Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 311 - Bab 320

366 Bab

2-1 それぞれの対面 1

 13時40分——琢磨は羽田空港のロビーで翔と明日香が現れるのを待っていた。すると人混みに紛れて翔の声が聞こえて来た。「琢磨!」見ると、日香を連れた翔の姿があった。明日香はキャップを被り、ジーンズの短パンをはき、パーカーにショートブーツといういで立ちだ。(なんだ……? 明日香ちゃんのあの格好は? ああ、そうか。記憶が17歳まで後退しているからか……?)すると、翔だけが駆け足で琢磨の元へやって来て耳打ちしてきた。「色々とすまなかった。後でちゃんと話すから。今はとりあえず明日香の話に合わせてやってくれないか?」「? あ、ああ。別に構わないが?」(一体どういう意味なんだ?)琢磨はいぶかしみながらも、とりあえず翔の言う通りにすることにした。そして明日香が琢磨の前にやってきた。「琢磨……?」「ああ、そうだよ。お帰り、明日香ちゃん」すると明日香は眉を顰めた。「琢磨……貴方まで随分更老けてしまったのね……」そしてため息をつく。「え……えええっ!?」(何だ!? 老けたなんて言われたの……初めてだぞ!」助けを求めるかのように翔を見るが、翔は肩をすくめてしまった。そこで気が付いた。(ああ、そうか……。記憶が17歳に戻っているから俺達が老けてしまったように見えるのか。しかしまだ27歳で老けたと言われるとは思いもしなかった)心の中で苦笑する琢磨。しかし明日香は今、心の中は17歳の少女に戻っているのだ。彼女に合わせてやらなければならない。「ああ、老けてしまったかもな。幻滅したか?」琢磨は笑みを浮かべると、何故か明日香は顔を赤らめた。「そ、そんなこと……無いわよ。琢磨は……その、たとえ老けても……やっぱり恰好いいわよ」「え?」その言葉に驚いた。まさか明日香の口からそのような言葉が飛び出て来るとは夢にも思わなかったからだ。いつも2人は顔を合わせれば口喧嘩ばかりで、それを仲裁していたのが翔だったのである。(おい、どういうことだよ!?)琢磨は翔に目でアイコンタクトを取ってみるも、肝心の翔は視線を逸らせて琢磨の顔を見ようともしない。「ねえ。琢磨。どうしたの?」気付けば明日香が琢磨の腕に自分の腕を絡めてきている。今まで明日香にそんなことをされたことは一度も無かったので、琢磨はすっかり面食らってしまった。「明日香ちゃんだよな? 本物の……」
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2-2 それぞれの対面 2

15時半—— 朱莉は1人で羽田空港に姫宮とベビーシッター、そしてこれから一緒に暮らす事になる明日香と翔の生まれたばかりの子供が来るのを待っていた。あの夜の後、翔から新たにメッセージが入って来たのだ。内容は明日香の精神的負担を減らすために子供は違う便で日本へ行かせることになったという内容であった。そして飛行機が到着する時間が15時半となっていたのだ。(翔先輩と久しぶりに会えると思っていたのに……)朱莉は寂しげにスマホを眺めた。早く朱莉に会いたいと翔のメッセージに書かれていたので、朱莉は淡い期待を抱いていた。しかし、結局は帰国して来た翔とは会えないことが分かり、朱莉は気落ちしてしまった。だが……。(駄目駄目、そんなこと考えていたら。これから赤ちゃんと一緒に暮らしていく生活が始まるんだから。今はもう翔先輩のことを忘れて、子育てのことだけを考えていかなくちゃ)その時、不意に声をかけられた。「鳴海朱莉様」顔を上げるとそこには笑みを浮かべた姫宮が立っていた。「あ、こんにちは」朱莉は慌てて頭を下げると姫宮は笑顔になる。「ご無沙汰しておりました。またどうぞこれからもよろしくお願いします。隣にいらっしゃる方はシッターの佐々木様です」そして姫宮は頭を下げると、隣に立つ体格の良い女性を紹介した。彼女はスリングを付け、翔と明日香の子供を抱きかかえていた。「始めまして。臨時に雇われたシッターの佐々木と申します」「佐々木さんですね。こんにちは」「それでは早速ですが、赤ちゃんをもう渡しますね。あ、ちなみに赤ちゃんの名前は蓮君ですから」「え?」あまりの唐突な話に朱莉は驚いた。佐々木はスリングから眠っている蓮を器用に抱き上げると、片手で支えながらスリングを外して、朱莉に手渡した。「使い方はご存知ですか?」「は、はい。何度も練習しましたから」朱莉はスリングを被ると佐々木に尋ねた。「……どうでしょうか?」「ええ、基本の付け方は大丈夫ですね。それでは蓮君を手渡しますよ」「は、はい!」朱莉が手を伸ばすと、佐々木は蓮を朱莉の腕の中へ渡しながら言った。「まだ首が座っていませんから、支えてあげて下さいね」「はい!」朱莉は言われた通り右手で蓮を自分の胸に抱きかかえ、左手で頭を支えた。「それではスリングへ入れてみてください」佐々木に言われて朱莉は頷いた。
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2-3 朱莉の初体験 1

「おい! どういうことだ、翔!」琢磨は病院の中庭で翔に詰め寄っていた。今明日香は入院前検査と言うことで、様々な検査を受ける為に医師と看護師たちの元に預けてある。勿論病院側は明日香が出産して10日しか経過していないことも了承済みだ。車の中で明日香は琢磨の腕に絡みついたまま、片時も離れないし、やけに甘えてばかりだった。一方、翔には見向きもしないので、琢磨は不思議でならなかったのだ。翔は溜息をついた。「分かってるよ。今から話すからまずは落ち着け。言っておくけどな……俺だって辛いんだぞ? もっとも今の俺の気持ちなんかお前には理解出来ないだろうがな」その翔の口ぶりに琢磨は苛ついた。「お前……一体どの口がそんなこと言ってるんだよ! 今迄自分達のことだけを考えて朱莉さんを踏み躙ってきたし、朱莉さんを庇った俺のこともクビにしておきながら、挙句に今更俺を呼び出すし……俺に対する明日香ちゃんのあの態度、明らかにおかしいだろう!?」すると翔は琢磨を睨み付けた。「琢磨……お前、明日香の気持ち気付いていなかったのか?」「? 何のことだよ?」「明日香はな……ずっとお前のことが好きだったんだよ!」「何だって……?」「明日香は中学生の時から琢磨、お前のことがずっと好きだったんだ。お前はそのことに気が付いていなかったのか?」「う、嘘だろう? だって明日香ちゃんはそんな素振りは一度も……」「明日香はプライドが高い女だから自分からお前に告白することが出来なかったんだよ。本当はお前のことが好きでたまらなかったのに、お前はちっともそのことに気が付かないから明日香も意地を張ってお前に反発していたんだ。挙句にお前……高2の終わりに他校の女性と交際し始めたよな?」「……」琢磨は黙ってその話を聞いていた。「それで、明日香はショックを受けて……俺が明日香を慰めている内に……」「お前達は恋人同士になったっていうんだろう?」琢磨は肩をすくめた。「ああ、そうだ。でも今更かもしれないが、そう思っていたのは俺だけだったのかもしれないな。ひょっとすると明日香が今も好きなのは琢磨、お前なんじゃないのか? もしこのまま明日香の記憶が戻らなければ……明日香のことを頼めるか?」翔は悲し気な目で琢磨を見た。「お前……今自分が何を言ってるのか分かっているのか……?」琢磨の声は、震えていた——
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2-4 朱莉の初体験 2

 朱莉はスリングの中にいる蓮を宝物のように抱きしめると、キャリーケースを引きずって駐車場へと向かった。(レンちゃんが起きる前に早く帰らなくちゃ。だからに帰るまで眠っていてね……) 車に着くと後部座席に設置したチャイルドシートに眠っている蓮を降ろし、ベルトで固定すると笑顔で話しかけた。「安全運転で行くからね」朱莉は早く言葉を覚えられるように、沢山話しかけてあげようと思っていた。何より会話に飢えていた朱莉に取って、蓮は格好の話し相手になってくれるに違いないと朱莉は考えていたのだ。**** 無事に駐車場までたどり着くことが出来た朱莉は後部座席に回って蓮の様子を見てみるが、まだチャイルドシートの中で眠っている。このチャイルドシートは着脱式になって降り、持ち手が付いていて運べる仕様になっていた。そこで朱莉はまずキャリーケースを車から降ろし、チャイルドシートを車から外した。そして眠ったままの蓮を乗せたチャイルドシートを持つと、エレベーターホールへ向かった。部屋の階数ボタンを押し、エレベーターに乗り込むと朱莉はチャイルドシートで眠る蓮を見つめる。(本当に何て可愛いんだろう……他の女性が産んだ子供でもこんなに愛おしく感じるのね……)朱莉は今幸せ一杯だった。例え仮初でも一緒に暮らす家族が出来たのだ。蓮には自分の持てる限りの愛情を注いで大切に育てていこうと朱莉は心の中で誓った。 玄関の鍵を開けて、中へ入ると朱莉は早速チャイルドシートを降ろすと、手を洗いに行った。そしてチャイルドシートを覗きこみ、驚いた。何と蓮が目を開けていたのである。「うわあ……おめめ開けたの? でも……確かまだ目は殆ど見えていないんだよね……」すると……徐々に蓮の顔がクシャリと歪み初め……。「ホギャアアアアア……ッ」弱々しい声で泣き始めた。「大変っ!」朱莉は慌てて抱き上げると、横抱きにして頭を支えた。赤ん坊の温かい体温がとても心地よかった。まだ弱々しく泣く蓮に朱莉は気が付いた。「あ! もしかしておむつが汚れているのかな?」朱莉は慎重に蓮を抱きかかえながら、防水シーツを敷いたベビーベッドに寝かせると蓮のおむつが汚れていなか確認してみる。するとやはり既におむつの中は汚れていた。「ごめんね。レンちゃん。すぐにおむつ交換するからね?」朱莉はおむつを取り出し、あらかじめ温めておい
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2-5 朱莉と翔の告白 1

「ねえ。琢磨は帰ったの?」病室のベッドで横になりながら明日香は翔に尋ねた。「ああ、さっき帰ったよ。なぁ、明日香……。まだ信じられないかもしれないが……俺達はもう17歳の高校生じゃない。27歳の大人なんだよ……」翔は明日香のベッドの脇に椅子を持って来ると座った。「ええ。そのようね。日本に帰ってきて、ようやくその実感が持てるようになったけど……でも私には10年分の記憶が無いんだもの。今の状況を受け入れるなんて無理よ……」明日香は目に涙を浮かべる。「明日香……」「琢磨が言ってたわ。私と翔は恋人同士だったって……。その話は本当なの?」「琢磨が……そう言ったのか?」「ええ、そうよ」翔は歯ぎしりした。(くそ……! 琢磨の奴……! あれ程口止めしておいたのに……!)「明日香……俺は……」翔が明日香に手を伸ばした時、その手が振り払われた。「……」「す、すまなかった……勝手に触れようとして」「翔。貴方は私にとって大切な家族であることに変わりないけど、私達は義理の兄と妹なんだから。世間の誤解を招くような真似はしないで」そして明日香は背を向けた。「分かったよ。明日香……」(だが……明日香。俺達はもう手遅れなんだよ……。お前は今は忘れているかもしれないが、俺達は……一線を越えてしまった仲なんだから……っ!)「もう付き添いはいいから帰ってくれる? まだ具合が悪いのよ……。1人にさせて」明日香は背を向けたまま言った。「ああ分かった。帰るよ。又明日来るから」翔は力なく立ち上がると病室を出て行った――****21過ぎ——お風呂から上がった朱莉は、部屋着に着替えると蓮の授乳とおむつを交換して寝かせつけた時——――ピンポーン突然、玄関のインターホンが鳴った。「え? だ、誰かしら……?」朱莉は突然の出来事に心臓が止まりそうになった。今迄一度も何の前触れもなくインターホンが鳴ったことは無かったので無理も無い。おそるおそる玄関のモニターを確認し、さらに朱莉は驚いた。何とそこに立っていたのは翔だったのである。「翔先輩!?」朱莉が慌ててドアを開けると、そこには赤い顔をした翔が立っていた。「やあ、こんばんは。朱莉さん……」翔はいつもとは全く様子が違っていた。いつも整えていた髪は乱れ、身体からはアルコール臭がする。「一体どうしたんですか!?」
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2-6 朱莉と翔の告白 2

「え? 翔さん。初めてって……本当ですか!?」すると朱莉に背を向けたまま翔は答えた。「ああ、そうだよ……。明日香はね……酷い難産で出産するまでにかなり時間がかかったんだ……。そのためかな? 過呼吸を起こして意識を失って、次に目を覚ました時には10年分の記憶が無くなっていて……。とてもゆっくり蓮を見ている余裕は無かったんだよ……」ベビーベッドに縋りつくように背を向けて語る翔は身体が震えていた。まるで泣いているように……。「朱莉さん……」翔は背を向けたまま朱莉に声をかけた。「はい。何でしょう?」「蓮に……触れてみてもいいかな…?」躊躇いがちに朱莉に尋ねてくる。「翔さんと明日香さんのお子さんですよ? 私に尋ねなくてもどうぞ触れて下さい。ただ……今は眠ってるので、出来ればそっと優しく触れてあげて下さい」「分かった……」翔は震える手でそっと蓮の頬に触れた。「温かいな……それに柔らかくて……甘い香りもする」「それはミルクの香りかもしれませんね」「……ありがとう、朱莉さん。こんなに……蓮に良くしてくれて……」翔は部屋を見渡した。ベビーグッズで溢れかえるリビング。蓮の着ているベビー服も可愛らしく、着心地もよさそうな手触りで、部屋には静かなオルゴールの音楽が流れている。「やっぱり朱莉さんを選んで正解だったかな……。琢磨の奴には散々……文句を言われたけど……」「翔さん……」「本当に……すまないことをしてると思ってる。だから……ばちが当たったんだろうな」朱莉は翔の言葉に首を傾げた。「バチ……ですか?」「ああ……そうだよ」翔は未だに蓮の頬触れれながら独り言のように呟いた。「俺が……酷い男だから……きっとバチが当たったんだ……」そこで初めて翔は朱莉のほうを振り向いた。「明日香はね、10年前は俺では無く、琢磨のことが好きだったんだよ」「え……?」朱莉は耳を疑った。「そ、それじゃ……明日香さんは……?」朱莉は声を震わせて尋ねた。「明日香は……今はもう琢磨に夢中になっている。俺達が恋人同士って事も忘れているし……ましてや子供を産んだことなんて信じようともしないんだ。……尤も自分の身体に起きた異変について戸惑っているけどね。産後の女性には……何かと身体に変化が起こるだろう?」「その話……ほ、本当なんですか? それで九条さんは?」「琢
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2-7 心の変化 1

 翔は小さな鳴き声の気配で目が覚めた。見ると主寝室からオレンジ色の明かりが隙間から漏れている。「ここは……?」翔は今迄自分が見知らぬソファの上で眠っていたことに気が付いた。身体の上には布団がかぶせられていた。時計の針は2時を少し過ぎている。まだぼんやりとした頭で起き上がると、突然主寝室のドアが開き、中から朱莉が蓮を抱きかかえて現れた。「あ……。す、すみません。起こしてしまいましたか?」朱莉は慌てて頭を下げた。腕の中には蓮が小さな鳴き声を上げている。「そうか……ここは朱莉さんの部屋だったのか……」翔は頭を押さえるとソファから起き上がった。「蓮……起きたのかい?」「はい。今おむつを替えた所です。これからミルクを作る所なのですが……」朱莉はチラリと翔を見た。「何? 朱莉さん」「い、いえ。どうぞそのままお休みになって下さい。あ……それともご自宅へ戻られますか?」「いや……。朱莉さんはこれから蓮のミルクを作るんだろう? 俺がその間蓮を見ているよ。それで……どうやって抱けばいい?」翔は恥ずかしそうに朱莉に尋ねた。「え……? いいんですか?」「いいもなにも元々は俺の子供なんだ。本来は俺が面倒を見なければいけないんじゃないかな?」翔は苦笑した。それを見て朱莉も笑みを浮かべる。「すみません。それでは蓮君をお願いします」そして朱莉は翔に首の未だ座らない蓮の抱き方を教えた。「そう、そうです。胸に抱き寄せるようにして、首の後ろを支えてあげて……」「こ、こうかい?」ぎこちない抱き方をしながら翔は朱莉に尋ねた。「はい、大丈夫です。お上手です。それでは5分程お願い出来ますか?」朱莉は言うと、手早くミルクを作り始めた。翔はその間腕の中で泣く蓮を見て思った。(本当に……こんなに小さくて温かくて可愛らしい子供を俺と明日香は平気で手放して、朱莉さんに押し付けようとしていたなんて……我ながら何て馬鹿な真似をしていたんだろう……)そして翔はミルクの準備をしている朱莉を見た。真夜中で眠いだろうに、笑顔で楽しそうにミルクを作っている朱莉を見ていると、心が温まる気がしてきた。(そうか……だから琢磨は朱莉さんに惹かれたのか……。今なら何となくその気持ち分かる気がするな。本当に今迄俺は一体何を見てきたんだろう……?)その時、朱莉が哺乳瓶を持って翔の所へやって来
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-03
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2-8 心の変化 2

「ああ……まだ少しミルクが残ってるのに……」翔がため息をつくと朱莉は笑った。「きっと今に足りないって泣く日が来ますよ」「そうだな。それじゃ朱莉さん。俺は自分の部屋に帰るから蓮の事を頼む」翔は朱莉に蓮を手渡すと、朱莉は胸に抱きかかえた。翔は立ち上がると玄関へ向かった。「あの……朱莉さん」翔は玄関で靴を履くと背中を見せたまま朱莉に声をかけた。「また蓮の様子を見に来てもいいかな?」そして振り返って朱莉を見た。その顔は赤くなっており、今迄一度も見たことが無いような少年のような照れた顔をしていた。「!」朱莉は初めて見せる翔の顔に驚きつつも、笑顔で答えた。「はい。蓮君は翔さんのお子さんで、ここは翔さんの家です。いつでもいらして下さい」そして朱莉は頭を下げた。「ありがとう、お休み」翔はドアを開けて、出て行った。「翔先輩……」朱莉は呟くと腕の中で眠る蓮を愛おし気に見つめると呟いた。「良かったね。レンちゃん。パパが会いに来てくれたよ」この時の朱莉は、自分の心に芽生えた変化に気付いてはいなかった……。****――5時「ふわああ……」欠伸を噛み殺しながら、朱莉は腕の中で泣く蓮を抱きながらお湯を沸かしていた。「ごめんね。レンちゃん。今ミルク作ってるからもう少し待っててね」やがてお湯が沸いたので朱莉は電動バウンサーに寝かせた。これは新生児からも使用できるバウンサーで、お店に行って吟味して買って来たのである。泣いている蓮をそこに移動させ、スイッチを入れるとまるでゆりかごの様に自動で揺れ出す。すると蓮の泣き声が止まった。「レンちゃん、バウンサー気に入ったのかな? さて、今の内にミルク作らなくちゃ」 ミルクを作り終えた朱莉は蓮をバウンサーから抱き上げると哺乳瓶を咥えさせる。すると蓮はすぐに哺乳瓶に吸い付いて、ミルクを飲み始めた。「フフフ……余程お腹が空いていたのかな? 本当に何て可愛いんだろう……」朱莉は幸せな気持ちでミルクを上げながら欠伸を噛み殺した。「だけど新生児ってすぐに目を覚ますなんて……。確かネットで調べたら3〜4カ月頃になれば昼夜の区別がつく……なんて書いてあったけど……」うつらうつらしながら朱莉は呟いた。そして蓮を見るといつの間にミルクを飲み終えていて眠りについている。「あ。眠っていたんだ……。さて、それじゃレンちゃん。
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2-9 それぞれの現状 1

 翔と明日香、蓮が日本に戻ってきて、早いもので5日が経過していた。 明日香の方は一向に記憶が回復する傾向は無かったが、徐々に産後の体調不良が回復しつつあった。勿論明日香自身は自分が出産したことを覚えていない。夫人かの主治医の話によると、理由の分からない身体の不調が収まって来たお陰で、大分明日香の精神状態は安定しているようですと婦人科の主治医から翔の元に報告が上がってきていた。明日香の今後の処遇について困り果てていた翔は、精神科の主治医との相談の上、神奈川にある自然にあふれた場所に建てられた温泉付き精神療養病棟に明日香を一カ月程入院させて様子を見ることに決めたのだ。てっきり翔と姫宮は明日香が療養病棟に入院することを拒むのでは無いかと思ったのだが、明日香自身も10年分の記憶を失っていることで世間とのギャップに困っていた為、入院治療を承諾したのであった—— 一方の朱莉の方でも、困った事態に陥っていた。それは漣がいる為に、母の面会に行けなくなってしまったことである。まだ生後3週間も経過していない蓮を病院に連れて行くわけにはいかないし、それ以前に朱莉は蓮の存在を母には一切説明していないのである。きっと母が真実を知れば心を痛めるだろうし、ショックで心臓に負担がかかってしまうかもしれない。そう思った朱莉は翔と明日香の子供……蓮については一生母には言うまいと心に決めていたのだった。そして面会に行くことが出来ない言い訳の為に、時間を持て余してしまっているので仕事を始めたと嘘をついていたのだが、やはり朱莉に取っては大切な母である。面会には行きたい。だが……。「お母さんに嘘をつくのは悪いわ……」 翔の方は忙しいのか、あの夜以来尋ねてくる事が無かった。「もう、こうなったら翔先輩に正直に話して1時間だけでもレンちゃんをお願いするしかないかも……」朱莉はベビーベッドでスヤスヤと眠っている蓮をみつめながらため息をつき、スマホを手に取った。**** その頃、翔はオフィスで仕事をしていた。秘書の姫宮は総務課に用事があって席を外していた。その時である。突如として翔のスマホに着信を知らせるメッセージが入って来た。相手は朱莉からである。「朱莉さん……? 一体どうしたというんだろう? ひょっとすると蓮のことで何かあったのか?」翔はスマホをタップしてメッセージを表示させた。
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2-10 それぞれの現状 2

――18時 会社を出た翔は車内にある地下駐車場へ向かいながら、スマホの電源を入れて驚いた。何と10件以上、琢磨から電話がかかってきていたのである。午後からは大事な社内会議があり、その会議は17時まで行われていたのだ。その為、翔はスマホの電源を今まで切っていたのだが……。「あいつだって社長と言う立場で多忙なくせによくもこんなに何度も俺に電話を入れてきたな……」独り言のように呟きながら、翔は一度スマホをポケットに入れた。そして駐車場へ着くと車に乗り込み、琢磨に電話を掛けた。「この時間は忙しいかもしれないな……」恐らく琢磨は電話に出ないだろう、だから留守電にでもメッセージを残しておこうと翔は思っていたのだが、何コール目かの呼び出し音の後、受話器越しから突然琢磨の声が聞こえてきた。『もしもし、翔だな!?』受話器越しから聞こえてきた琢磨の声は苛立ちと怒りが込められている。「何だよ、琢磨。電話に出た早々……やけに機嫌が悪そうだな? 何かあったのか?」琢磨は翔の物言いが気に入らなかったのか、より一層声を荒げた声が聞こえてきた。『機嫌が悪そう? 当然じゃないか! 毎日毎日、どれだけ明日香ちゃんから俺のところに連絡が来ているか知ってるのか? メールも電話も毎日10回以上来るんだぞ!? こっちは幾ら仕事が忙しいって言っても、全然信じようとはしないし!』「そ、そうなのか……? 全く知らなかったよ」翔は返事をしながら、心ならず傷付いていた。(俺には一度も電話どころかメッセージすら送って来ないのに、琢磨の所にはそんなに連絡を入れていたのか……)『おい? 聞いてるのか? 翔!』受話器越しの琢磨の声はますます苛立ちが募っている。「勿論聞いてるさ。それで、明日香はなんて言ってきてるんだ?」『ああ。それが……』そこまで言いかけて、不意に琢磨が溜息をついた。「どうした?」『会社から電話が入った。悪いが一度切らせてもらうが……後で絶対に連絡を入れるからな!?』それだけ言い残すと電話は切れた。「全く……琢磨は何故あんなにイライラしているんだ?」翔は首を傾げながらシートベルトを締めるとエンジンを掛け、アクセルを踏んだ。(取りあえずデパートのベビー用品売り場に行ってみるか。どんなおもちゃを買って行ってやろうかな……)先程、明日香が自分には全く連絡を寄こさない
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