしたら、どんな反応を見せるのか、想像もつかない。監督は紗雪を見た途端、さらに熱のこもった態度になった。まだ撮影は始まっていないというのに、この番組がどれほど大ヒットするか、すでに頭の中で思い描いていた。「はじめまして。今回の番組は主に建築をテーマにした内容でして、あなたのスタジオのコンセプトに合っていると考え、ぜひご出演いただきたくお声がけしました」紗雪は軽くうなずく。「奇遇ですね。私もスタジオの関係で、この番組を見て参加を検討しました。お声がけいただき、ありがとうございます」「いえいえ。二川さんほどの容姿をお持ちなら、芸能界に進出しないのはもったいないくらいですよ」紗雪は気に留める様子もなく、ただ紅い唇に淡い笑みを浮かべた。こういうことを言われるのは、子どもの頃から数えきれないほどあった。だが、彼女の志はそこにはない。「監督、番組の流れについてお話ししましょうか」紗雪はさりげなく話題を切り替える。「番組に出る以上、半分は芸能界に足を突っ込んでいるようなものですから」二人は顔を見合わせ、軽く笑い合った。監督も抜け目のない人物だ。紗雪にその気がないことは一目で分かる。彼女はスタジオの宣伝のためにこの番組に参加している
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