神堂市――言吾は、一葉に関連するネット上の話題を全て削除させた後、紫苑の釈明動画が映し出されたタブレットを手に、彼女の元を訪れた。そして、冷え切った眼差しで言い放つ。「紫苑、お前には言ったはずだ。俺たちが協力する上での絶対条件は、二度と一葉に手を出すな、ということだったはずだ!」その言葉を聞いた瞬間、紫苑の瞳がみるみるうちに潤んだ。「私が、彼女に何かしたかしら?これは、彼女の潔白を証明するためにやったんじゃないの?」言吾が何かを言う前に、彼女は畳み掛ける。「このやり方が気に入らないなら、そう言ってくれればいいじゃない。あなたが望むなら、どんな風にだって、彼女のために釈明してあげるわよ」その真剣な口ぶり、誠実な眼差しは、まるで本当に一葉の名誉のためならどんなことでもする、とでも言いたげだった。だが彼女は、そして言吾も、知っているのだ。もはや、これ以上何をしようと、決して無意味であることを。言吾は彼女を黙って見つめた。何も言わず、ただその眼光を、ぞっとするほど冷たく、鋭くさせていくだけだった。……一葉の祖母である紗江子は、一葉が賞を受け取る姿を見るのが何よりも好きだった。その度に、心から嬉しそうに顔を綻ばせるのだ。だからこそ今回、一葉は国内最高峰とされるこの新人賞を、祖母への誕生祝いとして贈りたかった。だが、現実はどうだ。賞を手にすることもなく、それどころか評判は地に堕ち、誰もが忌み嫌う日の当たらない存在となってしまった。ちょうど休暇で帰省していた千陽は、そんな一葉の姿を、心配と痛ましさで今にも泣き出しそうな顔で見つめていた。「一葉ちゃん、これから、どうするの……」そう言ってから、千陽は堪えきれないといった様子で言吾を罵った。「あのクソ男、あんたの疫病神だわ、マジで!」「あんたは正真正銘の天才科学者なのに、あいつさえいなければ、今頃どれだけ脚光を浴びて、尊敬されてたか!それが今じゃどうよ。愛人のレッテルを貼られただけじゃなく、研究成果まで疑われる始末じゃない!クソッ!あいつ、本当に死んでくれればよかったのに!ったく、あの時、あんなに神仏に祈ったりするんじゃなかった!あの男を生かしちゃったせいで、あんたがこんな目に遭うなんて!」言吾が死んだとされていた頃。眠れないほどに心を痛める一葉の姿を見て、千
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