やがて視界いっぱいを覆い尽くした閃光が消え、露わとなった正体にキルシュは目を瞠った。 ──それは、齢二十に届くか届かないかという年端の青年だった。 滑らかなハリのあるショートヘア。その髪色は暗闇の中でも淡い色をしている事が分かる。装いは暗色を基調としたジレにシャツ、下衣に革製のブーツを合わせていて、洗練された雰囲気のあるものを召している。 上背もあり、ぱっと見た雰囲気は、鋭い目付きが印象的。髪の分け目から見える眉の印象もあるだろう。とても精悍な風貌をしている。 しかし、射貫かれた瞳は人間のものではない。 その瞳は暗闇の中、煌々とした光を放っているのだ。 まるで、真昼の陽光を絞り集めたかのよな眩い金色。 そんな瞳の奥底に真鍮色のギアがゆっくりと回っているのが見える。 更によく見れば、彼の首や手首の関節部位には不自然な継ぎ目があって……。 ふと連想するのは、機械科学の産物── 「機械人形(オートマトン)……?」 キルシュは呟くと、彼は何も答えずに視線を反らした。「走るぞ」 ぶっきらぼうに彼は言う。そして、彼はキルシュの手首を掴む獣道を駆け出した。 その一拍後、禍々しい咆哮を上げて異形の生き物は二人を追い始める。「**あああああ! 許さない、許さない、憎い……憎い!**」 のろのろとまどろっこしい、呪詛のような言葉が後方から響き渡った。 しかし彼の足は速すぎた。とてもでは追いつけず、さっそく足がもつれて転びそうになった瞬間だった。「仕方ないな」 痛い程に手首を引かれて、腰を掴まれた。そうして抱え上げられるなり、彼の肩に担がれる。 「──!」 咄嗟の事に驚いてしまった。 落ちないようにと片腕でがっちりと腰に腕を回し……思いきり、おしりを触られているが、それどころではない。 背後からこの世の生き物とは思えない恐ろしい奇声が聞こえてくる。 ふとキルシュが身体を少し起こして後ろを見ると、やはりあの恐ろしい生き物が涎を垂らして追ってきていた。「ねぇ。な、何なの……あれは。あの、貴方は!」 「今は喋るな、舌を噛むぞ!」 目もくれずに彼は答えた。 そうして、腰に回す手の力を強め、彼は加速する。 ついでにおしりの肉を強く鷲づかみにされて恥ずかしくなるが、本当に今はそんな事を考えて
Last Updated : 2025-04-02 Read more