一葉はすべてを聞き終えると、長い、長い沈黙に沈んだ。「誰がその動画を優花に?目的は何です」信じられるはずがない。あの動画が、優花の自作自演ではないなどと。「動画を送った人物は、昨年、交通事故で亡くなっています。そのため、動画を保存・編集し、春雨優花に送りつけた動機を追及することは不可能です」一葉は絶句した。完全な手詰まりだった。しばしの沈黙の後、一葉は再び尋ねた。「他の証拠は?例えば、言吾の父親が薬を使ったという証拠……優花が、彼を誘惑する目的で自ら薬を飲んだわけではないという証拠は、確かなものなんですか」「はい、間違いありません。我々の方でもすべて検証済みです」一葉は返す言葉もなかった。藤堂は国内でも指折りの弁護士だ。彼が検証した上で、証拠は本物だと言うのであれば……本当に、自分が優花を誤解していたとでもいうのか。言吾の父親を誘惑する傍らで、父と共謀して自分を陥れ、言吾に誤解させるための動画を撮ったのではなかったと?この事件のすべてが、単なる誤解だったと?そう思いかけた、その瞬間、ある一点が彼女の脳裏に閃いた。「もしこれが全部、偶然と誤解だったとしたら、私がジュースに入れたあの薬はどこから来たんですか。当時、意識もはっきりしなかった私が、自分で薬を買えるわけがないでしょう」桐山教授の教え子たちが当時の事を調査した際、ジュースに入れられた薬が何であったかまでは特定できなかった。だが、意識が朦朧としていた一葉が、それを風邪薬か何かだと思い込んで飲み、その直後に外で言吾と遭遇したことまでは突き止めていた。様子がおかしい彼女を、言吾が医者に連れて行ったことさえあったのだ。月日が経ちすぎたせいで、医者も当時のことを覚えてはおらず、カルテも残っていなかったが、数々の状況証拠は、彼女がジュースに何らかの薬を入れたという事実を指し示していた。その薬が、何もないところから現れるはずがない。「その点は確かに疑問です。ですが、その一点だけでは、春雨優花があなたを誣告したという直接的な証拠にはなりません」証拠にならないのなら、優花は無罪放免になる。一葉は、「……」と、ただ唇を噛みしめるしかなかった。どうしたって信じられない。当初の出来事が、すべてただの偶然と誤解だったなどと。特に、あの薬の存在がある限
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