彼女は手にしたバラを見つめながら、ふと考え込んだ。実のところ、京弥の嘘は、自分にとって大きな実害があったわけではない。ただ、このところの自分の気持ちの整理がついていなかっただけで、それは自分でしっかり調整していくべきことだ。とはいえ、最初から真実を告げずに騙していたのは、やはり京弥の落ち度だ。――ならば、彼がここまで努力して見せようとしているのなら、一度くらいチャンスを与えてもいいのではないか。紗雪は口元を緩め、花を顔の前に掲げて左右に眺める。「そんなにチャンスが欲しいなら......あげてもいいかもね」くすっと笑い、そのまま部屋へ入って身支度を整えに行った。......夜。京弥はそっと自室のドアを開けた。足音を忍ばせ、静かに紗雪がいる部屋の前までやって来る。閉ざされた扉を見つめるその瞳には、どこか執着にも似た色が宿っていた。広い部屋でひとり寝返りを打ち続けても、どうしても眠れない。――やはり、紗雪と一緒にいたあの温もりが恋しくてたまらなかった。彼は予備の鍵を取り出し、あっという間に客間の扉を開ける。わずかな達成感が目に浮かび、そのまま音を立てないように中へ入った。部屋の中は真っ暗だったが、月明かりだけで十分だった。慣れた様子でベッドの位置を確かめ、ゆっくりと近づいていく。できる限り静かにベッドに上がり、まずは端に身を寄せる。そこから少しずつ、少しずつ紗雪の方へと距離を詰めていく。やがて、肌が触れ合う感触を確かめたところで、ぴたりと動きを止めた。緊張で呼吸すら止まりそうになる。体勢を整えると、そっと顔を向け、月明かりの中で紗雪の穏やかな寝顔を見つめた。その瞬間、ようやく心の奥から安堵が広がる。呼吸も自然と落ち着き、鼓動さえ彼女の呼吸のリズムに重なっていく。――同じリズムで、同じ時間を共有している。そうはっきりと感じられた。やがて京弥は、慎重に腕を伸ばし、彼女をそっと抱き寄せる。紗雪は眉をひそめ、小さく不満そうな声を漏らした。その一瞬で、京弥は固まるように動きを止める。だがすぐに、彼女の表情は緩み、そのまま自然に彼の腕の中へと身を預けてきた。まるでその温もりに慣れているかのように、無意識のうちに一番落ち着く位置を探し当てる。その様子に、京
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