京弥の前ではすっかり大人しくなり、それ以上余計なことは言わず、二人の前にも顔を出そうとはしなかった。――自分にはその資格がないと、分かっていたからだ。その一連の様子を見ていた紗雪は、どこか考え込むような表情を浮かべる。京弥は視線を落として彼女を見た。「何考えてる?そんなに真剣な顔して」「京弥って、思ってた以上にすごい人なんだなって」紗雪は素直にそう口にする。「別に大したことじゃない。さっき言ったのも事実だし、ああいう連中とは本当に面識もない」そう言いながら、京弥の瞳にわずかな冷たさが宿る。「それに、誰でも彼でも親戚面して寄ってくるなら、俺の親戚はここから海外まで並ぶことになるな」「なにそれ、自信過剰すぎない?」紗雪はくすっと笑いながら、彼の鼻を軽くつまむ。こんな人目のある場所でも、京弥はまったく気にしない。むしろ彼女のそういう仕草を、恋人同士のささやかな「主張」のように感じていて、嫌どころかむしろ心地よかった。「事実だ」京弥の目はさらに冷ややかになる。「ここに来てる連中の中には、名前すら知らないやつもいる。それでも平気で近づいてくるのは、結局は財産目当てだろ。それ以外に理由なんて思いつかない」紗雪は周囲を見渡した。グラスが行き交い、華やかな装いに身を包んだ人々が談笑している。中には、経済誌で見かけたことのある顔もあった。それでも京弥の前に出れば、誰もが腰を低くしている。――それだけ、この家は桁違いなんだ。しかも、それすら表に出ている一部に過ぎないのだろう。やがて京弥は紗雪の手を引き、会場を横切って両親のもとへ向かった。美千代は紗雪の姿を見た瞬間、ぱっと表情を明るくする。先ほどまでの疲れが嘘のように消え去った。「まあ紗雪、来てくれたのね!」そう言って嬉しそうに歩み寄り、そのまま彼女を強く抱きしめる。「お義母様」紗雪も自然に抱き返した。その光景に、周囲の空気が一瞬で変わる。――今、何て呼んだ?「お義母様」......?ざわめきが広がる。この女は何者だ?美千代とどんな関係なんだ?勘のいい者たちはすぐに思い当たる。――もしかして、京弥とこの女性はもう結婚しているのか?だが、それならなぜ今まで一切の情報が出ていなかったのか。噂
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