凪と片山は、入口に立っている京弥と清那の存在に気づいていた。だが、紗雪が明らかに気づいていながら気に留めていない様子を見るに、きっと彼女の知り合いなのだろうと判断した。とはいえ、この距離感は理解しがたい。――もしかして、友人同士の何かの合図なのか?そんなことを考えつつも、二人はあくまで新人だ。余計なことは口にしなかった。その間も、紗雪は説明を続けている。「ここが会議室です。普段の業務は基本的にこの部屋で行います。あとでパソコンも用意しますね。庭の花や植物にはむやみに触れないでください。もし時間があれば、水やりを手伝ってくれても構いません。これは前のオーナーが残していったものなので」草花の話になると、紗雪の目にふっと柔らかな光が宿る。それだけ、彼女がこれらの小さな命を大切にしているのが伝わってきた。凪は真剣にうなずく。「分かりました。気をつけます」片山は言葉にはしなかったが、しっかりと胸に刻み込んでいた。わざわざ念を押すということは、それだけ特別な意味があるのだろう。――一方、入口では。清那と京弥が、まるで棒立ちのようにその場に立ち続けていた。清那はすでに足がしびれてきている。ちらりと隣を見ると、京弥は相変わらず背筋を伸ばして立っている。それを見て、清那もこっそりと姿勢を正した。――ここで負けるわけにはいかない。紗雪を騙していたことへの後ろめたさは、もともと強い。そのうえ今、ここでちゃんと待つことすらできなかったら、あとで京弥に何を言われるか分かったものじゃない。だからこそ、きちんとここで待つ。紗雪の仕事が終わるのを待って、きちんと謝るしかない。一方で、表面上は何事もないように見える京弥だが、内心は落ち着かない。――もし、紗雪が許してくれなかったらどうする?清那という「保険」はあるとはいえ、それはあくまで一時しのぎに過ぎない。これから一緒に生活していく相手は、あくまで紗雪なのだから。そう思うと、手に持った花束を思わず強く握りしめた。このまま何もせず待っているだけではダメだ――そう感じてはいる。だが紗雪には、こちらへ来る気配がまるでない。まるで意図的に、自分の忍耐を削り取ろうとしているかのように。京弥は腕時計に目を落とした。すでに終
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