「一葉……もしできるなら、この人生でお前に出会わなければよかった」まるで一葉が彼の心を深く傷つける何かをしたかのように、完全に見捨てようとするほどに傷ついたかのように、言吾は一葉を見つめている。その痛ましい表情は、一葉の胸に思わず疼きを走らせた。だが一葉は、その動揺を微塵も表には出さなかった。むしろ笑みを浮かべたまま答えた。「お互いさまね」本当に、もしできるなら一葉も彼に出会わなかった人生を歩みたかった。そうであれば今頃、実験室で理想に向かって邁進し、健康な体で研究に打ち込んでいたはずだ。今のように、全身が傷だらけでボロボロになることもなかっただろう。「お互いさまね」という一葉の言葉を聞いた瞬間、言吾は突然笑い出した。狂気じみた、底知れぬ笑い声だった。「いいぞ!いいぞ!一葉、お前は本当に大したものだ!」愛していた頃は手段を選ばず、どんなことでもやってのけた。愛さなくなれば、かつての彼女自身さえも嫌悪する——彼女は生まれつき心というものを持たない人間なのだ。言吾はかつて、一葉がどんな状況でも彼への愛だけは本物だと信じ切っていた。彼女は命をかけるほど彼を愛し、あらゆる行動も愛ゆえのものだと。だからこそ、彼女が何をしても庇い続け、厳しく責めることもできずにいた。だが……あれほど深い愛も、所詮はこの程度だったのだ。たった一度の事件で、これほど容赦なく愛情を回収し、冷血非情にも過去の自分を否定できるとは。愛したことすら後悔しているのだろう。一葉は言吾の狂気じみた様子を不思議そうに眺めていた。なぜこんなにも激昂するのか理解できない。彼にそんな台詞を吐く権利があるなら、自分にもあるはずなのに。しかし一葉は何も言わなかった。どうであろうと、離婚さえできれば——それで十分だった。狂笑を収めた言吾が、氷のような冷酷さで言い放った。「明日の朝8時半、役所で待ってる。今すぐここから消えろ」彼女がこれほど決然と愛を取り下げられるなら、自分にもできる。彼女でなければ駄目だなどと、もう思わない。結局のところ、根っからの甘やかされた性分が顔を覗かせる。頭を下げることはできても、完全に屈服することはできない。心の奥底では、まだ彼女が自分に歩み寄り、甘やかしてくれることを期待していた。いつか彼女に、この仕打ちを
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