All Chapters of 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話 犯罪者だ!再び

 俺は必死に衛兵から逃げる。「うわっ!」 衛兵の片方が矢を射掛けてきた。 あいつら容赦ない! とっさに左にステップを踏んでかわす。 軽業スキルとダンジョンで培った戦闘能力が役に立った。 矢は石畳の継ぎ目に突き刺さった。その威力にぞっとする。 路地に追い立てられ、狭い道を必死で走る。 やがて見えてきたのは行き止まり。 袋小路に追い込まれた。 衛兵たちの気配が近づいてくる。 と。 袋小路の手前、ゴミのかげにあったドアが急に開いて、俺は引っ張り込まれた。「しーっ。大人しくしてね」「バルト!」 俺を引き込んだのはバルトだった。 薄暗い室内で俺の口を押さえてくる。「犯罪者はいたか?」「いや、見失った」「近くにいるのは間違いない。よく探せ!」 壁一枚向こうで衛兵たちの声がする。 やがて声はだんだん遠ざかっていって聞こえなくなった。「ユウ、災難だったねえ」 バルトはニヤニヤ笑っている。 言葉とは裏腹にこうなるのが分かっていたかのような表情だ。 俺は心の底からため息をついた。「また地道なカルマ上げをすると思うと、気が遠くなるよ」「前と同じやり方じゃあ駄目だけどね」「え?」 バルトを見れば、彼は肩をすくめた。「だって税金の請求は二ヶ月ごとに来るんだよ? ユウは去年の夏が最後の納税なんだろ。次の税金を滞納すれば、脱税扱いになってカルマがまた下がる」 そうか、税金は二ヶ月毎に請求書が来るんだった。 締切まで間があるので、半年分ならまとめ払いができる。 ところが俺は半年前に納税したっきり。 次の締切は二ヶ月後になる。 たった二ヶ月でマイナス45のカルマを戻せるか……? いや無理だろ。以前はマイナス35から始まって、ゼロに戻すまで四ヶ月はかかった。
last updateLast Updated : 2025-04-16
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第42話 不法侵入

 深夜、俺とバルトは王城の門のほど近くに隠れていた。 月は細くて、しかも雲がかかっている。絶好の侵入日和(?)だった。「なあ、本当に忍び込むのか?」 俺のヒソヒソ声にバルトは笑ってみせる。「怖気づいたのかい? 盗賊ギルドの一員ともあろう者が、情けない」 そりゃあ怖気づくだろ。 今から天下のパルティア王城に不法侵入するんだぞ。 たかが脱税でカルマががっくり下がる国だ。 王様の家である王城に侵入なんかした日には、その場で死刑になってもおかしくない。 けれどバルトは俺の言葉を意に介さず、さっさと進み始めた。 鈎爪つきのロープを取り出して投擲。王城の城壁に取り付いた。 素早い身のこなしでするすると登っていく。 俺も続いてロープを掴んだ。 バルトほどではないが、まあまあスムーズに登れたと思う。「ユウはまだまだだね。軽業スキルをもっと鍛えないと」「分かってるよ」「ギルドに戻ったら特訓部屋を貸してあげよう。四方から矢が飛び出してくる、からくり部屋だ。矢を避け続ける修行ができるよ」「お断りします」 なにそのバトル少年漫画の修行シーンみたいなやつ。 命の危険があるじゃん。俺はそこまでしたくないよ。 そんな無駄口を叩きながら、俺とバルトは城壁から飛び降りた。 植え込みや物陰に隠れながら進む。「騎士団長がいる場所、分かってるのか?」「目星はついているよ」 なんとも頼もしいことだ。 巡回中の衛兵の目をかいくぐりながら、俺たちは進んだ。 王城の中心地に近づくほど、衛兵の数が増えてくる。 と。 木の陰に隠れた俺は、うっかり枝を踏んでしまった。パキリ、と意外に大きな音がする。「何者だ!」 近くにいた衛兵の一人が槍を構えた。 ど、どうしよう! 俺は焦りまくりながら、とっさに、「に、にゃぁ~」 猫の鳴き真似をしてみた。
last updateLast Updated : 2025-04-17
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第43話 とりあえずの解決

「――さて。ユウの用件は済んだが、そいつは?」 ヴァリスが鋭い目でバルトを見た。 バルトは気圧された様子もなく、丁寧に礼をする。「申し遅れました。僕は盗賊ギルドのバルトと申します。ギルド後輩のユウの用事を助けるついでに、名高い白騎士ヴァリス様にお会いしようと思ってやって来た次第です」「……目的は?」 バルトは丁重な態度を崩さずに言った。「特には。騎士中の騎士と名高いヴァリス様をこの目で間近に見られて、それだけで満足ですよ」「盗賊ギルドが、よく言う」 吐き捨てるように言われたセリフに、バルトはにっこり笑ってみせる。「強いて言えば、僕らのことを知ってもらいたかった……というところですね。盗賊ギルドは誤解されやすいのですが、犯罪者集団ではありません。冒険者としての盗賊職を支援する、真っ当な面もあるんですよ」「本当です。俺、盗賊ギルドに入ったおかげでかなり腕を上げました。ダンジョン攻略の助けになっただけで、ギルドにいる間、何一つ悪いことはやっていません」 俺は口を挟んでみた。 盗賊ギルドに世話になっているのは事実だ。フォローくらいしないとな。 ヴァリスは俺たちの言葉に首を振った。「あくまで真っ当な『面もある』だけだろう」「あはは、バレちゃいましたか」 バルトはまったく悪びれない。「じゃあ仮にですけど。裏社会としてのギルドと冒険者としてのギルドが分離したら、冒険者の部分は表舞台に立つのを許されるでしょうか?」「……完全に分離したと証明できるのなら、検討の余地はある」 ヴァリスの慎重な言葉にバルトは笑みを浮かべた。「今の段階では、そのお言葉が聞けただけで満足ですよ」「おいバルト、そんな計画があるのか?」 俺は思わず口を出すが。「さあ、どうだろうねえ。ただ、組織はいつだって柔軟に変わっていかないといけないから。硬直化した組織なんて、いつか壊死
last updateLast Updated : 2025-04-18
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第44話 はじめての奴隷

 カルマが上がり犯罪者でなくなって、俺にまともな冒険者としての生活が戻ってきた。 もう衛兵に追われることはない。 ならず者の町ディソラム以外でも、住民に嫌な顔をされない。 今後はしっかりカルマを管理して、犯罪者にならないよう気をつけないとな。 特に税金関係はコリゴリだ。二度と脱税(別に脱税したくてしたわけじゃないが)はしないようにしないと。 だが、俺はどうも性格的にうっかり屋なところがある。 一人で完璧に管理できるか心配だったので、人を雇うことにした。 クマ吾郎は頼りになる熊だが、やっぱり熊だからなあ。 雇い人に税金やその他のスケジュール管理を頼んで、ダブルチェック体制にすればミスは減るだろう。 できれば事務能力だけでなく、戦闘もある程度こなせる人がいい。 なにせ俺の本業は冒険者。稼ぎ場はダンジョン。 危険はつきものだからな。 人を雇うアテがなかったので、盗賊ギルドでバルトに相談してみた。「雇い人はどこへ行けば雇えるだろう?」「奴隷を買えばいいんじゃない?」 あっさり言われて、俺は眉をしかめる。「奴隷って。俺、ああいうの嫌いなんだけど」「ユウは好みがウルサイよね。奴隷は嫌、犯罪者も嫌」 バルトはニヤニヤしている。 そんなもん嫌に決まってるだろうが。「でもね」 と、バルトは続けた。「奴隷も別に悪いものじゃないよ。この国は奴隷制が合法。買うのは何ら問題ない。非人道的な扱いが嫌だというなら、ユウが優しくしてやればいい」「虐げるつもりはこれっぽっちもないが、やっぱり奴隷はなあ……。そういう身分とか仕組みそのものが嫌いなんだよ」「奴隷なら最初にお金を払って、あとは衣食住の面倒をみてやればいい。雇い人のほうが面倒だよ。毎月給金を払って、しかも裏切るかもしれない」 奴隷であれば魔法契約を結ぶので、主人を裏切る心配がないのだという。 いやなにその人権無視な契約。そういうのが嫌なん
last updateLast Updated : 2025-04-19
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第45話 一年

 エリーゼを連れて盗賊ギルドに戻る。俺は彼女に役割を伝えた。「きみには税金や依頼の締切チェックと、戦闘の補助をお願いしたい。締切は俺も確認するし、戦闘はあくまで後衛でいい。命の危険があったら逃げてくれ」 エリーゼは暗い表情のまま首を振った。「仕事については承知しました。でも逃げるのはできません。命をかけてあなたを守るのが、奴隷の仕事です」「俺がそうしろと言っているんだ。命令だよ」 強く言えば、彼女はしばらく迷った後にやっとうなずいた。「……分かりました、ご主人様」 ご主人様!! その言葉はなぜか俺の心を貫いた。 おかえりなさいませ、ご主人様。 萌え萌えキュン。 おいしくな~れの魔法をかけちゃう。 そんなセリフとともに、黒いワンピースに白いエプロンの女性の面影がよみがえる。 心臓がきゅんきゅんいってる。 え、何? 俺ってメイド萌えだったの? 正直、前世日本の記憶はもうあいまいだ。日本人としての俺がどんな人間だったのか、よく思い出せない。 あぁでも、この胸のトキメキは本物! ミニスカメイドもいいが、クラシックなロングスカートも捨てがたい!「なあ、エリーゼ。ミニスカートとロングスカートだとどっちが動きやすい?」「え?」 気がついたら俺は口走っていた。 でも最低限の気遣いは残っていたようで、戦闘時の動きやすさを聞いていた。「タイトなスカートでなければ、どちらも変わりません」 と、エリーゼ。「じゃあ両方買おう! 洗い替えは必要だしな!」「えぇ?」 彼女の手を取って走り出す。行き先は盗賊ギルド内の服屋だ。 盗賊ギルドは変装グッズが揃っている。そのため色んな職種の服が売っていた。「ミニとロングの黒ワンピースください。あとエプロン。エプロンは白で、フリルがついているのがいい。メイド服にぴったりなやつ」 店主のおばさんに言えば、す
last updateLast Updated : 2025-04-20
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第46話 一年

 いつしか季節は冬から春になっていた。 俺が難破船から放り投げられたのが、去年のやはり春。もう一年が経過してしまった。 海で死にかけていた俺を助けてくれた森の民の二人、ニアとルードはあれ以来会っていない。 少しは強くなった今、ルードにお礼参りをしてやりたいところだが、居場所が分からないんじゃ仕方がない。「ご主人様。税金の請求書が来ていますが、納税に行きますか?」 春のある日、盗賊ギルドで次の冒険の準備をしているとエリーゼが言った。「冬に納税したばかりですので、締切に余裕はあります。まとめ払いも可能です。どうしましょうか?」「うーん」 俺はちょっと考えた。 盗賊ギルドのある町から王都までは片道五日。 すぐ近くというわけでもない。正直、わざわざ行くのはちょっとめんどくさい。 だがまとめ払いで締切ギリギリまで粘ると、前のように思わぬ事態で脱税犯罪者になってしまうかもしれない。 あれは本当にひどい目にあった。 もう一度免罪符を発行してもらうわけにはいかないから、慎重に動かなければならない。二度とあんなのごめんだよ。 考えた結果、俺は答えた。「配達の依頼がてら、納税に行こうか」「分かりました。旅の準備をしますね」 以前は俺一人でやっていた準備作業も、今ではほとんど彼女がやってくれる。 俺もいい身分になったものだ。 というわけで、俺たちは王都へと旅立った。 旅の途中、野宿の際の食料は現地調達もする。 獣や鳥を狩ったり、川や湖があれば釣りもする。 この前、新しく料理スキルを習得した。 おかげで狩った肉や釣った魚もその場でおいしく調理できて、とても助かっている。「料理スキル、もっと早くに取ればよかったよ」 焚き火で魚を焼きながら、俺はしみじみと言った。 料理スキルを覚える前は、ただ肉や魚を焼くだけでも失敗ばかりだった。黒焦げだったり生焼けだったりで食べられたものじゃないのだ。 おいしい食事は心を
last updateLast Updated : 2025-04-21
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第47話 王都での一幕

 それからあちこちの店を巡って、俺は何冊かの魔法書を買った。  おなじみのマジックアローと戦歌の魔法に加えて、新しく光の盾の魔法と沈黙の魔法に挑戦してみることにしたのだ。  光の盾は防御力アップ。  沈黙は相手の魔法を封じる。  俺の読書スキルも少しは上がったからな。  新しい魔法を覚えて戦術に幅を出したい。 次は武具を見てみようと大通りを歩いていると、衛兵に呼び止められた。「冒険者のユウだな?」「えっ、あ、はい、そうですけど」 カルマ下がりまくり犯罪者時代のトラウマで、俺は衛兵が苦手になっている。  思わずテンパった返事をしてしまった。くそ、エリーゼの前だと言うのに情けない! 衛兵はそんな俺の態度に構わず、つっけんどんに言った。「お前を王城まで連行するよう、命令が出ている」「えっ。俺、なにもしてませんけど」「いいから来い」 俺は問答無用で引き立てられた。エリーゼとクマ吾郎は心配そうな顔でついてきてくれた。  以前ロープで乗り越えた王城の城壁の中に、今度はちゃんと門から入る。  衛兵は問答無用の態度だったが、俺たちに危害を加えるつもりはないようだ。 衛兵や騎士が行き交う中を歩いていく。  やがてたどり着いたのは、見覚えのある塔である。「ここは……」 俺のつぶやきは無視されて、衛兵から騎士に引き渡された。  塔の中に入って螺旋階段を登る。  見覚えのある扉を開くと、彼がいた。  騎士団長にして白騎士の称号を持つヴァリスだった。「久方ぶりだな、ユウ」 彼は穏やかな声で言う。「は、はい。久しぶりです」「急に呼び立ててすまなかった。きみに一つ、仕事を頼みたくてな」 ヴァリスが目配せすると、部屋にいた騎士たちが出て行った。  ついでにクマ吾郎とエリーゼも部屋から出される。人払いか。「きみは森の民だな」「…………」 俺は思わず黙り
last updateLast Updated : 2025-04-25
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第48話 王都での一幕

 頭の仲の映像として見えたのは、地図と地形だった。見えたというか、無理に流し込まれたような感覚だった。 場所は王都から北に半日ほど進んだ先。 森の中にある洞窟、その内部。「森の洞窟が見えました。場所は王都の北」「ああ、間違いない」 俺が答えると、ヴァルトは少し複雑な顔でうなずいた。「その場所まで行って、洞窟の中を確認してきてくれ。それが仕事だ」「確認とは? 何をすればいいんですか」「文字通り見てくるだけでいい。きみの森の民としての目で見て、異常がなければそれでよし。もしも何か気付いた点があれば、教えてくれ」「はあ」 なんともふわふわした話である。ヴァリスらしくもない。「この件は他言無用だ。もしも話が漏れた際は、覚悟するように」「は、はひ」 ヴァルトに凄まれた。すごい威圧感なんですけど。怖。「きみが戻ってくるまで、奴隷と熊は預かろう。すぐにでも発つように」 人質というわけか? そこまでしなくても裏切るつもりはないがな。 部屋を出る。 扉の両側に立っていた騎士に睨まれた。 エリーゼとクマ吾郎の姿は見えない。 ヴァリスのことだから、手荒な真似はしていないと思うが……。 不可解な思いを抱えながら、俺は北に向けて出発した。     クマ吾郎もエリーゼもいない。 たった一人で野外を歩くのは久しぶりである。 寂しいような気持ちと、最初は一人だったという懐かしい気持ちが入り混じった。 時間はもう午後だったが、俺は一路北に向かって歩みを進めた。 夕方、日没の少し前に目的の洞窟を発見する。 森の奥深く、崩れかけた土の斜面に狭い入り口が開いている。 これは、事前に教えてもらわないと見落としてしまうだろうな。 背を屈めて入り口をくぐった。
last updateLast Updated : 2025-04-25
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第49話 北の洞窟

 俺はさらに観察を続けた。 壁は石だと思ったが、よく見ればどこか有機的な印象も受ける。 貝殻とか亀の甲羅とか、あるいは象牙のような。硬質だけれど生き物の痕跡を感じる、あの感覚だ。 ふと、壁の上部と左右にくぼみがあるのを見つける。 上部のくぼみは剣の形。 左のくぼみは丸い形。 右のくぼみは丸に尻尾が生えたような……あれは勾玉だろうか。 手を伸ばしてくぼみを触ってみる。やはり弱い魔力が感じられる。 だが、それ以上は何もない。 くぼみ以外の部分も指でなぞってみたが、何事も起こらなかった。「これは、『何もなかった』と言うしかないかなぁ」 壁を叩いてみたが、頑丈でびくともしない。 ただ、かすかに反響音がした。 もしかしたらこの壁は扉で、先は通路が続いているのかもしれない。確かめようがないけど。 それからもしばらく眺めたり触ったりしたが、何も変わりはない。 俺は諦めて帰ることにした。 時刻はもう夜だ。野営が必要になる。 俺は少し迷ったが、外に出て休むことにした。 ここの魔力は薄いが、どこか気味が悪いんだよな。落ち着いて休めない。 外に出ると真っ暗だった。月も星も分厚い雲に隠されてしまっている。 俺は久々に手近な木に登り、仮眠を取った。 いつもはクマ吾郎とエリーゼがいるから、交代で見張りをするのにな。『また来るといい、森の子よ』 眠りに落ちる直前。誰かの声が聞こえたような気がした。    翌朝、日が昇ると同時に俺は王都へと出発した。 おかげで昼になる前に到着する。 北門をくぐろうとしたところで衛兵に呼び止められて、王城へと向かった。 塔にあるヴァリスの執務室に入ると、彼が一人だけで待ち構えていた。「どうだった?」 問いかけに首を振る。「特に何も。不思議な場所だっ
last updateLast Updated : 2025-04-26
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第50話 次の一手

 パルティア王都から無事に帰ってきて以来、最近の俺は方向性に悩んでいる。 今日も盗賊ギルドの一室で、一人うんうん唸っていた。 レベルが上ってスキルやステータスも上昇し、中堅クラスのダンジョンを攻略できるようになった。 戦闘スタイルは以前と同じ。 クマ吾郎を前衛に、俺が剣、魔法とポーションでサポート。 最近はエリーゼが加わったが、彼女はあくまで補助要員である。 戦力としてカウントするには心もとない。 そのため、基本戦法は変わらなかった。 今の俺は中級冒険者の中でも、腕利きの実力といえるだろう。 それはいいんだ。 けれどもどうにも先行きが不安になっている。 というのも、ダンジョンの難易度が上がるに従って、混乱やマヒといったデバフ系ポーションの効きが悪くなっているのだ。 特にボスには牽制程度にしかならない。 このままの戦い方では、近いうちに行き詰まるのが目に見えている。 また、税金の滞納で犯罪者になった件。 それにヴァリスに頼まれて確認しに行った謎の洞窟の件。 これらのできごとは、国家権力に対して個人の無力さを思い知らされた。 少しくらい腕前が上がったところで、権力の前には意味がないのだ。 さらに難易度の高いダンジョンを効率よく攻略する方法。 権力を前にしても簡単に負けないだけの力。 もっと強くなりたい。 もっともっとお金を稼いで、クマ吾郎やエリーゼにいい暮らしをさせてやりたい。 この世界の理不尽から守ってやりたい。 難題ではあるが、全てはつながっているようにも思える。 個人の冒険者として誰にも負けないほどの腕を。 そして、お金の力を背景とした権力を。 つまり、目標が高くなっただけで今までと変わりはないのだ。 目標自体は変わらないが、そのための手段は変える時期である。 特にお金だ。 ただ暮らすだけであれば十分な収入があるが、それ以上を望むとなると…&h
last updateLast Updated : 2025-04-26
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