だが、優花は予想以上に用心深く、携帯電話を使って水嶋と連絡を取るようなことは決してせず、過去のやり取りも、痕跡一つ残さず消去されていた。これまで、有益な情報は何も得られていなかったのだ。今日のこの通話録音は、長らく続けた監視の中で、ようやく手に入れた最も価値のある「収穫」だった。もちろん、録音以外にも、言吾や一葉自身とのチャット履歴など、監視システムが保存したスクリーンショットは数多く存在する。この録音だけでも十分に決定的だと一葉は判断し、あえてこれ一つだけを突きつけたのだ。もし言吾がこれでも足りないと言うのであれば、他の証拠を次々と見せてやるまでだった。一葉のその言葉が落ちると、言吾の表情がみるみるうちに暗く沈んでいく。「その録音は、どこで手に入れたんだ」「……まさか、俺を盗聴させていたのか?」言吾は馬鹿ではない。すぐにその可能性に行き着いた。一葉は肩をすくめる。「あなたを盗聴なんてしてないわ。誰が送ってくれたのかも知らない。たぶん、天の神様があなたみたいな最低な男に騙される私を見かねて、親切な人を遣わしてくれたんじゃないかしら」言吾を盗聴など、彼女はしていない。優花のスマートフォンに仕掛けていたプログラムは、既に専門家の手で痕跡一つ残さず消去済みだ。言吾が今から調べたところで、何も出てくるはずがない。しばらくほとぼりが冷めた頃に、また仕掛ければいいだけのことだ。悪党を相手にするのに、ルールを守る必要などない。言吾は一葉をじっと見つめ、それきり何も言わなかった。ただ、その瞳の奥深くで何を考えているのか、うかがい知ることはできない。彼が何を考えていようと、一葉にはまったく興味がなかった。「契約通り、あなたは違反した。無一文で出て行ってもらうわ。明日の朝八時半、役所の前で会いましょう」そう言い捨て、彼女は背を向けて立ち去ろうとした。だが、その腕を言吾が強く掴んだ。一葉は振り返り、苛立ちを隠そうともせずに言った。「深水さん、まだ何か用?」離婚の話以外、彼と交わす言葉など、もはや一言もなかった。「一葉、あの動画の件で、確かめもせずに君を誤解して、あんな酷いことをした……本当に、俺が悪かった。これからの人生すべてをかけて、この過ちを償う。君が……」彼が言い終える前に、一葉は冷たく
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