風が唸りを上げ、砂塵が薄れゆく中、リノアとエレナは崩落した崖の縁に立ち尽くしていた。 目の前に広がるのは、かつての街道を無残に塞ぐ土砂の山。岩と土が積み重なり、道を完全に閉ざしている。周囲の木々が不気味に揺れ、まるでこの場を去れと警告するかのようにざわめいていた。 リノアの胸の奥で得体の知れない不安が渦を巻いた。硬質化した根や鉱石の謎が思考を絡め取る。「このままじゃ、アークセリアまでたどり着けない……」 リノアは視線を崖下に落とし、動かぬ旅人たちの姿に心を痛めながらも、思考を切り替えた。立ち止まることは許されない。この異変の真相をアークセリアのラヴィナに届けるためにも、先に進まなければならない。 リノアとエレナは顔を見合わせ、お互いの意志を確認するように小さく頷いた。 リノアは腰の袋から地図を取り出して広げた。風に煽られ、紙がバタバタと鳴る。 地図には峠を越える主要な街道と、幾つかの脇道や獣道らしき細い線が記されている。「どこか迂回路はないかな」 リノアが指で地図をなぞり、そして続けた。「少し遠回りになるけど、崖の西側に迂回路があるみたい 崖沿いの道ではない。地盤は安定しているはずだ。「獣道か……。あまり人が通らない道だね。獣に遭遇するかもよ」 エレナが地図を覗き込み、眉を寄せた。 旅人は安全な街道を通りたがる。獣道は途中にある集落の人が使う程度にしか使われていない。「それでも行かなきゃ。ここに留まっていても仕方がないし」 リノアの声は静かで揺るぎがない。 エレナは、それ以上反論せず、頷いて荷物を背負い直した。 森の薄暗い獣道の入り口で、リノアとエレナは集まった旅人たちと向き合った。 負傷者たちは応急処置を終え、岩の陰や木々の間に横たわり、痛みを堪えるように静かに息をしている。 崖崩れで塞がれた街道と、目の前に広がる不安定な獣道を前にリノアは逡巡した。負傷者を連れて迂回路を進むのは時間と危険を考えると現実的ではない。 リノアはエレナと視線を交わし、互いの考えを確認するように頷いた。「負傷者を連れて歩くのは難しい。負傷者をここに残して、私たちが近くの集落に助けを呼びに行くか、動ける旅人に私たちの村へ救援を求めてもらうか、そのどちらかだと思う」 落ち着いて見えるが、リノアの内には焦りがある。「集落の方が近いかもしれない
Terakhir Diperbarui : 2025-05-22 Baca selengkapnya