これほど大がかりな仕掛けまでしたのだから、もし自分の夫がこんなふうにデマを流されたら、誰だって黙ってはいられないはずだ。ところが、けしかけた山田は紗雪を挑発するどころか、逆に問い詰められてしまった。もし最後に山田が自分のことまで白状してしまえば、それこそ言い逃れはできない。今まで外向きに必死で築き上げてきたイメージも、一瞬で崩れ去ってしまうだろう。一方、山田が逃げるように立ち去る姿を見た紗雪は、軽く眉を上げた。その瞬間、彼女の中ではすべての答えが出ていた。やはり、あの男は誰かに差し向けられた人間だった。そうでなければ、あそこまで来てあっさり逃げ出すはずがない。本来なら、そのまま追及し続けることもできたはずだ。そして、その「誰か」が誰なのかも、もはや考えるまでもなかった。紗雪は何気ない様子で、隣に立つ千弦へ視線を向けた。その時点で、彼女の心の中には確信があった。紗雪の視線に気づいた千弦は、胸がどきりと鳴る。緊張を隠しながら問いかけた。「なんですか?」紗雪が口を開く前に、千弦は先に続けた。「二川さん、あれは全部ネットの噂にすぎないわ。まさか、本気にしちゃったの?」そう言いながら眉を上げ、挑発するような視線を紗雪へ向ける。その挑発に気づかない紗雪ではない。しかも周囲には何台ものカメラが回っている。ここで千弦と真正面から衝突すれば、すぐにネットのトレンド入りするのは目に見えていた。「まさか。信じませんよ。ご本人が気にしていらっしゃらないのに、どうして私が?」紗雪は非の打ちどころのない笑みを浮かべた。まるで千弦の言葉など最初から意にも介していないかのようだった。実際、そのとおりだった。本当に京弥と結ばれているのは自分なのだ。だったら、どうして部外者の言葉など気にしなければならないのだろう。しかし、紗雪が平然としていられても、その隣にいた清那はそうはいかなかった。とりわけ千弦のあの尊大な態度を見ると、胸の内はますます穏やかではない。今どきは、部外者のほうがここまで堂々としているものなのかと腹が立って仕方がなかった。そんな清那の様子に気づいた紗雪は、すぐに彼女の腕をそっとつかみ、小さく首を振って「落ち着いて」と合図する。千弦の狙いはまさにそこだった。自分
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