言吾が行方不明になった後、あらゆる人脈を駆使して捜索したこと。慎也に救われたと知るや、すぐにでも駆けつけたかったこと。しかし、烈に屋敷に軟禁され、本港市にいる彼に会いに来ることすら叶わなかったこと。ようやく烈が監視の目を緩めた隙を突き、真っ先にこうしてお前に会いに来たのだ、と……宗厳は言葉巧みに、自分がどれほど言吾を息子として重んじ、大切に思っているかを語った。言吾こそが自分の宝であり、必ずや獅子堂家を奪い返し、お前の手に戻してみせる、と。言吾は、宗厳が獅子堂家の実権を取り戻したいと渇望していること自体は信じた。だが、自分が彼の「宝」であるなどという戯言は、一ミリたりとも信じてはいなかった。今の言吾にとって、獅子堂家の人間への期待や信頼など、もはや一片たりとも残ってはいないのだから。だが、彼はその不信感をおくびにも出さず、それどころか、心から信頼しているかのように振る舞った。つまるところ、今の自分と宗厳の利害は完全に一致しているのだ。まずは烈を当主の座から引きずり下ろす。法の裁きを受けさせるのは、それからだ。言吾のその態度にすっかり満足した宗厳は、しばらく親子水入らずの情を演じた後、諭すような口調で切り出した。「言吾、わかっているとは思うが……お前と桐生慎也は、恋敵の関係にあると言ってもいいだろう。だがな、肝心な局面では、使える駒はすべて使うべきだ」「くれぐれも、個人的な感情に流されて大局を見誤ることのないようにな。覚えておけ、烈が獅子堂家を握っている限り、お前の元妻……青山一葉の身も常に危険に晒され続けるのだ」恋敵であるという引け目から、言吾が慎也に協力を仰ぐことをためらうのではないか。宗厳はそれを懸念していた。以前、二人が手を組んだのは、あくまでも一葉を救うため。だが今回は、獅子堂家の内輪揉めに過ぎないのだから。「ご心配なく、父さん。プライドを優先して、大事を疎かにするような真似はしません」言吾のその言葉は、宗厳を取り繕うための、その場しのぎの嘘ではなかった。彼は本心からそう思っていた。宗厳の言う通りだ。烈が存在する限り、一葉の身は危険に晒され続ける。ならば、どんな手段を使おうと、烈は排除しなければならない。「うむ、そうか。それならいい」宗厳は満足そうに何度も頷いた。今回の一件を経て、言吾はより一層思慮深く
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