一葉はうつむき、必死に全身の震えを抑え込みながら、唇の端に冷たい笑みを浮かべた。「人を嬲り殺しにするのは法に触れるからできない、やれば破滅する……じゃあ、生きている人間から心臓を抉り出すのは、合法だとでも言うの?破滅しないとでも?」「それに、確かにおばあちゃんの生死が気にならないわけじゃないわ。でも、私がどれだけ気にかけたところで、もうどうしようもないことなの。医者から聞いているでしょう。おばあちゃんの命の灯火はもう消えかけていて、今年の冬を越せるかどうかも分からない。そんなおばあちゃんが、自分のために孫の私が罪を犯すことを望むはずがないわ。あなたがおばあちゃんに手を下すのを、私には止められない。助けてあげられない……だったら、せめてあなたの愛する者たちを、あなたの目の前で先に地獄へ送ってあげる!愛する人たちが目の前で死ぬのが、耐えられないんでしょう?なら、その光景を、あなたに嫌というほど見せつけてあげるわ!」国雄は、紗江子の病状を知っている。祖母がもう長くないと知った一葉が、本当に救うことを諦め、逆に見せしめとして葉月を先に殺しかねない——そう思い至り、彼はたまらなく焦った。画面の向こうで、国雄が本能的に何かを言い募ろうとする気配がしたが、一葉はそれに一切耳を貸すことなく、一方的に通話を切った。通話を切った直後、張り詰めていた理性の糸がぷつりと切れ、一葉の全身から力が抜け落ちた。膝ががくりと折れ、細い身体はなすすべもなく床へと崩れ落ちていく。しかし、その身体が冷たい床に叩きつけられることはなかった。異変を察した慎也が、咄嗟にその華奢な肩を力強く抱きとめたからだ。「……っ」先ほど父に叩きつけた言葉は、刃のように鋭く、一歩も引く気などないという決意に満ちていた。だが、それはすべて虚勢だった。言いようのない恐怖に支配され、正気を失ってしまいそうな衝動を、必死で押さえつけていただけなのだ。慎也の腕に抱かれた今、抑えようもなく全身がカタカタと震えだすのを、もう止めることはできなかった。祖母の身に何かあることだけは、絶対に耐えられない。よりにもよって、あの男を祖母の元へ行かせたのは、この自分なのだ。一葉は、自分自身の判断の甘さを呪わずにはいられなかった。なぜ、あんな男の人間性などという不確かなものを信じてしまったのだろう。高
Read more