Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 301 - Bab 310

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1-17 雨の中の再会 1

 14時―― 朱莉がエントランス前に行くと、すでに琢磨が億ションの前に車を停めて待っていた。「お待たせしてすみません。九条さん、もういらしてたんですね」朱莉は慌てて頭を下げた。「いや、そんなことはないよ。だってまだ約束時間の5分以上前だからね」琢磨は笑顔で答えた。本当はまた今日も朱莉に会えるのが嬉しくて、今から15分以上も前にここに到着していたことは朱莉には内緒である。「それじゃ、乗って。朱莉さん」琢磨は助手席のドアを開けた。「はい、ありがとうございます」朱莉が助手席に座ると、琢磨も乗り込んだ。シートベルトを締めてハンドルを握ると早速朱莉に尋ねた。「朱莉さんは何処へ行こうとしていたんだっけ?」「はい。赤ちゃんの為に何か素敵なCDでも買いに行こうと思っていたんです。それとまだ買い足したいベビー用品もあるんです」「よし、それじゃ大型店舗のある店へ行ってみよう」「はい、お願いします」琢磨はアクセルを踏んだ――**** それから約3時間後――朱莉の買い物全てが終了し、車に荷物を積み込んだ2人はカフェでコーヒーを飲みに来ていた。「思った以上に買い物に時間がかかってしまったね」「すみません。九条さん……私のせいで」朱莉が申し訳なさそうに頭を下げた。「い、いや。そう意味で言ったんじゃないんだ。まさか粉ミルクだけでもあんなに色々な種類があるとは思わなかったんだよ」「本当ですね。取りあえず、どんなのが良いか分からなくて何種類も買ってしまいましたけど口に合う、合わないってあるんでしょうかね?」「う~ん……どうなんだろう。俺にはさっぱり分からないなあ……」琢磨は珈琲を口にした。「そう言えば、すっかり忘れていましたけど、九条さんの会社はインターネット通販会社でしたね?」「い、いや。俺の会社と言われると少し御幣を感じるけど……まあそうだね」「当然ベビー用品も扱っていますよね?」「うん、そうだね」「それでは今度からはベビー用品は九条さんの会社で利用させていただきます」「ありがとう。確かに新生児がいると母親は買い物も中々自由に行く事が難しいかもね。……よし、今度の企画会議でベビー用品のコンテンツをもっと広げるように提案してみるか……」琢磨は仕事モードの顔に変わる。「ついでに赤ちゃん用の音楽CDもあるといいですね。出来れば視聴も試せ
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1-18 雨の中の再会 2

 琢磨に礼を言われ、朱莉は恐縮した。「い、いえ。お礼を言われるほどのことはしていませんから」「朱莉さん、そろそろ17時になる。折角だから何処かで食事でもして帰らないかい?」「あ、それならもし九条さんさえよろしければ、うちに来ませんか? あまり大した食事はご用意出来ないかもしれませんが、なにか作りますよ?」朱莉の提案に琢磨は目を輝かせた。「え?いいのかい?」「はい、勿論です。あ……でもそれだと九条さんの相手の女性の方に悪いかもしれませんね……」「え?」その言葉に、一瞬琢磨は固まる。(い、今……朱莉さん何て言ったんだ……?)「朱莉さん……ひょっとして俺に彼女でもいると思ってるのかい?」琢磨はコーヒーカップを置いた。「え? いらっしゃらないんですか?」朱莉は不思議そうに首を傾げた。「い、いや。普通に考えてみれば彼女がいる男が別の女性を食事に誘ったり、こうして買い物について来るような真似はしないと思わないかい?」「言われてみれば確かにそうですね。変なことを言ってすみませんでした」朱莉が照れたように謝るので琢磨は真剣な顔で尋ねた。「朱莉さん、何故俺に彼女がいると思ったの?」「え? それは九条さんが素敵な男性だからです。普通誰でも恋人がいると思うのでは無いですか?」「あ、朱莉さん……」(そんな風に言ってくれるってことは……朱莉さんも俺のことをそう言う目で見てくれているってことなんだよな? だが……これは喜ぶべきことなのだろうか……?)琢磨は複雑な心境でカフェ・ラテを飲む朱莉を見つめた。すると琢磨の視線に気づく朱莉。「九条さんは何か好き嫌いとかはありますか?」「いや、俺は好き嫌いは無いよ。何でも食べるから大丈夫だよ」それを聞いた朱莉は嬉しそうに笑った。「九条さんも好き嫌い無いんですね。航君みたい……」その名前を琢磨は聞き逃さなかった。「航君?」「あ、いけない! すみません、九条さん、変なことを言ってしまいました。そ、それじゃもう行きませんか?」朱莉は慌てて、まるで胡麻化すように席を立ちあがった。「あ、ああ。そうだね。行こうか?」琢磨も何事も無かったかの様に立ち上がったが、心は穏やかでは無かった。(航君……? 一体誰のことなんだろう? まさかその人物が朱莉さんと沖縄で同居していた男なのか?それにしても君付けで呼ぶなん
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1-19 翔の隠し事 1

 アメリカ—— 明日いよいよ翔たちは日本へ帰国する。翔は自分が滞在しているホテルに明日香を連れ帰り、荷造りの準備をしていた。その一方、未だに自分が27歳の女性だと言うことを信用しない明日香は鏡の前に座り、イライラしながら自分の顔を眺めている。「全く……どういうことなの? こんなに自分の顔が老けてしまったなんて……」それを聞いた翔は声をかける。「何言ってるんだ、明日香。お前はちっとも老けていないよ。いつもどおりに綺麗な明日香だ」すると……。「ちょっと! 何言ってるのよ、翔! 自分迄老け込んで、とうとう頭もやられてしまったんじゃないの? 今迄そんなこと私に言ったこと無かったじゃない。大体おかしいわよ? 私が病院で目を覚ました時から妙にベタベタしてくるし……気味が悪いわ。もしかして私に気があるの? 言っておくけど仮にも血が繋がらなくたって私と翔は兄と妹って立場なんだから! 私に対して変な気を絶対に起こさないでね!?」明日香は自分の身体を守るように抱きかかえ、翔を睨み付けた。「あ、ああ。勿論だ、明日香。俺とお前は兄と妹なんだから……そんなことあるはず無いだろう?」苦笑する翔。「ふ~ん……翔の言葉、信用してもいいのね?」「ああ、勿論さ」「だったらこの部屋は私1人で借りるからね! 翔は別の部屋を借りてきてちょうだい。 あ、でも姫宮さんは別にいて貰っても構わないけど?」明日香は部屋で書類を眺めていた姫宮に声をかける。「はい、ありがとうございます」姫宮は明日香に丁寧に挨拶をした。「それでは翔さん、別の部屋の宿泊手続きを取りにフロントへ御一緒させていただきます。明日香さん。明日は日本へ帰国されるので今はお身体をお安め下さい」姫宮は一礼すると、翔に声をかけた。「それでは参りましょう。翔さん」「あ、ああ。そうだな。それじゃ明日香、まだ本調子じゃないんだからゆっくり休んでるんだぞ?」部屋を出る際に翔は明日香に声をかけた。「大丈夫、分かってるわよ。自分でも何だかおかしいと思ってるのよ。急に老け込んでしまったし……大体私は何で病院にいたの? 交通事故? それとも大病? そうでなければ身体があんな風になるはず無いもの……」明日香は頭を押さえながらブツブツ呟く「ならベッドで横になっていた方がいいな」「そうね……。そうさせて貰うわ」返事をすると
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1-20 翔の隠し事 2

「翔さん、落ち着いて下さい。医者の話では出産と過呼吸のショックで一時的に記憶が抜け落ちただけかもしれないと言っていたではありませんか。それに対処法としてむやみに記憶を呼び起こそうとする行為もしてはいけないと言われましたよね?」「ああ……だから俺は何も言わず我慢しているんだ……」「翔さん。取りあえず今は待つしかありません。時がやがて解決へ導いてくれる事を信じるしかありません」やがて、2人は一つの部屋の前で足を止めた。この部屋に明日香の目を胡麻化す為に臨時で雇った蓮の母親役の日本人女子大生と、日本人ベビーシッター。そして生れて間もない蓮が宿泊している。 翔は深呼吸すると、部屋のドアをノックした。すると、程なくしてドアが開かれ、ベビーシッターの女性が現れた。「鳴海様、お待ちしておりました」「蓮の様子はどうだい?」「良くお休みになられていますよ。どうぞ中へお入りください」促されて翔と姫宮は部屋の中へ入ると、そこには翔が雇った蓮の母親役の女子大生がいない。「ん? 例の女子大生は何処へ行ったんだ?」するとシッターの女性が説明した。「彼女は買い物へ行きましたよ。アメリカ土産を持って東京へ戻ると言って、買い物に出かけられました。それにしても随分派手な母親役を選びましたね?」「仕方なかったのです。急な話でしたから。それより蓮君はどちらにいるのですか?」姫宮はシッターの女性の言葉を気にもせず、尋ねた。「ええ。こちらで良く眠っておられますよ」案内されたベビーベッドには生後9日目の新生児が眠っている。「まあ……何て可愛いのでしょう」姫宮は頬を染めて蓮を見つめている。「あ、ああ……。確かに可愛いな……」翔は蓮を見ながら思った。(目元と口元は特に明日香に似ているな)「残念だったよ、起きていれば抱き上げることが出来たんだけどな。帰国するともうそれもかなわなくなる」すると姫宮が言った。「いえ、そんなことはありません。帰国した後は朱莉さんの元へ会いに行けばいいのですから」「え? 姫宮さん?」翔が怪訝そうな顔を見せると、姫宮は、一種焦った顔をみせた。「いえ、何でもありません。今の話は忘れてください」「あ、ああ……。それじゃ蓮の事をよろしく頼む」翔がシッターの女性に言うと、彼女は驚いた顔を見せた。「え? もう行かれるのですか?」「ああ。実はこ
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1-21 一種即発 1

 琢磨は雨に打たれながら、朱莉と航が抱き合ている姿を呆然と見ていた。(誰なんだ……? あの男……航君と呼んでいたけど、まさか朱莉さんが沖縄で同居していた男なのか?)気付けば琢磨は歯を食いしばり、両手を強く握りしめていた。そして一度自分を落ち着かせる為に深呼吸すると、2人に近寄って声をかけた。「朱莉さん。その人は誰だい?」すると、その時航は初めて朱莉から離れて顔を上げ、琢磨の顔を見ると表情を変えた。「あ……あんたは九条琢磨……」(何? この男は俺のことを知っているのか?)そこで琢磨は尋ねた。「君は何故俺のことを知っているんだい?」すると航は言った。「そんなのは当たり前だろう? 自分がどれだけ有名人か分かっていないのか? 元鳴海グループの副社長の秘書。そして今は【ラージウェアハウス】の若き社長だからな」「そうか……。それで君は?」琢磨はイラついた様子で航を見た。航は先ほどからピタリと朱莉に張り付いて離れない。それがどうにも気に入らなかった。「あの、九条さん。彼は……」朱莉は琢磨のいつもとは違う様子に気付き、口を開きかけた所を航が止めた。「いいよ、朱莉。俺から自己紹介するから」その言葉を聞き、琢磨は眉が上がった。(朱莉……? 朱莉さんのことを呼び捨てにしているのか!? どう見ても朱莉さんよりは年下に見えるこの男は……)「俺は安西航。仕事で沖縄へ行った時に朱莉と知り合って1週間程あのマンションで同居させて貰っていたんだ。貴方ですよね? 朱莉の為にあのマンションを選んでくれたのは。2LDKだったからお陰で助かりましたよ」何処か挑発的に言う航。腹の中は怒りで煮えたぎっていた。(くそ……っ! この男が朱莉を鳴海翔に紹介しなければ朱莉はこんな目に遭う事は無かったのに……! それにしても悔しいが、顔は確かにいいな……)琢磨は何故航がこれ程自分を睨み付けているのか見当がつかなかった。(ひょっとしてこの男は朱莉さんのことが好きだから俺を目の敵にしてるのか?)一方、困ってしまったのは朱莉の方だ。まさか今迄音信不通だった航が突然自分の住んでいる億ションに現れるとは夢にも思っていなかったからだ。航とは話がしたいと思っていたので朱莉は提案した。「あの……取りあえず中へ入りませんか? 食事を用意するので」すると航は笑顔になった。「いいのか? 朱
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1-22 一種即発 2

 航と琢磨は互いにエントランスで睨み合っていた。朱莉の姿がいなくなると最初に口を開いたのは琢磨の方だった。「名前は聞かされていなかったけど君なんだろう? 興信所の調査員で、仕事の為に沖縄に来て朱莉さんと知り合って、同居していたって言うのは」「ああ、そうさ。朱莉、あんたに俺のこと話していたんだな?」航はニヤリと笑った。「どうやらお前は相当口が悪いみたいだな? だったらこちらも遠慮するのはもうやめるか」「へえ? あんたは京極とはタイプが違うんだな?」「何? 京極のことを知ってるのか?」「その反応からするとあんたも京極のことを良くは思っていないようだな?」琢磨は航の口ぶりから警戒心をあらわにした。「お前一体どこまで知ってるんだ? 興信所の調査員だって言ってたな? ひょっとして朱莉さんと知り合ったのも俺達絡みの件でか?」「へえ? その口ぶりだと心当たりがありそうだな? だが俺がそんなこと話すと思うのか? 仮にも俺は調査員だからな」航は挑発をやめない。そもそも朱莉と翔の偽装結婚のきっかけを作った琢磨が憎くて堪らなかった。(九条の奴が朱莉をあんな奴に紹介さえしなければ……)そう思うと琢磨に対する怒りがどうにも抑えられない。琢磨も初めの内は何故自分が航から敵意のこもった目で睨まれるのか見当がつかなかったが、調査員と言うことを考えれば、今迄の経緯を全て知ってるかもしれないと気付いた。(ここで話をするのはまずいな……)「おい、どうした? 急に黙って」航は怪訝そうな顔を見せた。「取りあえず……ここで話をするのは色々とまずい」「あ、ああ。言われてみればそうだな」航も辺りを見渡しながら、京極に言われた言葉を思い出した。「あまり遅くなると朱莉さんが心配する。取りあえず話は後にしよう。もし時間があるなら朱莉さんの手料理を食べた後場所を変えて話をしないか?」琢磨は航に提案した。「ああ。それでいいぜ。あんたには言いたいことが山ほどあるからな」航の言葉に、琢磨は不敵な笑みを浮かべる。「ふ~ん。どんな話が聞けるかそれは楽しみだ」そして2人の男は互いを見つめ……「「取りあえず荷物を降ろすか」」声を揃えた――****「航君と九条さん、遅いな……」料理を作りながら朱莉はソワソワしていた。「喧嘩とかしていたらどうしよう……。迎えに行ってみよう
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1-23 けん制し合う2人 1

 今、3人で囲んだ食卓は一種異様な緊張感が漂っていた。航も琢磨も互いをけん制し合うように睨み合っているのを前に、朱莉はどうしたら良いか分からなかった。(困ったな……。どうしてこんなことになってしまったんだろう? 航君も九条さんも何だかいつもと雰囲気が違うし……)朱莉は翔のことしか目に入っていないので、自分が原因で2人が険悪な雰囲気に陥っていることに全く気が付いていなかったのだ。「あ、あの……。今夜は少し冷えるのでブイヤベースを作ってみたのですが……。2人供食べれます……か?」恐る恐る朱莉は尋ねる。「ああ、食べるに決まってるだろう? 俺は好き嫌いは何も無いし、朱莉の作った食事なら何でも食べるぞ?」航が笑顔で朱莉に言う。「朱莉さん。俺も好き嫌いは何も無いから大丈夫だよ。朱莉さんの作った食事、とても楽しみだよ」琢磨も満面の笑顔で言うと、琢磨と航は互いをジロリと睨み合った。「あ、あの……そ、それでは今出しますね……」すると航が立ち上った。「朱莉、手伝うぞ? 何をしたらいい?」「ありがとう、航君。それじゃ食器を出してくれる?」朱莉は笑顔で航に言うのを琢磨は面白くなさそうに見ている。航は朱莉に礼を言われると、これ見よがしにチラリと琢磨を見た。(どうだ? 九条。俺は1週間近く朱莉と同居していたから息がぴったりなんだよ)一方の琢磨は航の行動をイライラしながら見ている。(何なんだ……? あいつは! 京極とはまた違った意味で人をイラつかせる男だ……!)やがてテーブルの上にはブイヤベース、さまざまな具材が乗ったバゲット、アボガドとエビのカクテルサラダが並べられた。「へえ~。美味しそうだ。流石だね、朱莉さん。色とりどりで見た目も華やかでとても素敵だよ。写真を撮ったらSNS映えしそうだね」琢磨の言葉に朱莉は頬を染めた。「あ、ありがとうございます……九条さん」そしてそんな様子を面白く無さげに見る航。(どうだ? お前も何か気の利いたセリフの1つでも言ってみろよ)琢磨は自分でも大人げないとは思いつつ、挑戦的な目で航を見た。「あ、朱莉!」航は朱莉を大きな声で呼ぶ。「な、何? 航君」「全部うまそうだ! いや、美味いにきまってる!」「びっくりした〜突然大きな声を出すから。それじゃどうぞ。食べてみて下さい」「ああ、いただこうかな?」言いながら
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1-24 けん制し合う2人 2

「それじゃあ、朱莉さん。また明日」琢磨は靴を履くと朱莉を振り返った。「はい。又明日……」「朱莉、それじゃあな」航は朱莉の頭を撫でた。「うん、又ね?」それを見た琢磨は航を咎める。「安西君。年上の女性に頭を撫でるなんて失礼だと思わないのか?」「いや別に。俺に頭撫でられるの、朱莉はいやか?」「え……? 全然いやじゃないけど?」朱莉が首を傾げて返事をし、航は勝ち誇った顔で琢磨を見る。「ほら、見ろ。朱莉は嫌じゃないってよ?」「……っ!」琢磨は悔しそうに航を見つめ……促した。「よし、それじゃ……行くぞ?」「ああ、いいぜ」どことなく喧嘩腰の2人を見て朱莉は流石に心配になってきた。「あの……」「「何?」」2人が同時に朱莉を見た。彼らの間に異常な緊張感を感じた朱莉は自分の伝えたい気持ちを言葉にすることが出来ない。「い、いえ。それじゃ……おやすみなさい」「ああ、お休み朱莉。ちゃんと戸締りして寝るんだぞ?」何処までも航が朱莉の彼氏の様に振舞う姿が琢磨には我慢できなかった。料理が「朱莉さん。今度は俺が手料理を振舞うよ。こう見えて俺は意外と料理が得意なんだ」本当は包丁すら握ったことが無いのに、琢磨はつい口から出まかせを言ってしまった。すると航も口を挟んできた。「朱莉! 俺も今度はお前の為に料理を作るからな!? 楽しみにしてろよ!」そしてじろりと琢磨を睨み付ける。「あ、ありがとうございます……」朱莉は航と琢磨の雰囲気に押されながら礼を述べた。「じゃあな、朱莉」「またね、朱莉さん」扉を開けて出ていく航と琢磨。—―バタン……玄関のドアが閉められた。「つ、疲れた…」ようやく朱莉は安堵の溜息をつき、その場に座り込んだ——****「「……」」琢磨と航は無言でエレベータの隅に立ち、互いをけん制し合っていた。やがてエレベーターが1階に着いたので、2人は無言で降りると琢磨が口を開いた。「取りあえず俺の車の中で話をしようか」「ああ、いいぜ」「それじゃ待ってろ。今車を前に持って来るから」琢磨はぶっきらぼうに言うと、駐車場へ車を取りに行った。そんな琢磨の背中を見ながら航は呟いた。「全く……あの九条って男は俺の想像していたタイプとは大分違ったな。でもある意味、京極よりは分かりやすいだけマシか……。あいつの方がたちが悪そうだもんな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-01
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1-25 雨降る夜の車内で 1

「お、おい! 苦しいから放せよ!」航の言葉にハッとした琢磨は手を離した。「悪かったな……つい……」「お前、冷静に振舞えるタイプかと思っていたけど、意外とそうじゃ無かったんだな? いや、それとも朱莉が絡んでいるからなのか?」「何が言いたい?」琢磨はジロリと航を睨み付けた。「お前、朱莉が好きなんだろう?」「そう言うお前だって朱莉さんが好きなんだろう? 誰が見てもすぐに分かる行動ばかり取っているぞ?まあ肝心な朱莉さんはそのことに気付いていないようだけどな? こう言ってはなんだが2人の関係は姉弟のように見えるぞ?」「……」すると航は琢磨の言葉に黙ってしまった。「何だ? 図星か?」「ああそうだよ! 悪いか!? 俺は確かに朱莉が好きだ! だが朱莉は俺を弟の様にしか見てないってことも分かってる! 第一朱莉が好きな男はあいつ……鳴海翔だからな! 全く……あんなクズ男の何処がいいんだよ!」航が悔しそうに言うのを琢磨は黙って見ていた。車内には暫く沈黙が下りたが……やがて琢磨は口を開いた。「ああ。確かに翔はお前の言う通りクズ人間かもしれないな。だけど、それでも朱莉さんにとっては初恋の相手で、今も好きな相手だ」そして溜息をついた。「俺は翔を朱莉さんに紹介した最低な男だ。せめて朱莉さんを人並みに扱ってくれればいいのにあいつは……。それに今回だって……」「おい、だから鳴海翔はお前に何て言ってきたんだよ!?」「何故、それをお前に教えなくちゃならないんだ? 関係無いだろう? 所詮お前は部外者なんだから」琢磨は心底機嫌が悪そうにイライラしながら航を睨み付けた。「煩い! 何ならお前が朱莉のことどう思っているのか言ってやるぞ? それでも構わないのか?」航の言葉に琢磨は焦った。「何だって!? 俺を脅迫する気か!?」「お前が朱莉を好きで、告白したくても出来ないってこと位分かってるさ。どうせ断られるに決まってるし、そうなったらもう二度と朱莉の前に姿を現すことが出来なくなるかもしれないからな?」「そういうお前は…どうなんだよ?」「俺か? 俺はな……朱莉の契約婚が終了したら、自分の思いを告げるつもりさ。もっともその前に朱莉が別の誰かを好きになってしまったら諦めるつもりだけどな」航は目を伏せた。「何せ……朱莉を狙ってるのは……多分京極も同じだからな」「京極……
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-02
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1-26 雨降る夜の車内で 2

「大体お前が今日朱莉さんの前に姿を現すなんてタイミングが良すぎる。ひょっとして明日から朱莉さんが子育てを始めるのが分かっていたから、今日ここに現れたんだろう? 誰にこの話を聞いた? 答えろ。答えないのであれば今すぐこの車から降りて家に帰れ」琢磨はハンドルにもたれかかりながら航を見た。すると航は溜息をついた。「まあ……別に口止めをされている訳じゃないからな……。京極だよ。あいつから明日、出産した明日香が帰国するって話を聞かされたんだよ」航の話に琢磨は眉をしかめた。「京極? 何であいつがそんな話を知ってるんだ?」「そんなことは知るかよ。第一、余計な詮索はしない条件で昨日突然京極から電話が入ってきたんだからな」航はそう答えつつ、内心は情報の出所には見当がついていた。(恐らく今の鳴海翔の秘書……姫宮静香が京極に伝えたんだろうな。だが、あの2人は一体どういう関係があるんだ……京極には余計な詮索はするなともう釘を刺されているし……)そして何やら考え込んでいる琢磨をチラリと見た。(恐らく……この男も何も分かっていないんだろうな……)「おい、説明したんだから今度はお前が約束通り話す番だ。一体鳴海翔はお前に何て言ってきたんだよ」「明日……明日香ちゃんと翔が帰国してくるんだが、子供と秘書にベビーシッターだけは別の便に乗って来ることになったらしいんだ……」「何だって!? あいつら正気なのか!? 自分達の子供なのに、別の便で帰国させるなんて!」「それは全て明日香ちゃんが記憶喪失になってしまったのが原因だ」「え……?」航は一瞬耳を疑った。「お、おい……何だよ、その話は。明日香が記憶喪失になっただって? 一体どういうことなんだよ!」「明日香ちゃんは難産とその後の過呼吸の発作で意識を失って、目が覚めた時には10年分の記憶を全て無くしてしまったらしい」「え? 何だよ、その話……」「つまり、明日香ちゃんは自分がまだ高校生だと思ってるんだよ。当然自分が子供を産んだことだって覚えていない。翔たちはファーストクラスに乗って帰国する予定だったんだが、明日香ちゃんの精神状態を考慮して、子供だけは違う便の飛行機に乗せて帰ることに決めたらしい。翔の独断で……! それで代わりに秘書が子供と同じ便で帰国することになったそうだ」「それじゃ……朱莉は鳴海翔には会えないってことなの
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