「クローヴ村の付近で見たってことは、私たちが見た人たちとは別の集団ってことになるよね……」 リノアが言葉を紡ぐと、広場に集まる者たちのざわめきがわずかに落ち着いた。 ヴィクターたちはクローヴ村方面には向かわなかった。それに、そんなに早く移動できるとは思えない。別の集団と見て良いのではないか。「彼らは何者なのですか?」 集落に住む一人の女性がリノアに問いかけた。 リノアが困惑したように首を振る。「それが分からないんです。森の異変と深く関わっていることだけは間違いないけど……。今、その真相を私たちが追っている最中なんです」 そう言って、リノアは顔を伏せた。 リノアたちが集落の人たちに、今まで起きたことを説明している時、広場に馬車の車輪が軋む音が響いた。 救護に向かった集落の人々だ。「戻りました!」 馬車を降りた集落の者が力強く告げると、広場の緊張が一気に高まった。 負傷者を乗せた馬車がゆっくりと中に入って来る。泥にまみれた者、憔悴しきった顔の者──皆、随分と疲れ果てている。「崩落現場はひどい状態でした……。助け出した人の中には、まだ意識が戻らない者もいます」 集落の男性が額の汗を拭いながら報告する。「治療の準備はできています。こちらへ!」 手当てを施す者たちが次々と負傷者を迎え、集落の人々が手際よく治療に取り掛かる。「薬と水を! 一刻も早く処置をしないと」 エレナは迷うことなく負傷者のもとへ駆け寄ると、的確な判断を下しながら治療に取り掛かっていった。「包帯はある? 出血がひどい!」 エレナの声が広場に響き渡る。「この人、意識が朦朧としてる……。誰か水を持ってきて!」 リノアは負傷者の肩をしっかりと支え、馬車から負傷者たちを降ろす手伝いをしながら周囲へ声をかけた。「治療に使える薬草を持っています! 必要な方はすぐ知らせてください!」 負傷者の手当てに追われる混乱の中、セラは薬草の袋を手にしながら状況を見渡し、声を発した。 救護に向かった者たちの疲れた表情。そして助け出された者たちの痛みに満ちた顔…… 救護は順調に進んでいる。しかし集落の人々の顔には緊張が消えることはなかった。 彼らは知っているのだ。これがただの事故では終わらないことを。 広場の混乱がひと段落し、負傷者の手当てが進むにつれ、集落の人々の動きも落ち着き
Last Updated : 2025-05-26 Read more